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組織のエネルギー効率を下げているものは何か?
コピーしました コピーに失敗しました「エネルギー効率」という言葉があります。
投入したエネルギーに対して活用できたエネルギーが高ければ高いほど、「エネルギー効率」が高いということになります。火力発電を例にすると、投下した燃料の発熱量に対して、そこから電気として利用される部分が多ければ「エネルギー効率」が高い。逆に電気にならない部分(廃棄熱)が多いと、効率が低いということになります。
「エネルギー効率」の高い発電所もあれば、低い発電所もあるように、企業にも、「エネルギー効率」の高い組織と低い組織があります。
「エネルギー効率」の低い組織では何が起きているのか?
社員の思考や行動の大半が、会社の業績向上にむかい結果が出れば「エネルギー効率」は高いと言えるでしょうし、そうでなければ、「エネルギー効率」は低い。
クライアントの社長の方々に「御社のエネルギー効率は何パーセントぐらいですか?」と聞くと、謙遜もあるのでしょうが、割と低い数値、60%前後を上げる方が多くいらっしゃいます。
仮にそうだとすると、社員の思考と行動、つまりエネルギーは、どこに振り向けられているのでしょうか?
会議の効率化が叫ばれて久しいですが、会議での議論が活性化しないという話は今でも頻繁に耳にします。
ある大企業の経営企画の課長がおっしゃっていました。
「うちの会社には、会議の前の事前会議というのがあります。本番の会議がスムーズに流れるように」
それから1年ぐらいして、その方に再び会いました。
「鈴木さん、最近では、事前会議の事前会議までやるようになりまして...」
この大企業では、社員の思考と行動が、「会議で誰の顔も潰さない」ことに多く割かれていることがわかります。おそらく、会議の場だけではないのでしょう。会議は象徴的な場であって、ありとあらゆる所で、業績向上にむけて、ではなく、エネルギーが「浪費されている」ことが容易に想像できます。
要するに、エネルギー効率の悪い企業では、エネルギーは互いの「保身」に振り向けられているのです。
個人の保身、組織の保身
企業の経営者であり、著名な著述家でもあるマーガレット・へファーナンは著書で次のように述べています。(※)
「私たちは口論が絶対起きないようにするための習慣や、(話し方、身振り、動作などの)独特の癖を発達させる。心理学者はこれを『カバーリング(抑圧)』と呼ぶ」と。そして、このことにあまりに多くのエネルギーを注ぐために、人はアイディアを先に進めることもなく、そのまま行き詰まってしまうのだそうです。
時に繕い、時に小さな嘘をつく。報告を最小限にとどめたり、逆に膨大にしたり。あるいは、無用の議論を仕掛けたり、黙ったり。
みなさんの組織では、どのくらいの「保身」が「エネルギー効率」を落としているでしょうか?
もし、その「保身」がエグゼクティブの間で日常的に起こっているとしたら、会社のエネルギー効率は大きな打撃を受けることになります。
- エグゼクティブが、他のエグゼクティブに干渉しないと決め込む
- 部下に社長向けの報告資料を過剰に用意させる
- 自分の話のもっともらしさを演出するために、外部のエキスパートを使ってロジックを組み立ててもらう。
「エグゼクティブが保身に回っている場合ではない!」
口でこう言うのは簡単ですが、前出のマーガレット・へファーナンによると「欧米の企業のエグゼクティブの85%が、仕事で対立することを恐れ、問題提起しないことが大きな問題となっている」のだそうです。
エグゼクティブにとっても、いかに「保身」を「扱える」かは、大きなテーマなのです。
では、どうすればいいのか。
実は「これだ!」と提示できる明快な解はありません。誰にとっても、自分の身を賭して、会社の業績をいの一番に考えて物を言うことは簡単ではありません。
自分の身を守ることと、より大きな意味や目的のために動くことは、常に天秤の両側にあるものです。それは企業の中だけでなく、人間社会のありとあらゆる場面で立ち現れる葛藤です。
もし、できることがあるとすれば、「保身」の側に大きく天秤が傾いている時に、それを当たり前の状態として見逃すのではなく、「何が最も良い選択なのだろう?」と、自分に問いかけ続けることかもしれません。
加えて、誰かが「保身」にエネルギーを割いているのを見かけたら、それを攻撃するのではなく、「業績向上にむけた最善の選択は何でしょうか?」と、さりげなく聞いてみる。
アマゾンCEOのジェフ・ベソスは、母校プリンストン大学の卒業式のスピーチで、「才能」と「選択」の違いについて語っています。例えば、賢さは生まれ持った「才能」であるけれども、人に対する「やさしさ」は「選択」であると。そして、じつは、「選択」こそが「あなた」をつくると。
「保身」は、この社会で生きる私たちに備わっている「本能」であると言っても過言ではありません。一方、業績向上にむけて必要な行動を取るのは「選択」です。何を「選択」するかが、あなたのビジネスマンとしてのあり様をつくるでしょう。
組織の「エネルギー効率」の高まりは、結局一人ひとりの「選択」にかかっているのです。
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【参考資料】
Heffernan, M., 2015, Beyond Measure, TED Books, Margaret Heffernan
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