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なぜ「お客様の話」は聞けるのに「部下の話」は聞けないのか?

なぜ「お客様の話」は聞けるのに「部下の話」は聞けないのか?

ある金融会社の営業部長から、相談を受けたことがあります。

コーチングを学んでいるが、なかなか板につかない。
なぜ、自分がやってきたような営業を部下はできないのか。
どうしてもイラつきが顔に出てしまう。
パフォーマンスが上がらない部下をどうしても頭ごなしに怒ってしまう。
結果、部下は萎縮するばかりで、決して成績はよくならない。
どうしたらいいか、と。

優秀な元営業マンがつぶやく一言とは?

この部長さんだけでなく、営業で部長レベルの役職に就いている人は、大抵の場合、一営業マンとして活躍した経験をおもちです。営業マンとして優秀であったからこそ、昇進した。

「カタログ営業」で、商品を見せてゴリ押しすれば売れるような時代ではありません。何を売るにも、まずは顧客の話をしっかり聞き、質問を投げかけ、ニーズを掴まなければ、売ることはできません。

ということは、「営業部長」には、コーチングのベースとなる、聞く力や質問力は、すでに備わっているということになります。

ところが、顧客にはできることが、部下が相手となると全くできなくなる。

なぜでしょうか?

冒頭の部長に、お聞きしました。

「お客様に対してされてきたことをそのまま部下に応用するのは難しいのですか?」

部長は、言いました。

「部下には、なんか、やりにくいんですよね。」

この「やりにくい」というのは、どういうことでしょうか?

「やりにくい」の正体とは?

人は、相手や場に合わせて、いわゆる自分の「キャラ」を無意識に設定しています。

対顧客用の「キャラ」
対上司用の「キャラ」
対部下用の「キャラ」
社内会議での「キャラ」
株主総会での「キャラ」

「キャラ」というと言葉は軽いかもしれませんが、誰もが、相手に応じて「キャラ」を使い分け、演じ分けている。

目の前の相手に対してどう振舞うべきか、都度、その対応を考えるのは大変です。ですから、通常は、相手に合わせた「キャラ」が自動設定され、対応もそれに応じて自動的にアウトプットされる。

実際の日常では、「さあ"キャラ"を設定するぞ!」と意識的・意図的にスイッチを入れるのではなく、目の前に人が来れば、「その人に合わせた"キャラ"」のスイッチが自動的に入る。

問題は、一度、何らかの「キャラ」のスイッチが入ってしまうと、以降「その人に合わせたキャラ」に適さない行動は選択されにくいということです。

部下に対して、「強く振舞う上司」という「キャラ」のスイッチがオンになると、その「キャラ」が「相手の話をじっくり聞く」という行動を選択するのは難しくなります。逆に「話を聞く優しい上司」というキャラスイッチがオンになっていると、部下に「厳しいフィードバックをする」のは難しいでしょう。

行動を選ぶための一歩は何か?

先日、エグゼグティブ・コーチングのクライアントである不動産会社の社長が議長を務める経営会議のオブザーブに伺いました。

「対話し合う文化」を創りたいということで、実際の会議を見せていただきました。

彼は、私を含め、外部の人にはとても丁寧な口調で話し、しっかり言葉に耳を傾ける方です。ところが、部下を前にした彼は、私が知る「キャラ」とは全く違う「キャラ」なのです。

「あれはどうなったんだ?」
「どうしてこうなんだ?」
「他にやり方があるだろ」

会議の後、そのことを彼に伝えると、

「え!? 私、そんな風に話してましたか?」

「キャラ」を無意識に選択していると、自然にその「キャラ」に合った言葉が使われ、自分ではそのことに気づきさえしない。

コーチングは言葉を介して行われるものですから、コーチングをするためにはコーチングの言語を選んで使う必要があります。

しかし、「キャラ」がその言語選択の邪魔をする。

つまり、「意識的なキャラ設定」を初めにしておかないと、新しい言語選択は難しいということになります。

「キャラ設定」とは要するに、どういうリーダーとして自分は振舞うのか。コーチングという新しい技術を身につけて、それをこれまでの自分のマネジメントにブレンドさせる。それはどういうリーダー像なのか。

そこを固めないと、いくらスキルを身につけても、せっかく習得した技術は日常的に発動しないかもしれません。

これまでのキャラにただ影響され、そして、「なんかやりにくい」となる。

まずは、内側に目指すべきリーダー像を描く。
誰かと、とことん話して、リーダー像を描く。

そこからかもしれません。

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