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「やっかいな問題」を乗り越える4つのこと

「やっかいな問題」を乗り越える4つのこと
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「すべての悩みは対人関係の悩みである」

ここ数年、日本でも注目されている19世紀後半オーストリアの心理学者、アルフレッド・アドラーの言葉です。

みなさんは、この言葉にどんな印象をもたれますか?

「すべて、というのは言いすぎでは?」と思いながらも、経営者の方々の話を伺うと、確かにそうかもしれない、と思う場面が少なくありません。

目標達成の度合いが高い「エグゼクティブ」がもつ能力とは?

「このままでは、数年後にはうちの会社は傾いてしまう」と言いながらも、それを社長に進言できないでいる副社長のAさん。

優秀な経営企画メンバーを多数そろえ、コンサルティング会社に高額なフィーを支払い、すばらしい事業計画が出来上がったにもかかわらず、反対派閥によってスタート直後から計画が崩れてしまった経営戦略担当役員のBさん。

どちらも重大な経営上の課題が、シンプルかつ、やっかいな対人関係の問題によって頓挫しています。

この「やっかいな問題」とは、「人と人との対立や衝突を扱えないままの状態」と言い換えてもいいでしょう。

人が昇進すればするほど、問題は対人関係に関連したものになる、とさまざまな人が言っています。他のすべての条件が同じであるなら、対人能力、あるいはその欠如によってその人がどこまで上り詰められるかの違いが出てくる、と。

また、コーチング研究所の調査では、目標達成の度合いが高いエグゼクティブほど、相手との意見の不一致や対立を扱えるようになった、ということが分かっています。(※1)

つまり、エグゼクティブにとって、対人関係はそれだけ重大な問題、と言えるのでしょう。

「やっかいな問題」を乗り越えるエグゼクティブに「起こっている」こととは?

では、こういった人と人との対立や衝突などの「やっかいな問題」を乗り越える行動を起こせるエグゼクティブと、行動を起こせないエグゼクティブには、どのような違いがあるのでしょうか。

私は、「やっかいな問題」を乗り越える行動を起こせるエグゼクティブには、次の【4つのこと】が起こっている、と感じています。

① 自分が手にしたい、心から実現させたい、と思える大切な目標や目的が見つかること
② その目標を自分が決めた、という実感があること
③ 応援してくれる人とのつながりを感じられること
④ 変化につながる小さな一歩がみつかること

これらが起こったとき、「やっかいな問題」は、当初より小さく見え、乗り越えるに足る勇気が沸いてくるのではないか、と。

コーチング研究所での調査でも、「コーチングを通して自身が高い成果を出した」と感じている経営者に対してエグゼクティブコーチが特出して行っているのは、目的や目標について、より丁寧に対話をしていることが分かっています。(※2)

また、UCLA医科大学准教授の心理学者であり、臨床心理士のロバート・マウラー氏は著書の中で、人はそもそも変化を恐れるものである。ただ、脳が気づかないような小さな変化であれば、行動変容を起こすことができる、と書いています。(※3)

人が、人との関係においてこれまでと違う行動を起こそうとするときに邪魔をするのは、自分の中のエゴやプライドだと思います。

  • 私の立場を守りたい
  • 私のメンツを守りたい
  • 私のイメージを守りたい
  • 私の価値観を守りたい など

「私の○○」が失われそうになったとき、私たちは恐れを感じ、動けなくなります。

自分を守るために、他の人にその人の悪口を言ったり、キレたり、落ち込んだり、いらいらしたり...。自分を守ることに、ほんとうに、必死になります。大きな成功をおさめてきたエグゼクティブであるなら、より守りたいものは大きそうです。

そのとき、彼ら(彼女ら)の変化を促す要素が上記【4つのこと】だと私は思うのです。

「やっかいな問題」を乗り越えた役員

前述の経営戦略担当役員のBさんとは、数年にわたりコーチをさせていただき、後日談があります。

コーチング開始当時のBさんは、経営戦略立案の能力は抜群でしたが、社内外の人とうまく関係がうまく保てず、頭脳明晰な部下も遠ざけてしまっていました。負けず嫌いで、だいたいにおいて相手を論破し、誰かを不公平に扱ってしまうこともしばしば。自分のせいで何かが起きても、謝罪の気持ちや、感謝の気持ちを表すのが苦手でした。

そんなBさんでしたが、育ててもらった自社と自社製品をこよなく愛し、心から手にしたいことは、会社が傾きかけた時期、是が非でも立て直したい、という強い思いでした。Bさんの思いは、歯を食いしばって付いてきていた何人かの部下には伝わっていました。あるとき、部下に匿名のインタビューをすることになりました。

インタビューで語られたのは、Bさんと一緒に仕事をすることのつらさと同時に、「会社をなんとかしてほしい」という切実なる願いと、それを担えるのは、Bさんしかいない、という信頼の言葉でした。

部下たちの思いはその後、Bさんをエゴとプライドから開放し、行動を変えるきっかけとなっていきました。Bさんが試した最初の一歩は、部下に対するねぎらいの「ありがとう」を言うことでした。

もちろんすべてのケースが当てはまるとは思いません。が、もし皆さんが重要な立場にありながら、「やっかいな問題」に直面することがあれば、この【4つのこと】を確認してみてはいかがでしょうか。

何か見えてくるもの、感じるものがあるかもしれません。

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【参考資料】
※1 コーチング研究所調査「経営者が目標達成するために身につけるべき能力とは」(2015年)
※2 コーチング研究所調査「成果を出す経営者とエグゼクティブ・コーチング」(2015年)
※3 ロバート・マウラー(著)、本田 直之 (監修, 監修)、中西 真雄美 (翻訳)、『脳が教える! 1つの習慣』、講談社、2008年

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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