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部下の好奇心に火をつける2つのアプローチ

部下の好奇心に火をつける2つのアプローチ
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15世紀に活躍した、ある偉大な人物のTo doリストの一部をご紹介します。誰のものだと思いますか?

  • 数学者に三角形の面積を測る方法を教えてもらう
  • Aさんにフランダース地方での氷上での移動の方法をきく
  • ミラノと郊外の町を測量する
  • 水力学の専門家を探して、ロンバルディアでは、運河や製粉所の補修はどう行われているか教えてもらう

これは、あのレオナルド・ダ・ヴィンチがつくったTo doリストです。実際は15項目あり、そのうち8項目は誰かに教えを請う内容です。

創造性の源泉とは?

ダ・ヴィンチは、そのあくなき「好奇心」で芸術の分野以外にも、解剖学、土木、光学、流体力学など多様な領域で大いなる創造性を発揮しました。

そもそも、人間は約6万年も前から、その「好奇心」によって未知の世界を探索し、その土地、土地で生き延びるための様々なイノベーションや創造性を発揮してきました。

今、企業やリーダーは、「未知の世界」に直面しています。

多様性にあふれ、環境変化が著しく、過去の答えが通用しないビジネスの世界は、6万年前と何ら変わらず、既存の概念や枠組みを越えた発想や創造性が求められているのです。つまり、新たな発想や創造性を開く起爆剤ともいえる「好奇心」をいかに引き出すかは、時代を問わず、リーダーに求められているもののひとつと言えるでしょう。

イノベーションを妨げているのは何か?

あるメーカーの役員Aさんは、技術者出身です。

Aさん曰く「私は若い頃から様々な部署に異動したおかげで、異なる領域の技術者から学ぶ機会が多くありました。彼らと話すことで、自分がわかっていると思っていたことがわかっていなかったり、別の視点から検証・考察したりすることができました。そこから新たな発見や解決策を手にいれることが度々ありました」

そのAさんが懸念しているのは、部下たちが、何事も「わかったつもり、知った気になっている」ように見えること、新しいアプローチや既存の技術にすら「好奇心」を持つことが少ないと感じることでした。こうした状況が、イノベーション、つまり技術の開発や新規事業立ち上げの遅れに関係しているのではないか、というのです。

部下の「好奇心」に火をつけることがAさんの強い想いでした。

人は、ある一定の領域まで経験を積むと、実際以上に「自分は知っている」と確信する癖があるといいます。神経学者のロバート・バートンはこのことを「確信エピデミック」とよんでいます。この状態になると、人は「好奇心」を失い、創造性への道を閉じてしまうのだそうです。

そこで、まず、Aさんが心がけたことは、

「なぜ、お客様は我々の技術を採用しているのか?」
「今の技術を超える技術はどこにあるのか?」
「私たちの技術と競合の技術の間にある技術は何か?」

などの「問いかけ」を部下に投げかけていくことでした。

人は「知らない」ことがあると「知りたく」なる動物です。カーネギー・メロン大学の心理学者ジョージ・ローウェンスタインは、「好奇心は『情報の空白』に対する反応である。私たちは知りたいこととすでに知っていることの間に空白があると好奇心を抱く。知りたいという欲求を呼び覚ます」と言います。

「当たり前」と思っていたことを「問う」ことで、部下たちの脳内に、「知っていることもあるが知らないこともある」という「情報の空白」をつくるようにしたのです。

「好奇心」を阻害するもうひとつの要因

「情報の空白」をつくるのと同時に、Aさんはもうひとつのことに取り組みました。

Aさんは、組織の「失敗がゆるされない雰囲気」も、新しいことをやろうとする「好奇心」を低下させている要因のひとつだと考えていました。「好奇心」は、過信があっても火がつきませんが、不安があってもつくことはありません。心理学者のトッド・カシュダンは「不安と好奇心は相反するシステム」だと説きます。

「もし失敗しないとわかっていたら、どんな挑戦をしたいですか?」

Aさんはこんな問いかけも繰り返しながら、「失敗も良し」とする文化をつくっていきました。2つの関わりを通して、部下が他部門や社外の人に意見を求めたり、質問をし合うような風景が見られるようになってきたといいます。

少しずつではありますが、部下の「好奇心」に火がつき出したそうです。

「好奇心」は、人の創造性を開花させる源といえます。

「好奇心」を掻き立てられると、脳内で快感や学習意欲に関わるドーパミンを放出する神経細胞が集まる尾状核という部位が刺激されます。「好奇心」が喜びや学習を促進させ、ひいては、創造性を促進させていくきっかけになるのです。

リーダーの仕事の一つは、部下の「好奇心」に火をつけ、創造性を促進させることにあります。

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【参考資料】
・イアン・レズリー (著)、須川綾子 (翻訳)、『子どもは40000回質問する ~あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力~』、光文社、2016年
・ウォーレン・バーガー(著)、鈴木 立哉(翻訳)、『Q思考――シンプルな問いで本質をつかむ思考法』、ダイヤモンド社、2016年

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