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部下のやる気をそぐ「残念」な行動

部下のやる気をそぐ「残念」な行動
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上司と部下の関係性は、部下のパフォーマンスに大きな影響を与えています。もっと言うと、上司の行動そのものが、部下のパフォーマンスに影響を与えます。

先日、弊社のスタッフYさんから興味深いエピソードを聞きました。

Yさんの前職は大手電機メーカー。Yさんは若いころ、新規商品開発のプロジェクトに関わっていました。Yさんが手がけたインターネット事業に関する企画は時代を先取りしたもので、会社の未来を劇的に変える斬新なものでした。

若い世代を中心に作ったその企画が実現すれば、会社は長期的に発展できるだろうと、大きな希望を持って会社の上層部に提案しようとしていました。

ところが、上層部への提案前に企画内容を知ったYさんの上司が「なんだ、この企画は! こんな企画は、絶対にダメだ」と頭ごなしに否定しました。

何とか実現させようと食い下がったYさんに対してその上司は、最後「二度とこの話はするな!」と話を一方的に切ってしまったとのこと。Yさんをはじめ、企画に関わったメンバーは憤慨し、意気消沈してしまったのだそうです。

「上司と部下の関係における良好度」の調査、日本は何位?

次のデータは、世界15か国の「上司と部下の関係における良好度」を見たものです。(※1)

図1. 各国の「上司と部下の関係における良好度」
  -直属の上司との関係がどれくらい良好か?-

n=1,500(各国100人)
4段階評価(1.良好ではない~4.良好)

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部下が感じる上司との関係性の良好度は、残念ながら、日本は15か国中、最下位となっています。

次のグラフは、各国の「上司と部下の関係の良好度」と「会話の充足度」の関係を見たものです。(※1)

図2.各国の「上司と部下の関係の良好度」と「会話の充足度」の関係
ー会話の充足度:上司とのコミュニケーションが十分足りているかどうか?-

n=1,500(各国100人)
会話の充足度:4段階評価(1.全く足りていない~4.十分足りている)

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各国に比べて、日本は上司と部下の「会話の充足度」「関係の良好度」のどちらもが低いという結果です。

日本の企業で働く部下の多くは「上司との会話が不十分」で「上司との関係性は良くない」と感じているということになります。

「相手の反応は、自分のコミュニケーションの結果である」

「コーチング型マネジメント」の根底には、「アカウンタビリティ」という考え方があります。

「相手の反応は自分が作り出している」
「自分自身の行動を変えることで、相手の反応を変えることができる」

という立場に立ち、自分の行動を修正していくというものです。

部下のモチベーションを高めたいのだとしたら、上司である自分の、どの行動が部下のモチベーションを上げるのか、あるいは下げるのかを知り、そして、行動を選択していくのです。

次のグラフは 当メールマガジン「WEEKLY GLOBAL COACH」の読者を対象に「過去1年間で、あなたのモチベーションを下げたと思う上司の行動」について聞いたものです。(※2)

Q1.過去1年間を振り返り、上司の行動があなたのモチベーションを下げたと感じたことはありますか?当てはまると思うものを最大3つまでお選びください。

[拡大して見る]

このアンケート結果から、部下のモチベーションをもっとも下げる上司の行動は、「部下が提案したときの上司の対応」にあるということがわかります。

自由回答欄には、「計画や施策案を出しても、あまり見てもらえないまま上司の意見の施策、計画が通るので徒労感をおぼえる」といったコメントもありました。

ところが、このアンケートでの「あなたはその行動を変えてほしいと上司本人に伝えたことがありますか?」という問いの結果は、次のようなものでした。

Q2. Q1で回答した上司の行動について、あなたは「その行動を変えて欲しい」と上司本人に伝えたことがありますか?

[拡大して見る]

7割の人は、モチベーションを下げた上司の行動について、本人に伝えたことがない、と答えています。

つまり、上司は、自分のどの行動が部下のモチベーションを下げているのか、自分では気づけていない可能性がある、ということになります。

「自分の行動」を変える最初の一歩

冒頭のエピソードで紹介したYさんの上司は、何か理由があって提案を却下せざるを得なかったのかもしれません。

しかし、Yさんをはじめ若い世代のモチベーションを低下させたのは、「提案の採用の可否」だけではなかったのではないでしょうか。

その時の上司の対応や言い方、その結果にいたるまでの会話の充足度が足りなかったことも、影響したかもしれないのです。

もし、Yさんの上司が「二度とこの話はするな!」とコミュニケーションを断ち切ることなく、その後もYさんとの関係性を築いていくことができていれば、Yさんはじめ若い世代の反応やその後のモチベーションは、もっと違うものになっていたかもしれません。

7割の人が、上司に伝えないのだとすれば、上司は、自ら聞く必要があります。

  • 会話の頻度は適当か?
  • 会話の時間は適当か?
  • 上司と部下の話す割合は適当か?
  • 部下への感謝や承認は足りているか?
  • 改善してほしい上司の行動は何か?  

など。

会話の充足度を高め、良好な関係性を築き、そして部下のパフォーマンスを高めるために、自分の関わりや行動について部下はどのように感じているのかを聞く。

そして、上司自らが行動を変えていく必要があるのだと思います。

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【参考資料】
※1 株式会社コーチ・エィ コーチング研究所調査
「組織とリーダーに関するグローバル価値観調査2015」(2015年)

※2 株式会社コーチ・エィ コーチング研究所調査
読者アンケート調査(No.17)「上司の行動と部下のモチベーションについてのアンケート調査」
調査対象:コーチ・エィ発行メールマガジン「WEEKLY GLOBAL COACH」の読者
実施期間:2017年9月6日~9月26日

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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