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あなたの「話題占有率」が及ぼす、周囲への影響

あなたの「話題占有率」が及ぼす、周囲への影響
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クライアントのA氏が社長に就任した時のことです。

就任後の最初のセッションで、社長としての抱負を聞きました。

「会社は人材がすべて!」
「人材育成を最重要テーマに掲げて経営を進めていきたい!」

力強い口調と覚悟に満ちた目を見て、

「ああ、彼は本気だな」

私はそう思いました。

実際、A社長は矢継ぎ早に手を打ちました。

就任挨拶での育成方針の発表を皮切りに、人事部に包括的な育成の仕組みの構築を指示し、自己研鑽にむけた教育予算の付与、次世代幹部リーダーの選抜制度のスタート等々。

社長就任から半年が経過したとき、A社長は最初の大々的な組織調査を実施しました。

半年間の取り組みの成果と新たな課題を知るためです。

しかし、レポートを見た社長の表情はみるみる曇っていきました。

「こんなはずはない」

組織の優先順位は、何で決まるのか?

「こんなはずはない」

そういう言葉が出たのは、経営の柱の一つである「育成」の項目が、他の項目と比べて低めのスコアを示していたからです。

その後、A社長はただちに自由回答に目を走らせました。

するとそこには、この半年の成果の数々が書かれていました。その多くは、以下の3つの内容に集約されていました。

  • 目標に対する意識やコミットが上がった
  • 無駄なコストを削減するなど最終利益を意識するようになった
  • 残業時間が減った

これらの項目は、私とのセッションではあまり話題になっていなかったため、私も少し意外な気がしていました。

紙面を何度もめくりながら読み耽るA社長に、私は言いました。

「社員のみなさんは、さまざまな成果を実感されているようですね」

さらに、

「でも、私とのセッションではあまり話題に挙がっていない内容が、前面に表れてくるのはどうしてですかね?」

そう尋ねると、しばしの沈黙の後、「あっ」と何かに思い至ったかのように顔を上げました。そして、

「自由回答に書かれていることは、私が役員のメンバーと日常的に一番話題になっているものばかりです」

そう答えました。

社長は続けます。

「半年間を振り返ると、要所要所で育成方針を打ち出し、指示も出してきました」

「しかし、役員会やもっとも接点の多い役員との日常的なやり取りで話すのは、まさにこの3つのトピックスがほとんどだったと思います。」

「瞬間的発信」以上に重要な「継続的対話」

ここで「話題占有率」という考え方をご紹介したいと思います。 

これは私の造語ですが、文字通り、その話題が全体の何%を占めているかを考える時に使っています。

「人は、自分の中で最も優先順位の高いことを自然と話題にする」という原則があります。そして、あることを話題にすればするほど、必然と周囲の人々もそのことについて一緒に考えます。

結果的に、周囲の優先順位にも影響を及ぼす、ということになります。また、優先順位が上がると、達成確率にも少なからず影響がでてきます。

ですから、たくさん話をすればするほど、それを達成するためのアイディアもたくさん生まれやすくなり、達成確率も上がりやすくなります。

つまり、組織のトップが方針や指示をどんなにエネルギー高く打ち出したとしても、「継続的な対話」がなければ、それについて考える機会そのものが生まれません。すると、達成能力云々とは無関係に、達成に向けての前進は期待できない、ということになります。

では、A社長が「育成」の優先順位を挙げて組織に浸透を図っていくには、一体どうしたらいいのでしょうか

「トピックス・マネジメント」のススメ

わたしはまず、A社長に1週間で彼が話している「トピックス」を円グラフで表してもらいました。

その結果、育成については、およそ5%の占有率でした。

「本当に育成を経営の中心に据えるとしたら、どのくらい話題にしている必要がありそうですか?」

この質問に、彼は「半分、50%」と回答しました。

そして、3つのことを自ら決めました。

  1. 役員会のアジェンダの半分を育成関係のものにする
  2. 育成についてのみ話す「人材育成会議」を新設する
  3. 個別の役員とのミーティングでは、毎回、必ず育成について話題にする

効果は、半年後に行われた2回目の組織調査で表れました。

定量面での上昇幅はもっとも大きかったのが「育成項目」でした。

自由回答にも、育成に関するコメントが増えました。

手応えを感じたA社長の目下のテーマは、多彩な質問力のアップです。

「育成」を話題にする時間が増えた分、いかに新しい視点でみんなで考えることができるか。私とのコーチングでは今、これに取り組まれています。

みなさんにも、「本当にやりたいこと」があるのに、気が付くと後回しにしてしまっていた。そんなことがあるのではないでしょうか。

場合によっては、改めて自分が一番やりたいことを意図的に、戦略的に話題として選んで話す、「トピックス・マネジメント」という視点も何かのヒントになるかもしれません。

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