Coach's VIEW

Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。


第三のコーチング

第三のコーチング
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企業におけるコーチングの活用は、

  1. 「コーチングを受ける」
  2. 「コーチングを学び、コーチをする」

このいずれか、あるいはこの2つの組合せで行われています。

エグゼクティブ・コーチングは、1の外部のコーチに「コーチングを受ける」にあたりますが、多くのグローバル企業が当然のごとく導入するようになり、その効果についても数々のデータが示されるようになりました。

一方、研修などでコーチングを学ぶ機会が一般的になり、2のケースも増えています。20年前に、全世界における国際コーチング連盟認定コーチ養成プログラム数が3だったものが、現在は284にもなったことを見ても、コーチングを学ぶ機会が世界的にも広がっていることがわかります。

企業の中で上司がコーチングスキルを学び、部下をコーチするという「コーチングマネジメント」の成果も様々な事例が示されています。

1と2のコーチングの共通点は、質問する「コーチ」と質問に答える「クライアント」という明確な役割の下で行われることです。

コーチ・エィでは、そのコーチングをさらに進化させた「3分間コーチ」という取り組みを始めています。

「進化型」のコーチングとは?

「3分間コーチ」とは、組織の業績向上や、生産性向上を目的として行われ、「問いの共有」と「対話」を中心に据えた進化型のコーチングということができます。

そのポイントは、

1. 探索的であること

「質問されたら、正しい答えを言わなければならない」

これは、私たちが根強く持っている不文律ともいえる固定概念です。

上司から質問されたら、正確に答える。
もっとも的確な方法を答える。
間違ってはならない、等。

「質問されたらちゃんと答えなければならない」

これは私たちがいつも気にしていることだと言えるでしょう。コーチングの場面でもしばしばみられる現象です。

もちろん、それはそれで大切なことではあるのですが、現在のビジネスでは、何が正解なのかわからないこともよくあることですし、上司が正解をもっているとは限りません。

時には、答えを探索する必要があるのです。

「探索」とは正解から離れ、自由に話すこと。

「正解」を答えようとするのではなく、自由に探してみるような「対話」が新しい何かをもたらすかもしれないのです。

2. 「対話」する

「対話」とは、「問い」を共有し、その問いに対して応えることです。

各々が自分自身のこれまでの「経験」「解釈」「価値観」の違いをすり合わせ、そこに新しい「意味」「理解」「知識」「行動」を創りだすプロセス、だと言えます。

「問い」に対して、お互いが対等に、そして自由に話す。

どちらが正しいか、正解かを判断したり、説き伏せたりするわけではなく、自由に探索することで、新しい何かを作り出す。

そこには、「問う人」「答える人」という固定化された関係ではなく、お互いが「問う人」であり、「答える人」であるという「対話する関係」を創る必要があります。

3.「問いを共有する」

企業が業績や生産性を向上させるためには、「共有すべき問い」があります。

たとえば、

「業績向上のために今できる最高の行動は何か?」

この問いは、部下が答えることはもちろん、上司も、社長も答えるべき質問だと言えます。このように組織の生産性や業績をあげるために、組織の誰もが探索し、考え続ける必要がある問いを共有するのです。

4.「対話」を起こすために、「対話」を体験する

かつて盛んに行われた従来型の「コーチングスキル研修」は、予算や期間の制約から、多くは1日~2日の研修として行われました。

手法としては、コーチングを「質問」「聞く」等のスキルに分解し、そのスキルを参加者にインストールする。そして、コーチングの実行は本人にゆだねる、という方法が主にとられていました。

しかし、スキルに主眼が置かれ、「対話」の体験が不十分なまま、日常に放り出されてしまうために、コーチングの実行は参加者の能力やコミットメントに大きく左右されることになり、その効果が疑問視されることも少なからずあったように思います。

コーチングスキル研修を水泳教室に例えれば、泳ぎ方を「手はこうして水をかく」「足はこうして蹴る」「息継ぎはこのようにする」と分解して説明し、あとは自分で泳いでください、とプールの中に放り出されてしまうようなものなのです。

組織の中で自らが起点となって「対話」を創り出すためには、「対話」そのものを十分に体験している必要があります。

すいすいと泳ぐには十分なトレーニングが必要なことは言うまでもありません。

しかし、もし、一瞬でも「泳げた」という体験があれば、理由はわからなくても、それを再現できる可能性が高いのと似ていると言えるでしょう。

「3分間コーチ」を導入し成功させるためには、組織全体がコーチングによる「対話」を十分に体験していることが大切です。それによって、日常における対話の再現性を高めることができるのです。

* * *

3分間コーチは、現在行われている「問う人」「答える人」というベーシックなコーチングを否定するものではありません。

現在主流となっている「エグゼクティブ(1on1)コーチング」「コーチングマネジメント」と合わせて、「3分間コーチ」を実行することで、組織全体を「対話型」にすることができれば、コーチングの効果は何倍にもなるに違いありません。

コーチングは、この20年間で大きく進化しました。

この新たな「3分間コーチ」という取り組みは、今後のコーチングをさらに大きく進化させていく可能性を秘めたものだと感じています。

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