Coach's VIEW

Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。


フィードバックを受ける力の高め方

フィードバックを受ける力の高め方
メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

「フィードバック」は、コーチングにおいて最も重要な要素の一つです。

人からフィードバックを得ることで、私たちは自分の限られた感覚や視点を越えて、自分自身に関する多面的な情報を得ることができます。

組織の中でどんな役割を担い、どんな立ち位置にいるのか?
周囲にどのような印象を与え、影響を及ぼしているか?

こうした関係者へのインタビュー結果や数値的なデータなどの情報を元に、戦略の軌道修正をしたり行動を促進したりすることで、より早く正確に目標に近づくことができます。

フィードバックを活かすために必要な視点とは?

360度評価などをマネジメントの場面で活かし、社員の成長や学習につなげる施策は多くの企業や組織でも取り入れています。そのため、「フィードバックを効果的に与える方法」を学ぶ機会は、比較的多くあるのではないでしょうか?

一方で、「フィードバックを効果的に受け止める力」についてはどうでしょうか?

人や組織の成長に、フィードバックが欠かせないことを頭では理解しながらも、それを受ける時には、大なり小なり、心理的負担がかかるものでしょう。

例えば、上司から、日々の活動状況や、データや数字の情報、外観的に見えることなどを、客観的事実として伝えられたとします。

「今月の訪問件数は、目標20件に対して10件でしたね」
「今日のプレゼンは、相手を見ることなく資料ばかり見ていましたね」
「この報告資料は、データに基づいて分析されているね」

ポジティブであれ、ネガティブであれ、どのようなものも「自分自身に関係する情報」だと受け止めれば、その後の学習や成長につながるものなのに、そのフィードバックが効果を発揮しないことがあります。

エグゼクティブコーチとしてリーダーの能力開発を支援し、スタンフォード大学経営大学院の講師も務めるエド・バティスタは、「人の成長に欠かせないフィードバックは、効果的に提供するスキルだけでなく、受け止めるスキルも大事だ」と述べています。(※1)

つまり、フィードバックを受け取る側が、「受け止める力」を身につけることができれば、価値あるフィードバックは単なる「情報」や「データ」で終わらずに、さらなる学びや成長の糧となる、ということでしょう。

では、フィードバックを「受け止める力」を高めるには、どうすれば良いのでしょうか?

フィードバックを「受け止める力」とは?

フィードバックを上手に受け止めることができるかどうかは、フィードバックを自分のものにしようとする意欲や欲求に深く関係することがわかっています。

『ハーバード あなたを成長させるフィードバックの授業』には、スタンフォード大学心理学部のキャロル・ドウェック教授が行った「子どもは失敗にどう対処するか」に関する調査が紹介されています。(※1)

調査では、子どもたちを研究室に連れてきて、難易度を上げながら、ひたすらパズルを解かせました。

すると、難易度が上がるにつれてイライラし、集中力を失って諦めてしまった子どもと、難易度が上がるほど夢中になる子どもに分かれたそうです。

ドウェックはその後、子どもたちと話し、彼らが物事を理解する過程を探りました。

その中でわかったことは、途中であきらめた子どもは、「最初は、挑戦すれば自分の賢さを証明できた。難しいパズルは、挑戦すると自分がバカに見える(思える)」と考え、「パズルを解く能力が足りない。自分の能力の限界だ」と受け止めたということです。

一方、あきらめなかった子どもは、「難しいパズルに挑戦していけばパズルを解く腕がどんどん上がる。これは楽しいぞ!」と考えていた。

つまり、「パズルが解けない」という共通の事実(=フィードバック)を「能力の限界」と捉えるか、「成長の機会」と捉えるかの違いだった、というのです。

この実験からは、フィードバックに関係する大事な真実を一つ導き出すことができるのではないでしょうか。

それは、フィードバックを受け止める力が、自分の能力や欲求のとらえ方と関係するのであれば、自分を「完成された最終形」(自分の能力は決まっている)と捉えるか、進化や成長の余地がまだまだある(自分の能力は決まっていない)とするかによって、差が出てくるということです。

つまり、「自分は変わらない」という固定観念を捨てて、「絶えず成長できる」という意識を持つことが最初の一歩と言えます。

人は、「学んで向上したい」という気持ちと、「今のままでいい」という気持ちの間で葛藤するものです。

でも、私たちが成長するためには、安心できる領域から外へ出なくてはならないと思います。

その過程で欠かせないのがフィードバックなのです。

もし、あなた自身が難しいパズルを解いた子どものように、学んで向上するスイッチを入れるのであれば、あなたのすぐそばにあるフィードバックを受け止めてみてはどうでしょうか?

この記事はあなたにとって役に立ちましたか?
ぜひ読んだ感想を教えてください。

投票結果をみる

この記事を周りの方へシェアしませんか?


【参考資料】
※1 ダグラス・ストーン、シーラ・ヒーン(著) / 花塚 恵(翻訳)、『ハーバード あなたを成長させるフィードバックの授業』、東洋経済新報社、2016年
※2 エド・バティスタ、「フィードバックにつきまとう『5つの脅威』を和らげる方法」、ハーバード・ビジネス・レビュー、2014年12月4日

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

フィードバック 意識変革/行動変革

コーチング・プログラム説明会 詳細・お申し込みはこちら
メールマガジン

関連記事