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関係性を開発する

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先日、ある営業組織のマネジャーにインタビューをする機会がありました。

組織で課題になっていることを聞いてみると、かなり「恫喝」的なマネジメントが行われており、それが風土となってしまっている、と。

「会社へのロイヤリティーが低い、離職率が高い、といったことが起きている」
「最近は特に、営業数字を上げたいがために、詳細な説明をしないまま高額な商品を売りつけて大問題になるなど、顧客とのトラブルも多くなっている」
「面談では、部下から『数字だけで評価される』『大切にされていない』『使い捨て』という言葉が端々に出る」

など、色々出てきます。

そして、
「恫喝的なマネジメントによって『人として扱われていない』という『自己疎外』を起こさせてしまっているのではないか」と言うのです。

これは極端な例かもしれませんが、どのような組織でも、多少なりとも似たようなことは起こっているのだと思います。

「個」は、他の「個」に影響を与えている

日本でコーチングが始まってから約20年が経ちました。この間、マネジメントにおけるコーチングは大きな進化を遂げています。

コーチングの基本が「1対1」に置かれていることには変わりはありませんが、現在は「個」の開発にだけ焦点を当てるのではなく、「個」を取り巻く「組織全体」を捉えて変革し、業績や生産性の向上を実現させる「システミック・コーチング」に取り組む組織も増えています。

「個」は、他の「個」に影響を与えています。

たとえば、朝のミーティングで部長から叱責を受けた課長は、自分の課にもどって、部下につらく当たってしまうかもしれません。

そして、課長につらくあたられた部下は、無意識のうちにお客さんをぞんざいに扱ってしまうのかも知れないのです。

高額の受注に成功した営業担当者は、会社に戻ってきてチームメンバーの気持ちを明るくし、そのメンバーの一人は、その日はいつも以上にパフォーマンスを上げるかも知れないのです。

「1対1」の面談は、何のために行われているのか?

マネジメントの現場では、1on1の関わりを重要と考えて、「1対1」の面談を増やす傾向があるように思います。

実際、コーチング研究所が行ったアンケート調査によると、「1対1」の面談頻度は、会社で定められた頻度よりも高く行われていることがわかります。(※1)

制度より多い:51.7%
制度と同等:42.4%
制度より少ない:5.8%

次に、面談で扱われている目的を見てみると、「部下のため」に面談が行われていることがわかります。(※1)

  1. 部下の考えを知るため:52.8%
  2. 部下の目標設定のため:45.1%
  3. 業務の進捗確認のため:43.5%
  4. 人事考課を伝えるため:39.4%
  5. 部下の提案やリクエストを聞くため:37.8%
  6. 会社や組織の決定事項を伝えるため:20.7%
  7. その他:3.6%

おそらく、この時間で扱われているテーマは、部下に関する「個」についてのものが多いのではないでしょうか。

しかし、前述の例のように、「個」が他の「個」に影響を与えていると考えれば、組織の業績や生産性を高めるためには、「個」だけを扱うのではなく、「個」と「個」の関係性に目を向ける必要があります。

上司の「敬意を欠いた行動」が生む「代償」とは?

ハーバードビジネスレビューの記事によると、17の業界の800名の上司と部下を対象にした調査で、上司から「敬意を欠いた」行動を受けた部下が、どのような反応を起こすかが示されました。(※2)

  • 48%が、「意図的」に、仕事に対する努力を減らした。
  • 47%は、「意図的」に、仕事の時間を減らした。
  • 38%が、「意図的」に、自分の仕事の「質」を低下させた。
  • 66%が、自分のパフォーマンスは「低下した」と回答。
  • 78%は、組織に対する自分のコミットメントが「低下した」と回答。
  • 12%は、仕事を辞めた理由は、「心の無い」扱いを受けたからだ、と回答。
  • 25%は、フラストレーションを顧客にぶつけた(八つ当たりした)と回答。

一つの「敬意を欠いた行動」が、これだけネガティブな影響を及ぼしているのです。

その影響が、石を投げ込まれた池に波紋が広がっていくように、さらにその先の人間関係へと伝播していくのは、自明の理と言えるでしょう。

「個と個」がこのように影響していることを考えれば、組織の目標達成のために中心に据えられるべきものは、その関係性の開発であり、そのベースには、「敬意」を大切にしたコミュニケーションがあるのだと思うのです。

恫喝的な関わり方ではなく、相手を人として尊重し、「敬意」を大切にすること。

「個」を、組織を構成するパーツとして扱うのではなく、一人の人間としての尊厳を大切に扱うこと。

システミック・コーチングとは、人を「自己疎外」から解放し、その人本来の可能性を発揮させるアプローチなのです。

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※1 株式会社コーチ・エィ コーチング研究所調査
読者アンケート調査(No.21)「部下との面談についてのアンケート調査」
調査対象:コーチ・エィ発行メールマガジン「WEEKLY GLOBAL COACH」の読者
実施期間:2018年7月25日~8月21日
有効回答数:172件
※2 Christine Porath and Christine Pearson, The Price of Incivility, Harvard Business Review, January-Feburuary 2013 Issue

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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