Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。
成功し続ける組織のリーダーがやっていること
2016年09月21日
革新的なビジネスモデルで、世の中に新たな価値を創造するベンチャービジネス。その最大の魅力は、既存の社会秩序や価値観をくつがえす、大きな変化を起こす爆発力です。
しかし、このようなベンチャービジネスには、持続的にイノベーションを起こし、成長・発展し続ける企業もあれば、その後衰退し、失敗する企業もあります。
世界初のプッシュ型ダイレクト広告システムによる無料インターネット接続サービスを開発し、「ニュービジネス大賞」、「通商産業大臣賞」を受賞したものの、倒産にいたったハイパーネット。上場するも、経営破綻に陥ったネットコンテンツやゲーム事業を手がけていたインデックス。一時は大きな成功を手にしながら幕を閉じる例は、枚挙にいとまがありません。
このような差は、なぜ生まれるのでしょうか?
大きな目標を達成した後に訪れる危機
私のエグゼクティブ・コーチングのクライアントには、いわゆるベンチャー起業家の方々がいらっしゃいます。
急成長を遂げ、上場などの大きな目標を達成した後も、さらなる成長を目指したいというのが、大体みなさんに共通したテーマです。その中で最大の課題として挙がることも共通しています。それは「急成長期に比べ、社員が保守的になっている」というものです。
「新たな事業や商品を開発し、ビジネスモデルを進化し続ける。 そして、新たな成長軌道に乗る」
こうした自らの想いとは逆に、「役員や社員が、次の成長につながる行動を起こしていない」と、急成長後に、組織の能力が後退していく危機感を感じる起業家が多いのです。
成功し続けるための風土
「このままでは、会社が衰退する」
クライアントA氏の会社も、創業後に急成長を果たし、上場後、安定成長期に入ったときに、このような現象が起きていました。これまでは、A氏自らが新たな商品、事業を立案し、会社を大きく伸ばしてきました。
「Aさんについていこう」
「Aさんのアイディアを実現しよう」
社内はそうした機運で拡大成長してきたともいえます。しかし、これからも自分一人で、強い商品、事業を生み出していくことに、A氏は限界を感じ始めます。
「自分一人の経験・知識だけでは、環境変化に対応した新事業の開発は難しい」
しかし、会社が成長していく過程で、役員や社員たちも徐々に安定志向になっていきます。
新たな大きな変化を創り出すよりも、すでに得た地位や物資的な満足を維持することに意識が向いていくようになってきました。また、会社の拡大化に伴い、様々な仕組みや制度が整備され、いつしかそれに従って仕事をすることが目的となり、イノベーションから遠ざかってきたのです。
「自分ではなく、役員や社員たちが新事業を生み出す組織を創る」
A氏は、このような目的をもち、自らがエグゼクティブ・コーチングを開始することにしました。
成功し続けるためのリーダーシップ
A氏が具体的に取り組んでいることは、「社内から経営者を生み出すこと」です。
次世代を担う若手のリーダーが新たな事業を開発し、立ち上げる。そして、その事業部門の責任者として経営していく。場合によっては、別会社化し、社長になる。
役員は、若手リーダーが挑戦する場を提供し、事業開発を継続的にサポートする。そして、経営者創出の風土を定着させるリーダーシップを発揮する。
このように、A氏は、新たなベンチャービジネスが生み出される土壌をつくろうとしています。そして、その具現化にむけて、会社全体で「経営者の開発」に取り組めるよう、役員、幹部社員もエグゼクティブコーチをつけています。
ネット業界で大きな存在感を示している起業家、サイバーエージェントの藤田晋社長。1998年に創業後、2000年に上場。その後も事業を成長させ続けています。
藤田氏は、他の起業家と何が違うのでしょうか?
藤田氏は、人材、組織を成長させることを重視した経営をしているのが特徴なのではないでしょうか。社員に権限委譲し、新規事業の開発、運営を任せることで、会社を大きく成長させてきています。(※1)
藤田氏は、まさに、「経営者の開発」に取り組むベンチャー起業家といえるでしょう。
早稲田大学名誉教授の松田修一氏によると、ベンチャー企業が新たな成長を図るための条件は、
・衰退期に入る前の安定成長期の間に新成長期に移行すること
・社内ベンチャーを活発にすること
・組織全体にイノベーションを継続する風土をつくりだすこと
だそうです。(※2)
一時の成功に安住せず、組織の継続的な成長に向けて、新たなビジネスを生み出す人材開発。これが、ベンチャー起業家が成功し続けるための具体的な条件のひとつだといえるでしょう。
あなたは、会社を衰退させず、成功し続けるために今、何をしていますか?
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【参考資料】
※1 國貞文隆、『カリスマ社長の大失敗』、メディアファクトリー、2013
※2 松田修一、『ベンチャー企業』、日本経済出版社、2005
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