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大きな変革を成し遂げる、最初の小さな一歩

大きな変革を成し遂げる、最初の小さな一歩
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先日、ニューヨークの地下鉄を利用しました。

かつて、ここで年間1万件以上の重大犯罪が発生していたこと、そして、その重大犯罪発生率を、27か月で50%減少させた人物がいたことを、同僚が教えてくれました。

すぐに、その人物について調べました。

1990年、市交通警察部長に就任したウィリアム・ブラトンは、数々の大きな問題の解決を前に、すぐに手が付けられる「小さな一歩」からアプローチし、「われわれは殺人よりもタダ乗り防止に力を注ぐ」と宣言して地下鉄犯罪の減少にむけて取り組んだのだそうです。(※)

このアプローチは、犯罪学の世界でいうところの「ブロークン・ウィンドウズ理論」というもので、「街が小さな違反(割れ窓)を容認していると、それは実質的により重大な罪の誘因になる」という考え方だそうです。

「大きく変えるために、敢えて小さく始める」

今号では、そのことについて考えたいと思います。

「大胆な質問」でできなかったこと

コーチングを始めた頃、私は組織変革に取り組む経営幹部を前に、いかに相手の視点を変える大胆な質問ができるのか、いつもそれを気にしていました。

  • あなたの組織の成功とは何か?
  • 世界一の経営とは何か?
  • 3倍で業績達成するための鍵は何か?

相手の「そんなこと、考えたことなかったなあ」といった表情にちょっとした手ごたえを感じていました。

しかし、大胆な質問では、相手が考えるだけで終わること、行動が曖昧で変化が見えてこない、そんな懸念を感じ始めました。

そんな中、1人のクライアントのひと言が、私のやり方を再考させるきっかけをくれました。

「俺、毎日がぐちゃぐちゃなのよ。何か、簡単に続けられるものが欲しいな」

彼は、自身の性急さが組織を混乱させていることを自覚しつつも、何から手を付ければ良いか分からない状態でした。

そこで私たちは、まず「簡単に始められること」を探すことにしました。

  • どの程度なら、性急さを抑えられますか?
  • 具体的にどんな行動ならばできますか?
  • 1つだけに絞るとしたら何ですか?

とにかく具体的でシンプルなものを探し出していきました。

「3割程度までならスピードダウンできる。それ以上はだめだ」
「自分の話すスピードは、自分では分からない。食べるのと歩くこと、それなら分かりやすいし、調整できる」

何度かのやり取りの結果、最終的に出てきたのは、

「深呼吸して部屋を出て、ゆっくり歩く」

そんな、小さな行動でした。

こんなに小さなことで、本当に組織が変わるのか?

と、内心私は不安でした。しかし、彼は「これだ!」と自信に満ちていました。そして、これが、最終的にさまざまな状況を変えていったのです。

  • 社員へのイライラや怒鳴ることが減った
  • 社員から声を掛けられやすくなった
  • リスク情報や改善提案が入るようになった

「深呼吸して部屋を出て、ゆっくり歩く」を始めてから、このような変化が出てきたのです。

「小さな行動」が続く理由

先日、その方とお会いしました。聞くと、なんと8年間、この小さな習慣を続けているそうです。

2人で見つけ出した「深呼吸して部屋を出て、ゆっくり歩く」という、小さな習慣。

久しぶりに彼を目の前にしたとき、「もし、もう少し大きな行動だったなら、8年間も続かなかったかもしれない」と思いました。

もし、大きな行動にしていたら、彼と部下たちの「大脳」が、変わることを拒んだ可能性があります。というのも、人の脳には、「大きな変化」に対して警報装置を作動し、変化への抵抗を誘発させる仕組みが備わっているからです(※)。

彼と決めた行動プランは、彼や彼の部下の脳にとって、警報装置を作動させない程度の「小さいもの」だった、ということでしょう。

もうひとつ興味深い点がありました。

彼は当初、「疲れ果てていて、もう何もできない」という状態にありました。しかし、1つきっかけを見つけた後は、次々と大胆な行動を取り始めました。しかも、彼の部下たちも、以前よりもそれを受け入れたのです。

それはなぜか?

脳の警報装置は、実は、二歩目には寛大なようです。

南カリフォルニアのある地域での実験です。

Aグループに、「自宅の窓に"安全運転を!"と書いた小さなポスターを貼ってほしい」と頼んだところ、大半の家が承諾したそうです。(一歩目)

その2週間後、「自宅の前庭に広告板を設置してよいか?」と尋ねたところ、その76%が承諾したそうです。(二歩目)

一方で、ポスター貼りを要請されていなかったBグループは、83%が拒否していました。小さなポスターという「最初の小さな一歩」があることで、次の「より大きな行動」への抵抗が緩和されることを示した調査です。

彼が大胆になれた理由がここにありました。

さて、最後に、小さく変革を起こすアイディアを整理してみましょう。

  • 小さくて具体的な行動を探す
    「これなら簡単にできる!」というものにする
  • その際には、大きな質問で探さない
    「まずできる、小さな一歩は何だろう」程度で良い
  • 小さなご褒美を用意すれば続きやすい
    先のクライアントは秘書が褒めてくれることが、大きな後押しになったようでした。

まずは、小さく始めてみませんか?

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【参考資料】
Robert Maurer, “One Small Step Can Change Your Life”
The Kaizen Way

邦訳:「脳が教える 1つの習慣」

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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