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新しい行動の発見
コピーしました コピーに失敗しました企業の業績とは、シンプルに言ってしまえば、社員がどのような行動を日々積み重ねたかの結果であると言えます。
業績を向上させることに繋がる行動を全社員が毎日取っていれば、おそらく、いや間違いなく、その企業の業績は右肩上がりとなるでしょう。だから、企業は、社員に業績向上への「正しい」行動を取ってもらうべく、
1. まず戦略を会社の年次目標に落とし
2. それを一人ひとりの社員の目標へと繋げ
3. その目標を達成するための個々の行動を明らかにし
4. 期初にそれを「握り」
5. 期末に振り返る
ということをやってきました。
そこには前提として、業績を上げるための「正しい行動が存在する」という仮説があるのだと思います。
ところが、もはやビジネスに「年次サイクル」などはなく、短期的なプロジェクトが数多く存在する中、社員は毎日新しい行動を考え、選び、実践していく必要があります。日々行動に変化が求められていると言っても過言ではないでしょう。
新しい行動を考え、選び、実践するためにマネージャーに求められることとは?
GEオイル&ガスカンパニーのレオナルド・ボルドサーレとブライアン・フィンケンが述べるように、業績向上に向けたベストな行動を社員が毎日選択するためには、マネージャーは、部下の行動が正しいかどうかを「批評する」のでなく、「コーチする」必要があります。(※1)
つまり、問いかけ、「一緒に考える存在」にならなければいけない。
どんどん変化する環境の中では、マネージャーにすら解はありません。だから一緒に話し、一緒に考え、一緒に選び、一緒に振り返る。
GEではこれを推し進め、社員が自分の社内ネットワークからフィードバックを受け、今求められている行動が何かについて、いち早く考え見つけ出すためのシステムを創りました。
業績向上に向けて、周囲の誰かが取っている行動を「続けた方がよい」と思えば、自社開発したITツールで「Continue(継続して)」というメッセージを送る。変えた方がよければ、「Consider(検討して)」というメッセージを送る。
同社では、2つの基本の問いに何度も何度も繰り返し立ち返ろうとするそうです。(※2)
● 「今、私がやっていることで、続けるべきことはどれか?
(What am I doing that I should keep doing?)
● 「今、私がやっていることで、変えるべきものはどれか?」
(What am I doing that I should change?)
GEジャパン熊谷昭彦社長の著書『GE変化の経営』の帯には「世界最大にして最速の組織」と書かれています。常に社員の行動を新しくしようとする姿勢がそれを可能足らしめているのでしょう。
著名な経営者が一言で語る「経営」とは?
以前、日本の著名な経営者の方から「人材開発について議論したい」とのメッセージをいただき、胸躍らせて、先方の会社に馳せ参じました。
1時間、一対一でいろいろと意見交換する中で、とても印象的だったのが、その方が「経営は一夜漬けですよ」と喝破したことでした。
行き当たりばったりということではありません。状況はとにかく毎日変わる。1週間後のことさえわからない。だから明日に向けて必要なことは何かを考え、それを実行に移す。そのために、役員と一緒になって必死になって考える。経営は常に一夜漬け。そういう感覚を少なくとも管理職以上には持ってほしいのだと。
業績を上げるためにこうすれば良い、つまり正解などなく、とにかく毎日考える。必要な行動を考える。できることを考える。明日に向けて必死に考える。それができるのが経営人材だと。
行動を変えることを、ビヘイビア・モディフィケーション(Behavior Modification)と言います。Modificationの原義は「区切る」こと。つまり、なんとなく同じ行動を疑いなく日々続けるのではなく、しっかり「区切る」。そして「新しい行動を発見する」。
まずは立ち止まって、自分の行動が業績向上に繋がるものかどうなのか、「区切って」観てみてはどうでしょうか?
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【参考資料】
※1
Leonardo Baldassarre and Brian Finken
GE’s Real-Time Performance Development
Harvard Business Review, 2015
※2
Peter Cappelli and Anna Tavis,
The Performance Management Revolution
Harvard Business Review, 2016
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