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部門間連携をする際に、最初に考えるべきこと

部門間連携をする際に、最初に考えるべきこと
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チーム連携、部門連携、産官学連携、M&A...。大小違わず、人や組織間の連携は、なぜ、なかなか進まないのでしょうか。

連携によるシナジー効果を願いながら、いざその場になると

「相手のことはわからないから、口出しして良いことと悪いことがある」
「相手の領域に踏み込むと、面倒な人だと見られてしまう」
「分かってない奴だと思われないか...?」

といった躊躇から発言を控えた、そんな経験は誰にもあるのではないでしょうか。

「なにか、おかしくないか?」
「本当は、こう思うんだけどなー」

などの違和感を覚えながらも、口にしない。

なぜ、そういうことが起こるのでしょうか。

なぜ、人は口をつぐむのか?

ひとつ考えられるのは、「問題点だけを言うのは批評家にすぎない」や「問題点を指摘するときは、解決策も言うべきだ」という正論があります。

これを言われ続けると、

「解決策を求められる位なら、『?』が浮かんでも、口にしないでおこう」

そんな習慣が身につき、そのうち相手に興味や関心を示さない、問題意識を言わない、そんな空気や風土が出来上がっていくのでしょう。

では、連携を加速させるには、どのようなことができるでしょうか。

連携を先に進めるものは何か?

組織開発に関して多くの著書を持つ森田英一氏の『会社を変える「組織開発」』の中にそのヒントを見つけました。(※)

「仕事上のコミュニケーションでは、考えることが重視されて、感じることはあまり重視されません。ただ、頭では理解できるけれど、感覚的に違和感があるということはありませんか?  (中略)  人間の感じる力には、鋭いセンサーが備わっています。したがって、今、感じていることを話すことが、様々な人のアンテナに引っかかった重要な情報を元に認知を広げたり、これまでの囚われから自分たちを解き放つ突破口になるケースがとても多いのです」と。

すなわち、「考えを話す」は、既存の知識や経験をもとに論理的に筋道たてて話すことであり、それだけでは連携を引き起こすほどの突破口にはならない。むしろ、言葉になる以前の「人の感じる力」をうまく利用し、その場で「感じていることをそのまま話す」ことこそが、「今見えていないこと」や「“本当は”何が起こっているのか」を知ることにつながる、ということでしょうか。

つまり、相手を前にしたときに生じる「違和感」は、連携を先に進めるために見逃してはならない大事な要素なのだと言えます。

部門間連携にむけたA氏の取り組み

昨年から、部門間の連携にチャレンジしている事業統括執行役A氏のエグゼクティブ・コーチングをさせていただいています。

A氏のミッションは、「2年のうちに新技術や製品を生み出すこと」 。

そのためには、「部門を超えた連携を創りだすこと」が欠かせないとA氏は考えました。まずA氏が実行したことは、自分自身が、部門の代表者たちと信頼関係を築くこと。

・どんなに忙しくても1回30分間の電話面談を毎月継続する
・各部門が抱える課題や部門長の悩みを真摯に聞く
・A氏自身に対する期待やリクエストを率直に言ってもらう

などに取り組みました。

部門長同士が「違和感」をも話せる素地として、自分と部門長が本音で話せる関係、環境を徹底的に作りました。そして、「違和感」を感じたときは、それをそのまま口にすることを意識しました。

A氏は、次のステップとして

・3カ月に一度、部門長全員が参加する「代表者会」を開催する
・部門連携に関する組織調査を部門長以下100名に実施する
・その結果を部門長全員と共有し、感じていることを話す

という取り組みを検討しています。

A氏は、部門長たちが互いにその場で「感じること」を素直に話すことへの抵抗を和らげるために、組織調査という客観的な事実を持ち込む予定です。はじめてのチャレンジに不安も覗かせながらも、その決意を語ってくれました。

「次の代表者会では、何が正しいかを議論・討議するのではなく、今、皆が感じていることを、そのまま率直に話して欲しい、と冒頭で宣言する」と。

前述の書籍では、今までの常識を超えるプロセスとして、「ムズムズ、モヤモヤしたら、ロジカルにその理由を説明できなかったとしても、その感覚を場に出してください」と奨励しています。

でも、ちょっとした違和感を口にするときには、感情が揺れて、ドキドキし、乾いた笑いなどが起きれば不安になったりもするものです。

だからこそ、リーダーは連携を引き起こす第一歩として、心に湧きおこる「違和感」をそのまま場に出せるようなコミュニケーションの起点になることが大切です。

あなた自身、「おかしいなあ」と思いながら口をつぐんでいることは何ですか?

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※参考資料  森田英一、『会社を変える「組織開発」』、PHPビジネス新書、2015年

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