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やりたいことを実現するために本当に必要な、2つのこと
コピーしました コピーに失敗しました「夢や理想を具体的に思い描く」というプロセスこそが、それを実現する近道だと信じている人は少なくないと思います。
昨春、バレエの発表会を1ヵ月後に控えた娘が、「発表会までに絶対2キロ痩せる」と突然、宣言しました。
今のままでも十分だと思っていたのですが、彼女にとってその2キロは重要らしく、本番で着る衣装に合わせて「絶対に痩せる!」と言うのです。
宣言から数週間、実際に彼女は炭水化物を抜いたり、運動したりとがんばっているようでした。でも、一向に痩せる気配がありません。
「こんなにがんばっているのに、なぜなのか?」と疑問に思っていたのですが、理由はすぐわかりました。彼女は夜、お腹がすくと、密かに冷蔵庫にある残り物に手を伸ばしていたのです。
減量の成否を分けたものは何か?
私たちには誰にでも、それぞれ成功したい姿や達成したい目標があるものです。
「マネージャーになりたい」
「新規顧客を開拓したい」
「売上目標を達成したい」
など、自分が描く理想の姿は、案外人に言いやすいものです。
その一方で、成功や目標に「障害」になりそうなことについては、多くの人が目をつぶってしまいがちです。
なぜなら、私たちはその障害を「見たくない」、「気づきたくない」からです。
ニューヨーク大学およびハンブルク大学の心理学者であるガブリエル・エッティンゲンは、人のモチベーションについて20年以上にわたって追求し、多くの実験や研究データを明かしています。(※)
例えば、減量プログラムに挑戦中の女性のうち、その半分にはスリムになって外出する姿など、成功後のポジティブな姿だけを想像してダイエットに挑戦してもらう。
一方で、残り半分の人たちには、ドーナツの誘惑と必死で闘う姿など、起こりうる障害も想像しながら挑戦してもらうという実験でした。
すると1年後、なんと障害を想像した女性グループが平均して11キロも多く減量に成功するという結果が出たのです。
人は、目標達成を夢見るとき、これを阻害する「障害」にはなかなか考えが及ばないものです。でも、実はこの障害を意識してこそ、目標達成をしやすくなる、とガブリエルは多くの実験結果から結論づけています。
では、理想の未来の実現に近づくには、何が必要なのでしょうか?
前述の著者は、「人を立ち上がらせ、前進させる最善の方法は、ポジティブに夢を見たすぐあとに、夢へと続く道に立ちはだかる現実と対決させること」だと述べています。
部下の夢を実現する方法
周囲に宣言している夢や理想を実現するときに、自分一人で起こりうる「困難」や「障害」に向き合うことは難しいものです。
そこで、上司は部下との日ごろの対話の中で、「なにをやりたいのか?」「将来はどうなりたいのか?」など、成功したい姿や達成したい目標を具体的に聞くだけでなく、「実現する上での障害」についても一緒に考えてみてはどうでしょうか。
「やりたいことを実現するために我慢していることはなんですか?」
「うまくいくために環境を変えなければいけないことがあるとすると何でしょうか?」
「障害があるとしたら、どんなことが想定できますか?」
人がモチベーションを維持しながらやりたいことを実現するには、「夢や理想を具体的に思い描く」とともに、そこに立ちはだかる障害をはっきりさせ、いま目の前にあることをコツコツとこなしていく。
この2つのことが大事なのです。
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【参考資料】
※ガブリエル・エッティンゲン(著)、太田直子(訳)、『成功するにはポジティブ思考を捨てなさい』、講談社、2015年
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