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笑われないようにするか、たまには笑われるか?

笑われないようにするか、たまには笑われるか?
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「リーダー」と聞くと、一般には、自信に満ちた佇まいを想像する人が多いかもしれません。多くのビジネス書でも、リーダーは自信をもつべきだと語られます。

しかし米国のエグゼクティブ向け情報サイトのシニア・エディター、Frank Kalman氏はこう言います。

脆弱さ、弱さはリーダーシップスキルの一つである(Kalman 2017)

もちろん、自信はリーダーシップの中でも重要な要素です。Kalman氏は、「自信があるようにふるまうことも、リーダーには欠かせない」と語りつつ、次のように続けます。

弱さもリーダーシップスキル?

自分の弱さを表に出して、自分を「開く」ことは、自信があるように見せることと同じように価値が高く、それでいて、これを実現するのは、難しい。(Kalman, 2017)
リーダーも知らないこと、今後も知り得ない「問い」や「問題」がある(Kalman, 2017)
そのことを認めること、そして自分の部下達にも、その事実を「見せること」は重要だ。(Kalman, 2017)

しかし、多くの成功体験を積み重ねてきたリーダーにとって、「知らない」、「わからない」と公言するのは困難なことかもしれません。ましてや、部下に対して知識不足や経験不足を開示すれば、信頼を失うのではないかという不安から、二の足を踏むのは当然です。

しかし、弱みの開示は、新たな関係の可能性を創り出すきっかけになることも確かです。

なぜなら、「弱み」の開示は、自分が生身の人間であることを、相手に伝えるメッセージだからです。

部下があなたを「リーダー」という役割だけではなく、一人の人間として見ることで、そこに、共に仕事をするという「共創」の場の可能性が生まれるのです。「部下の目」に見えていることを「聞く」機会も増えるでしょう。

自己認識の高さは、業績に影響する

さらに、自分自身を正直にさらけ出すことは、フィードバックを受ける機会にもつながります。

フィードバックによって、他の人の目に映る自分を知ることは、自己認識を深める機会になります。

ホーガン社のCEO、Chamorro-Premuzic 氏は、自己認識とパフォーマンスの関係を、次のように指摘します。

「能力」の「不足」を「自分が認識していること」は、その人のパフォーマンスを向上させる上で、極めて重要な軸であるということが、示唆されている。(Chamorro-Premuzic, 2017)

コーンフェリー社が、自己認識と組織の関係性について、興味深い発見をしています。

「リーダーの自己認識」と「組織の業績」には直接的な関係がある 「自己認識」は「会社の純利益に表れる」(Cashman, 2014)
「収益性(ROR)」がより高い上場企業は、より高い自己認識を示している「社員」を採用している(Cashman, 2014)

360度フィードバックを実施すると、リーダー自身が自分を高く評価している一方で、周囲の評価はそれほど高いものではないという現象が見られることがあります。

「リーダーの自己評価」と「部下や周囲の人たちからの評価」のあいだに、「ずれ」が生じているわけです。

この「ずれ」は、自分には見えていない盲点を示すことから、「ブラインドスポット」と呼ばれます。ブラインドスポットが少なければ、自己認識が高く、多ければ自己認識が低いことを表します。

コーンフェリー社の調査では、次のようなことが明らかになっています。

「収益性(ROR)」がより高い上場企業は、より高い自己認識を示している「社員」を採用している

業績の悪い会社の社員は、 健全な「収益率(ROR)」の会社の社員よりも、79%の確率で、総合的な 「自己認識」 が 「低い」。

株価パフォーマンスは、30ヶ月以上(2010年7月から2013年1月まで)にわたって追跡された。 その間、「自己認識の高い社員」の割合が多い企業は、 一貫して、そのような社員の割合が低い会社よりも、高い業績を出し続けた。

「ブラインドスポット」が、より少ない人々は、パフォーマンスをその後もさらに向上させ、それだけではなく、満足感もより高い傾向があった。 (Cashman, 2014)

笑われることで病気を治す

だいぶ昔に、こんな話を聞いたことがあります。

ある国では、病んでしまった人を囲んで、村人が立ち、みんなでその人を笑い飛ばすという儀式があるそうです。

その目的は、病気の治療。

誰からも「笑われないように」、「バカにされないように」と振る舞ううちに、孤立してしまい、その結果、病んでしまう。

それをみんなで笑い飛ばすことで、「笑われてはいけない」、「バカにされてはいけない」というその人のエゴやプライドを開放するのです。すると病気が逃げていって元気になるという、シンプルな治療法であり、儀式です。

この話が本当かどうかは知りませんが、ある種の真実を含んでいるだろうと思います。

リーダーにはさまざまな能力が求められますが、思い切って、笑われることもそのひとつなのかもしれません。

仲間の一人であるために。

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【参考資料】
Cashman, K., 2014, Return On Self-Awareness: Research Validates The Bottom Line Of Leadership Development, Forbes.com LLC
Chamorro-Premuzic, T., 2017, How to Tell Leaders They’re Not as Great as They Think They Are, Harvard Business School Publishing
Kalman, F., 2017, Vulnerability Is a Leadership Skill, Not a Weakness, Chief Learning Officer – CLO Media  

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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