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リーダーはどこを見られているか ~ ノンバーバル・コミュニケーションの影響力

[原題]リーダーはどこを見られているか
リーダーはどこを見られているか ~ ノンバーバル・コミュニケーションの影響力

選挙などのとき、人は、より低い声の候補者に投票する傾向があるようです。「声の低さ」が「肉体的強さ」「能力の高さ」「高潔さ」に結び付くからです。(Martin, 2015)

リーダーは、ともすると「何を言うか」という「内容」や「中身」に終始する傾向がありますが、人は、それだけに影響を受けるわけではありません。

私たち人間は、言葉だけで成り立っているわけではなく、五感のすべてで「関係を感じ取りながら」生きている存在です。言語(バーバル)と非言語(ノンバーバル)の両方でコミュニケーションを交わしているのです。

人の「関係性」に影響が大きいコミュニケーションはどちらか?

とくに、直接的でより影響が大きいのは、ノンバーバル・コミュニケーションにあると言われます。視線、顔の表情、手の動き、体全体の動きだけではなく、体全体から発せられているもので、意識している、いないにかかわらず、人と人は、向き合うだけでお互いに影響し合うものです。

それは、伝統的に「客観的事実」が最優先されてきたかのように見える、ビジネスの世界や組織の中でも変わりません。そして、何より大事なことは、五感で感じ取ったことは、私たち自身や周りの人たちの次の行動をも左右するということです。

では、私たちは、お互いに、何を感じ取ろうとしているのでしょうか?

ハーバード・ビジネス・スクールの社会心理学者であるAmy Cuddy博士は、さまざまな文化を背景にもつ数千人に及ぶ心理学的研究から、私たちが感じ取ろうとしているものは、「温かさ」と「能力」の2つの側面に集約されると述べています。(Cuddy et al., 2011)。私たちは、主に、この2つの側面で人を判断し、世界を分類しているようなのです。

ではなぜ、「温かさ」と「能力」なのでしょうか?

それは、人間が、他者について知るための根源的な問いに答えてくれるのが、この2つだからです。根源的とは、つまり自分の安全を守るための本能的な問いという意味です。

まず人は、誰かと向き合ったとき、「この人は、私に対して、どういう意図をもっているのか? 好意か否か」ということを察知しようとします。これが「温かさ」です。

そして次に、「この人は、その意図を実行に移す能力を、どれだけもっているか?」ということを見極めようとします。これが「能力」です。たとえ敵意があったとしても、その能力によって、「逃げる」のと「戦う」のと、どちらの方がより賢明な選択か、決断が違ってくるというわけです。

態度や振る舞いが発するメッセージ

「ふんぞり返る」、「体を自分とは別の方向に向けている」といったしぐさをする人と接していると、パフォーマンスが落ちるという実験結果があります。(Word, Zanna & Cooper, 1974)

また、医者が将来訴えられる可能性を予測するのは、その「能力」でも、患者に伝えた治療に関する情報の質でもない、という研究もあります。(Taragin et al., 1992; Sloan et al., 1989)

むしろ、訴えられる可能性があるかどうかは、その医者が、その患者に対して、「温かさ」や「気づかい」を示したかどうかによるという結果でした。それは、医者の示す「アクティブ・リスニング」や「ユーモア」、「おだやかな声のトーン」といった行動を通じて、患者が感じ取るものです。患者は、自分が好きな医者は訴えないのだと。(Ambady et al., 2002; Levinson et al., 1997)

このことは、周囲に対して説得力をもとう、影響力を高めようとしてもうまくいかない、誰も自分の話を聞かない、という思いをしているリーダーへのヒントになるかもしれません。

リーダーが犯しがちな過ちとして、上述のCuddy博士は、次のように書いています。

「まず、立場を示して、そして、聴衆を自分に向けようとする」と。(Cuddy et al., 2011)

リーダーは、ともすれば社員たちを一方的に評価する立場のように思いがちですが、実は、社員も、リーダについて「言葉」以外のところで感じ、評価しているものです。

そして、Cuddy博士は、この典型的なリーダーがやりがちなこととは逆のことを提案します。

「エビデンスは、リーダーはまず、『つながる』こと(『温かさ』を示すこと)、そしてその後に、『率いる』ことが必要だと示している。ほとんどのケースにおいて、リーダーは、聴衆を『動かす』ことができるようになる前に、彼らが今いるところに行って、信頼を築いたり、理解を示したりしなければいけない」(Cuddy et al., 2011)と。

あなたはどんなメッセージを伝えていますか?

あなたは、部下と話しているとき、自分がどんな表情をしているか知っているでしょうか?

どんな身体の動き、しぐさをしているでしょうか?

周囲に何を発しているでしょうか?

そして、また、周囲の人たちのノンバーバルを、どれだけ読み取れているでしょうか?

エグゼクティブ・コーチングでは、「言葉」以外で発信したり、受信したりしていることについても扱います。こうしたことに対するリーダーの自己認識の深さも、経営の意思決定のクオリティに影響を及ぼすからです。

企業経営陣にコンサルティングも行っている心理学者のLola Gershfeld博士は、取締役会の「人間性」が「生産性」に与える影響が見落とされがちだ、と警鐘を鳴らします。

「取締役会は、高い知能をもつメンバーで成り立っている。取締役会が機能不全に陥っているとき、その原因が、『役員の能力の低さ』にあることは極めて稀だ。それよりも、『お互いのつながり』が絶たれていることが原因である方が多い」
(Gershfeld, 2016)


以前、『ココロの温度はいま何度?』という本を執筆しました。

コミュニケーションを交わしているときに、「いま、このコミュニケーションの温度は何度?」という問いかけはどうでしょうか?

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【参考文献】
Ambady, N., LaPlante, D., Nguyen. T., Resenthal, R., Chaumeton, N., & Levinson, W., 2002, Surgeon’s tone of voice: A clue to malpractice history. Surgery, 132, 5-9.
 
Barger, P.B., & Grandey, A. A., 2006, Service with a smile and encounter satisfaction: Emotional contagion and appraisal mechanism. The Academy of Management Journal, 49, 1229-1238
 
Cuddy, A. J. C., Glick, P., & Beninger, A. (2011). The dynamics of warmth and competence judgments, and their outcomes in organizations. Research in Organizational Behavior, 31, 73-98.
 
Gershfeld, L., 2016, How managing emotions can improve board effectiveness, ChiefExecutive.net
 
Martin, S., 2015, ‘Caveman instincts’ encourage us to vote for politicians with deeper voices, IBTimes Co., Ltd.
  
Taragin, M. I., Wilczek, A. P., Karns, M. E., Trout, R., Carson, J. L., 1992, Physician demographics and the risk of medical malpractice. American Journal of Medicine, 93, 537-542.
 
Word, C., Zanna, M. P., & Cooper, J., 1974, The nonverbal mediation of self-fulfilling prophecies in interractial interactions. Journal of Experimental Social Psychology, 10, 109-120

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