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「適切な質問探し」から始めよう

「適切な質問探し」から始めよう
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アインシュタインが言ったとされている、次の逸話をご存知の方も多いかもしれません。

「もし、あなたが死にそうな状況になって、助かる方法を考えるのに1時間あるとしたら、どんなことをしますか?」

そう問われたアインシュタインはこう答えた。

「最初の55分は、適切な質問を探すのに費やすだろう」

というものです。

では、「適切な質問」とはどういうものなのでしょうか?

次期CEOの最終候補者たちがしていた「質問」とは?

1万人の組織を率いるCEOのA氏。

彼は、自身の後継者選定に取り組んでいました。

複数名の候補者を選抜し、日常の経営行動の中で、彼らの発想の仕方、発言や行動を細かく観察し、さらに1対1の面談を定期的に繰り返しました。

1年後、最終候補としてさらに数名の人に絞りました。

最終選考に選ばれた人と、そうでない人の違いを尋ねると、簡潔明瞭な回答でした。

「問うていることの違いです」

Whyを追求する人、Whatを追求する人、Howを追求する人がいます。

その人がどこに重きを置いているのか。その違いは、接していると意外とはっきりわかります。

経営者としては、「Why」を追求し続けてほしい。

なぜ、自分たちはこの事業を選択し続けるのか?
なぜ、世の中に自分たちが必要なのか?
なぜ、そのような経営判断をするのか?

会社、事業、自分の判断基準に対して、前提から問い直し、目的や意義を探求し創造し続ける。

A氏は、そういう人物を求めているように感じました。そして、我々に後継人材に対するエグゼクティブ・コーチングを依頼しました。

リクエストは明快で、「Whyを問い続ける」こと。

暗黙に拠っている会社・事業・自分自身の前提は何か、それがどこから来るのか、本当にそれを選択するのか、徹底的に検証し、自分なりの目的・意味を創造してほしい、というものでした。

  1. 目的を明確にする(Clarifying purpose)
  2. 意味を明確に示す(Articulating meaning)
  3. ビジョンを創り、コミュニケートする(Creating and Communicating Vision)

これらは、リーダーに対するコーチングの典型的なニーズ(※)であると同時に、翻って、私たちリーダー自身が探求すべき視点かもしれません。

変革を続けるCEOを創った、若き日の「問い」とは?

業界3位の大規模組織を率いるCEO、B氏。

業界を揺るがす、幾多の果敢な挑戦を続けています。そして、B氏は、今後も変革を続けるでしょう。

何故ならば、B氏は自ら徹底的に「Why」を問い、変革を起こす目的・意味を創造してきたからです。

ある時、私はエグゼクティブ・コーチングの過程で、B氏を良く知る人物から、興味深いコメントをお聞きしました。

「Bさんは、課長だった時から、すでに社長のような人でしたよ。『業界を変えようじゃないか』と、周りにいつも言い続けていました」

課長になる前、B氏には、ある転機がありました。徹底的に「Why」を問う経験をしたのでした。

天下りで、競合他社のトップに就いたある社長が、若手のB氏を前にして言った言葉、

「この業界もしんどいよね。この業界に居ては、君も将来が大変だ」

悔しかったそうです。

それを先輩に愚痴のように語ると、一言、問われたそうです。

「君は、なぜ、この仕事を選ぶのか?」と。

B氏は、しばらく考え続けました。

そして、顧客が価値を認め、自分が誇りを持てる仕事を創ること、従事する人たちが誇りを持ち、その家族も誇りを持てる仕事にすること、そのために、業界自体の存在価値を高めること...。

「なぜ、この仕事を選ぶのか?」

この問いに対する、B氏なりの回答を出し、そして選択しました。

「あの社長がいた会社にはね、負けられないんだよ」

笑いながらそう話してくれたB氏、目線は、ずっと先まで向いているのでしょう。

B氏は、これからも想定外の経営の困難に直面し続けるでしょう。しかし、それを乗り越える力強い目的意識・動機、それを既に自らの中に持っています。

それは、「なぜ、この仕事を選ぶのか?」という、シンプルな「Why」を問う質問によって創られました。

一方、A氏は「Whyを問い続ける」こと、これを次世代リーダーたちの経営の指針として求めました。

「Why」を問う質問

それは、アインシュタインが語る「適切な質問」のひとつになり得るのかもしれません。

皆さんは、すでに自分を導く「適切な質問」をお持ちですか?

まずは「適切な質問」を探してみること。

そこに時間を割くことの投資価値は、決して小さくはなさそうです。

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※Allen Moore and Jan Rybeck, 2015, Coaching for the 21st century, Korn Ferry

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