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『オズの魔法使い』に学ぶ~部下の自発的な行動を引き出す上司の関わり方

『オズの魔法使い』に学ぶ~部下の自発的な行動を引き出す上司の関わり方
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「自分の願いをかなえる力は自分にある」

これは『主体的に動く アカウンタビリティ・マネジメント』(原題The OZ Principle)の冒頭の記述です。

本書の「はじめに」は、

「『オズの魔法使い』のドロシーたちのように、自分の願いをかなえる力は自分の中にあるのだと気づいてもらえることを切に願う」

という言葉で締めくくられています。

願いをかなえる社長、かなえない社長。二人の共通点と違いとは?

3年前に、タイで、二人の日系企業の社長に出会いました。

お二人とも、タイでゼロから工場を立ち上げ、その拡大に成功されています。共通しているのは、自分がトップに立ち、強い牽引力でここまで引っ張ってきたこと。話を聞くと、お二人からまったく同じような答えが返ってきました。

「数年前にこの工場を立ち上げて、日本人は自分一人でここまで引っ張ってきた。

怒鳴る、叱責するは当たり前、強い指示、命令型で工場を拡大してきた。ところが、ここにきて、自分が言わなければやらない、現地のマネージャーには任せられない状態が起こっている。このままではこれ以上の発展は望めない」

しかし、この先は対照的でした。

A氏
「考えてみれば、これまでの自分のやり方が、今の状態を作ったのだと思う。工場の発展には、タイ人に対する私自身の関わり方を変えることが必要だ」

B氏
「自分の右腕だと期待して育ててきたタイ人マネージャーがもう少し優秀だったら、工場はもっと拡大できたはずだ」

そして今、A氏の工場の生産額は1.5倍に拡大し、3年前のマネージャーがタイ人として初めて、社長に昇格する見込みとなりました。

一方、B氏の工場ではタイ人の離職が相次ぎ、社長は日本に帰任することが決まりました。

願いをかなえる社長とかなえられない社長、違いは何か?

「アカウンタビリティ(accountability)とは、主体的に自ら進んで仕事や事業の責任を引き受けていく、という意識です。

「今のこの状況を作ったのは自分である」という立場に立ち「この状況を変えることができるのも自分次第であり、この状況の中で何をすることができるかに目を向け、実行する、それでうまく行くかどうかはわからないが実行して、その結果を受け入れて、さらに何ができるかに目を向け、実行する」というあり方だと言うことができます。

その反対は、「ヴィクティム(victim)」。

つまり、被害者的な立場で、今起こっていることは自分の責任ではない、部下の生産性が低いのは部下自身に問題がある、と考えるわけです。

今起こっていることに対して、「自分には責任がない。今起こっていることは、環境や状況、他人のせいだ」と考える。

これは、「自分は悪くない」という正当化にほかなりません。気持ち的にはその方が楽かもしれませんが、環境や相手が変わらなければ状況は変わらない、自分が影響することはできないと考えるわけですから、自己効力感や自信の低下という負のスパイラルに入ることにもなります。

海外に駐在する日本人からよく耳にするのは、

  • 現地スタッフは働かない
  • 現地スタッフの能力は低い

一方で、「現地スタッフにも優秀な人材はいる。能力を発揮させられるかどうかは日本人上司の関わり方次第だ」と考える人も多くいます。

どちらが正しいかはわかりません。しかし、「どちらの立場をとるか?」で、事態は大きく変わるのだと思います。

さらに、上司として、部下に対して「仕事ではアカウンタビリティを自ら発揮するのが当然であり、発揮できないのは部下自身の問題だ」という「立場をとる」こともできます。

しかしこの「立場」は、部下の自発性の発揮に「依存」していることになるわけで、上司としてのアカウンタビリティに欠けている、と見ることもできます。

では、部下のアカウンタビリティを引き出す「上司の関わり方」とはどのようなものなのでしょうか?

コーチング研究所が「上司のコーチングの度合い別にみた、部下の自発的な行動」について調べたデータがあります。



図1. 上司のコーチングの度合い別にみた、部下の自発的な行動

部下の自発的な行動(部下自身の回答)

7段階評価(1.全くあてはまらない - 7.とてもよくあてはまる)

上司のコーチングの度合い(※)

***p<.001

※上司のコーチングに対する部下の20項目の評価平均から「高い」「普通」「低い」のグループへ分類

上司からコーチングを受けた、部下1,991人の回答

コーチング研究所調査 2016年

このリサーチから、部下から見て、「自分の上司はコーチをしてくれている」と感じている部下の方が、自発的な行動の度合いが高いということがわかります。

次のデータは、上司のどのような関わりが部下のアカウンタビリティに影響しているかをみたものです。



図2. 部下のアカウンタビリティに関係の深い上司の関わり Top10

- [A] アカウンタビリティが高い部下と [B] アカウンタビリティが低い部下の上司の関わりの違い(※) -

※部下が自身のアカウンタビリティについて回答した結果 [A] スコアが高い上位20%と[B] 以下20%

リーダー1,360人に対する、部下11,855人の評価平均

コーチング研究所調査 2016年

このように、部下のアカウンタビリティに関係の高い上司の関わりのトップ10は、ほとんどがコーチ的なコミュニケーションであることがわかります。

願いをかなえたA氏の工場

冒頭でご紹介したA氏の工場では、A氏を含めたマネジメント層全体でコーチングによる風土改革に取り組み、この3年間で見違えるような変化を遂げました。

当時は業務のほとんど全部に指示を出していた社長は、現在はタイ人スタッフに工場の操業のすべてを任せられるようになったとコメントしています。

A氏が自分自身の部下への関わり方を変えたことで、A氏やタイ人スタッフが目標とし、夢としていた「タイ人たちの工場」という現地化の達成に、間違いなく近づいています。

アカウンタビリティを発揮する。

それは、部下が「自分の願いをかなえる力は自分の中にある」ことに気付くことにほかなりません。

そして、その引き金を引くのは、上司のアカウンタブルな関わりだと思うのです。

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【参考資料】
・ロジャー・コナーズ(著)、トム・スミス(著)、クレイグ・ヒックマン(著)、伊藤守(監訳)、花塚恵(翻訳)、『主体的に動く ~アカウンタビリティ・マネジメント~』、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、2009年

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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