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できればしたくない、でも必要な行動を起こすには

できればしたくない、でも必要な行動を起こすには
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会社を成功させる。あなた自身を成功させる。

その実現のために、最も重要な「行動」は何でしょうか?
それは、今どのくらい「実行」できていますか? やろうと思っているのに、実行できていないことはありますか?
それは、「なぜ」今まで実行できなかったのでしょうか?

サウスウェスタン・コンサルティング社の共同設立者、ロリー・バーデンによると、人間の行動は、突き詰めると、次の「2種類」しかないそうです。(※1)

  1. 進んで「したい」行動
  2. できれば「したくない」行動

とてもシンプルな分け方で、拍子抜けしそうな感もありますが、自分の行動を振り返ると、確かにこの2種類しかないように思います。

会社やあなたの成功のために、とても重要で、頭では避けてはならないとわかっている、でも、正直言えば「面倒くさい」「後回しにしたい」そういう行動が、「できればしたくない行動」なのでしょう。

あなたの「できればしたくない行動」は何でしょうか? 私のエグゼクティブ・コーチングのクライアントのA氏にも「できればしたくない行動」がありました。

ある経営者の「できればしたくない行動」とは?

製造業を経営するA氏は、約2年前からエグゼクティブコーチをつけています。目的は、業績を更に25%成長させるための中期経営計画の達成。

「今の社員の行動では、計画は達成できない」。学習姿勢、部下育成、社員間の協力、縦横での本音の意見交換、主体性など。今の社員の状態にA氏は強い不満を感じていました。

エグゼクティブ・コーチングを開始して、しばらくたったある日のセッション。

「会社は、社長の写し鏡とよく言われますよね。業績や会社の風土も元をたどると、全て社長に行きつく。社員に不満を言う前に、自分が率先して変わる必要がある」。A氏は、このような考えを私に話しました。そして、A氏は、次のような自分自身の行動目標を立てました。

  • 重要な教育・研修は、部下の参加意識を高めるために、自ら率先して受講する。
  • 部下育成を他人任せにせず、自ら直接関わる。
  • ある役員との関係を改善する。
  • 部下、同僚、会長に対し、必要であれば言いにくいことでもはっきり意見を言う。
  • 中期経営計画の達成に向けて、常に部下と話す。
  • 自分がリーダーとして機能しているか、周囲からフィードバックをもらう。

しばらくして、A氏はこの行動項目についての実践度を測定するために、社内リサーチをしました。 残念ながら、A氏の行動にはさして大きな変化は見られませんでした。

人の行動の4割以上を決めるものは何か?

A氏は、「自ら変わる」という宣言を打ち立てました。にも関わらず、なぜ行動は起きなかったのでしょうか? 人は毎日、数多くの「行動」を起こしています。ニューヨークタイムズ紙記者のチャールズ・デュビック氏の研究によると、人の毎日の行動の4割以上は、その場で自分で明確に選択しているものではなく、習慣だということです。(※2)

A氏は、今までの自分の行動パターンの棚卸をしました。

  1. 面倒な行動を先延ばしする。
  2. 特に人間関係で面倒なことを嫌い、後回しにする。
  3. そして、目先のちょっと楽なことを選択してしまう。

つまり、「できればしたくない行動」をtodoリストに入れるものの、反応的に避ける傾向がありました。

「また後で」それは、A氏の「厄介な」無意識の習慣でした。

無意識の習慣を変える工夫

A氏は、「できればしたくない行動」を起こしていくためのある方法を考えました。

まず、「できればしたくない行動」項目を一気に全て実行することをあきらめ、1日1つの行動項目を実践すると決めました。 そして、その行動項目を実践するための具体的なアクションを選択肢として3つ用意することにしました。例えば、「ある役員との関係を改善する」であれば、

  1. 役員をランチに誘う
  2. 役員と15分間のショートミーティングを持ち、仕事の進捗について聞く
  3. 役員会議の中で、その役員の取り組みをアクノレッジする

という3つのアクションの中から1つを選んで実行する。
実は、コーチングでは、通常3つ以上の選択肢を考えることを提案します。

なぜ、3つなのか? 選択肢が1つしかないと、「やるか? やらないか?」という、心理的には「脅迫」を受けたような状態になります。「迫られたからやる」ということになり、本来の「選択」が起きません。選択肢が2つだと、「どちらがいいか?」と2つの違いを比較する視点になり、「創造的に」選択するということが起きません。

選択肢が3つになってはじめて、「今使えるやり方はどれか?」という「主体的な」選択となり、「自分で選んでいる」という実感がより高まります。この「自分で選んでいる」という実感こそが、実際のアクションを引き起こすことにつながるのです。A氏は、この方法によって、「できればしたくない行動」を具体的なアクションにつなげることに成功しました。

成功する人と失敗する人。その間には、どのような違いがあるのでしょうか? とてもシンプルにしてしまえば、成功に向けて必要な「行動」を取っているか取っていないかということになるのではないでしょうか。そして、多くの場合、何が必要な行動かはわかっている。ただ、それが「できればしたくない行動」というカテゴリーに入る場合は、それを実際に起こすための工夫、新しい習慣を創る必要がありそうです。

会社やあなたの成功のために重要なことは何ですか? 本当は避けない方が近道だけれども、正直言うと面倒くさいと感じてしまっていることは何でしょうか?

そうした「できればしたくない行動」を確実に実行していくために、あなたはどのような新たな習慣を「創造」しますか?

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【参考資料】
※1 ロリー・バーデン(著)、児島修(訳)、『自分を変える1つの習慣』、ダイヤモンド社、2015年
※2 チャールズ・デュヒッグ(著)、渡会圭子(訳)、『習慣の力』、講談社、2016年

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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