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リーダーに必要な折れない心 ~ レジリエンス ~ 覚悟を決めると何が変わるのか
コピーしました コピーに失敗しました人は、ある役割を担うに際し、多くの場合、「どこまで引き受けるのか」を、無意識に決めています。
このコラムを読んでくださっている方の多くは、管理職以上の役職に就かれていると思います。みなさんが、はじめて管理職に登用されたとき、自分の役割として「どこまでを引き受けよう」と決めていたでしょうか?
「部下との定期的な面談」「グループの代表としてお客様に接すること」「部下の通期の評価」...。こうしたことは、当然、多くの方が、役割として引き受けられたと思います。
では、「他部門から理不尽な圧力をかけられたときに、圧力から部下を守ること」「部下同士の確執の解決」「朝令暮改の役員指示の部下への伝達」といった「やっかいなこと」については、どの位引き受けると決めていたでしょうか?
ある社長の覚悟
「役割」に何を期待するか、昨今では多くの企業が言語化するようになりました。部長の役割はこう、執行役員の役割はこう...、と。
しかし現実には、「表面的」な言葉では表現されない「やっかいなこと」が、役割に付随してきます。つまり、「どの程度までのやっかいさ」を最初から引き受けているかによって、リーダーの「やっかい対応力」に差が生じます。
先日、コンプライアンス問題で揺れる、ある企業の社長とお話をする機会がありました。コンプライアンス問題の発覚後、前任の社長は責任を取って退任。新社長は、就任するやいなや、マスコミの激しい追及にさらされました。
さぞかしお疲れだろうと思っていると、疲労感など全くにじませない凛とした顔つきをされている。静かで覚悟の決まった表情。同時期に副社長に就任した方は、わずか半年で身体を壊し、退任を余儀なくされました。
しかし、副社長よりもずっと厳しいマスコミの糾弾を受けている社長は、精悍な目つきで私の目の前に座られている。思わず、あまりにシンプルな質問が口をつきました。
「大変じゃないですか?」
真っ直ぐな目で私を捉え、そして答えて下さいました。
「社長就任を内示されたときに、想定しましたから。社長とは、そういうことを全部含めた仕事だ、と。マスコミに叩かれる、報道陣の前で謝る、家までつけまわされる。このタイミングで社長を引き受けるとは、そういうことです。ですから、それで参るということはないですね」。
「やっかいなこと」の引き受け方
「レジリエンス」という言葉があります。元々は物理学の言葉で、「外力による歪みを跳ね返す力」という意味です。これが転じて、「精神的回復力」「抵抗力」などの意味を表す心理学用語として昨今は使われています。
マネジメントの世界で「彼はレジリエンスが高い」と言えば、大きなストレスに遭遇しても、それをもろともせず、前に進んで行けるような人のことを表現します。
このレジリエンスを、どうすると高く保つことができるのか。いろいろと方策は論じられていますが、一つの大きなキーファクターは、「自分の役割に付随してくるであろう『やっかいなこと』までを、あらかじめ引き受けてしまうこと」だと思います。
何も、管理職や経営者という役割に対してばかりではありません。
親として、地元のスポーツチームの監督として、あるいはマンションの管理組合の理事として...。どんな役割を引き受けても、「やっかいなこと」は必ずついてきます。
「子どもが学校で問題を起こす」「チームの子どもの親から『なぜうちの子をレギュラーで使わないのか』とクレームを言われる」「組合員がやる気がなく誰も会合に集まらない」など。
何をやっかいだと思うかは、人によって元々差があると思いますから、まずは、「あなたにとってのやっかいなこと」を、イメージしてみてください。
そして、ぜひ、それらを「あらかじめ」心の中で引き受けてみてください。いざというときのレジリエンスは、間違いなく高まりますから。
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