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マシュマロを食べずに人生を成功させるには

マシュマロを食べずに人生を成功させるには
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私たちは、毎日どのくらいの数の選択をしているのでしょうか?

人間は、1日に6万回思考しているそうです(※1)。ということは、私たちは、毎日おびただしい数のことについて考え、選択をしているということでしょう。

人生は選択の連続です。過去から今日まで、自分の選択によって描く物語を生きてきた結果、今の自分がいます。

これからの日々、私たちはどのような選択をするのか。その「選択の質」が、今後の人生の物語の内容を大きく左右していくのだといえるでしょう。

子どもたちが向き合った、目の前の誘惑

コロンビア大学ビジネススクールのシーナ・アイエンガー教授は、著書の中で、心理学者のウォルター・ミッシェル氏が行った実験「マシュマロテスト」について解説しています。(※2)

子どもがある部屋に入ると、男性が1人いて、マシュマロが1つ置いてあります。男性は、今マシュマロを食べてもよいが、自分が戻ってくるまで食べずに待っていたら、もう1つマシュマロをあげる、と言って、部屋を出ていきます。

子どもたちは1人ずつ順番に部屋に入り、この実験を行っていきます。

マシュマロを2つ食べられる方がよいので、子どもたちは、男性が戻るのを皆待っています。しかし最終的には、多くの子どもが、置いてあるマシュマロを食べてしまいます。もちろん、男性が戻ってくるのを待つ子どももいました。

つまり、子どもの選択は、目の前の誘惑に流される選択と、目的のために自制する選択の2種類に分かれたということです。

こうした人間の2種類の選択パターンは、「自動システム」と「熟慮システム」に分類されるようです。「自動システム」とは、感覚的に自動反応的にしていく選択です。もう一方の「熟慮システム」とは、将来を考慮し、論理や理性で対処していく選択です。

「あの時やめておけばよかった」
「やめようと思っていたのに、つい魔が差してやってしまった」
「目先の楽しそうな方に流されてしまって、やろうと思っていたことを結局やらなかった」

など、後で思い返すことが私たちにもあると思います。

「自動システム」には、自分の将来に有益ではないことだとしても、目の前の誘惑に流されてしまう危険性があります。そして、それが習慣になってしまうと、その後の人生にもマイナスの影響を及ぼす可能性があるでしょう。

実際に、マシュマロテスト後に実施された追跡調査では、自制できた子どもたちの方が、その後、成功している確率が高かったそうです。学力・学歴、健康、人間関係、社会的地位などの面で、よりよい人生を獲得していたのです。

マシュマロに惑わされるのはなぜか?

楽してやるべきことを先延ばしにしたり、とりあえず目先の楽しみを選んだりする。

このような目の前の誘惑に流されてしまっているとき、私たちは「今、自分は流されている」ということを認識できていない可能性があります。

それは、自分が本当に人生に何を望んでいるのかが不明確だからでしょう。

自分はこれからどこに向かおうとしているのか、あるいは、現在地点すらわからないままに生きる。そのような生き方をしていたら、目の前の誘惑に流され、それに甘んじてしまう危険性があります。

人生の目的・目標をどのくらい明確に描けているか。そして、必ずそれを実現すると、どのくらい強く決意しているか。

私たちがマシュマロに勝つか、負けるか、その違いは、まずそこに表れるのだといえるでしょう。

しかし、私たちは、日々おびただしい数の選択をしているので、長い人生の中では様々なマシュマロに出くわします。

朝は何時に起きるのか?
目覚まし時計が鳴ったら飛び起きるのか、それとも二度寝するのか?
起きてから家を出るまでに何をするのか?
どんな服を着るのか?
どの仕事に取り組むのか?
どの仕事から着手するのか?
誰とどんな話しをするのか?
誰とは話さないようにするのか?
仕事が終わった後は何をするか?
何を買うのか?
どこで買うのか?
何を食べるのか?
どこで食べるのか?
家に帰ったら何をするのか?
どんな本を読むのか?
どんなテレビ番組を観るのか?
何時に寝るのか?
次の日の朝何時に起きるのか?

このような日常の様々な選択において、目の前の誘惑に流されずに「選択の質」を高めることを、どのように維持していくことができるでしょうか。

マシュマロに惑わされないための習慣化

私がエグゼクティブ・コーチングをしているAさんは、マシュマロに惑わされずに、自らのビジョンを実現するための行動を選択するよう、ある工夫をしています。

まず、現在から将来のビジョンを実現するまでのプロセスを自分の物語として捉えるようにします。そして、自分が主人公としてその物語を生きていくために必要な「問い」を考えました。

Aさんは、この「問い」を手帳やスマートフォン、PCの画面に貼り付けて、常に自分の目に入るようにしています。そして、それは、日々の活動の節目節目において、「どのような選択をするか?」という自問自答の質を高めるために役立っているのです。

例えば、朝オフィスに着いて仕事に着手する前に、まず手帳を開き、その「問い」を見ます。

  • 自分はどのような主人公として、どのような物語を生きるのか?
  • その物語の主人公である自分は、今何を選択するのか?

そして、その「問い」をもとに、今日、自分が選択すべき行動を考えるための自問自答をします。

「ビジョンを実現するために、今年はどんな人物として、何を成し遂げるのか?」
「それを成し遂げる自分は、何をすることを選択し、何をしないことを選択するのか?」
「では、今日、どのようなことを行うことを選択する必要があるのか?」
「それは、具体的に誰に対して何をすることなのか?」

Aさんは、このような習慣を持つことで、マシュマロに負けて楽な方に流されることを回避するように努めています。

例えば、ビジョン実現のためにはとても重要で今絶対にやるべきことなのに、ある人物との関わりが面倒なために後回しにしていたり、結局やらずに終わってしまう、というようなことが起きないようにしているのです。

人生を成功させる選択

Aさんがつくった「問い」は、ビジョンを実現する物語を生きる主人公に「なりきるための問い」だともいえます。Aさんは、その「問い」を持つことで、マシュマロに惑わされずに、望ましい思考、行動パターンを選択し、体現していくための工夫をしたのです。

自らの「選択の質」を高めるために、どのような「問い」を持つのか。

それが、私たちが誘惑に流されずに、人生を成功させる選択をしていくために必要なことといえるのではないでしょうか。

あなたは、人生の目的・目標をどのくらい明確に描けていますか?
必ずそれを実現する、とどのくらい強く決意していますか?
マシュマロに惑わされない行動を選択していくために、どのような「問い」を持ちますか?

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【参考資料】
※1 マーシー・シャイモフ(著)/茂木健一郎(訳)、『「脳にいいこと」だけをやりなさい!』、三笠書房、2008年
※2 シーナ・アイエンガー(著)/櫻井祐子(訳)、『選択の科学』、文藝春秋、2010年

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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