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批判を許す

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「生命体」におけるフィードバックは、恒常性を維持し、成長するための機能として働いています。

たとえば、私たち「ヒト」を例にすると、体温が上がれば、身体はそれを察知し平熱に戻そうとします。歩いていて何かに躓けば、身体の様々な部位が反応して転ばないように動きます。

もし、フィードバックが無ければ、私たちは生きていくことができません。

同じように、組織という「生命体」も、フィードバックによって維持、成長しているということができます。

顧客からのフィードバックによって商品が改善される、新しい商品が生まれる。
社員間のフィードバックによって個人が成長し、組織としてはチームワークが向上する。

フィードバックが無ければ、個人も組織も、その成長は鈍化してしまいます。

フィードバックが無ければ、未来は暗いのです。

なぜ、フィードバックは負荷がかかるのか?

フィードバックは、組織の目標達成や、自分自身の成長に必要不可欠である。

このことに異を唱える人はいないと思います。ところが、実際にフィードバックを効果的に使えている人は少ないのではないでしょうか。

「社員の87%が仕事での成長を望んでいるが、改善のためにフィードバックを受けている人は3割以下」

「フィードバック」というコミュニケーションは、「する人」にも「される人」にも、なんらかの負荷を感じさせているのです。

それはなぜでしようか?

フィードバックは「目標に対する軌道修正」という機能を持っています。

「修正」の意味を辞書で引くと、「違いや不十分と思われる箇所を改め直すこと」とあります。

つまり、フィードバックを「される側」にとってみれば、そこには少なからず、「現状に対する、批判、攻撃、否定、ネガティブ」というようなニュアンスを受け取ることになります。

業務内容や進め方などについてのフィードバックであれば、比較的受け取れるかもしれません。

しかし、「自分自身の成長」や「周囲への影響」といった自分自身の「考え方」や「スタンス」「あり方」などに関わるフィードバックは、誰しも少なからず抵抗を感じるものです。

「コーチングにおけるフィードバックは、批判や否定、評価ではない」と、いくら説明したとしても、このニュアンスを消し去ることは難しいことのように思います。

もし突然上司に呼ばれて、部下に対するスタンスや周囲に与えている影響について軌道修正が求められたら、誰でも戸惑うに違いありません。

フィードバックによって、自分そのものを「批判された」「否定された」「ダメ出しされた」と受け取ったとしても、無理のないことのように思います。

そして、フィードバックをする側も、相手の反応を推測できるあまり、フィードバックすることを躊躇してしまうのです。

「上司たる者、その躊躇を超えてフィードバックするべきだ。きついフィードバックを受けることで部下は育つ」

そういう考え方を否定するわけではありませんが、現実的には、フィードバックを効果的にやりとりする工夫があってもいいように思います。

自己評価と他者評価が乖離していた、あるマネージャーの話

コーチングを学んでいる、ある企業の部長さんから聞いたエピソードです。

「私のリーダーシップについて部下がどう思っているのか知りたくなったので、アセスメントを配ってコメントをしてもらいました。

部下からの評価を集計したものと、私の自己評価の結果を並べて、それを全員で見ながら話し合いました。

みんなからのフィードバックが自分の役に立ったのはもちろんですが、一番の成果は、ある部下、Aさんが『自分も同じことをやりたい』と申し出てきたことです。

Aさんはマネージャーなのですが、元々自己評価と部下からの評判の乖離が大きく、度々、周囲から不満の声があがっていました。ですが、そのことをフィードバックしたら本人が感情的になりそうで、私自身、どうしたものかと困っていました。

今回、Aさん本人の希望だったので、予定どおり私と同じプロセスでフィードバックを実施しました。

案の定、周囲からはとてもネガティブな評価やコメントが多く、結果をそのまま見せたり伝えたりしたら、大反発するのではないかと心配になりました。どう扱うか考えた末、Aさん自身が望んだことなのだから、ありのままの結果を見せようと決断し、他者評価と自己評価のギャップの大きい点についてどのように考えるか、問いかけることにしたのです。

結果を見た時のAさんの反応は、私が危惧したものとは全く違っていました。

激するようなことは全く無く、とても冷静にその結果を見ながら、現状について、そして、今後について話し始めたのです」

フィードバックに対する、新しい考え方

フィードバックは、「されるもの」ではなく「自らが求めるもの」。

これは、フィードバックを効果的なものにするためにとても大切なスタンスです。

そして、そこには、「自分に対して"批判的になる許可"を与える」という意味が含まれているのだと思うのです。

自分が批判されることを好む人はいないでしょう。誰もが、「人から批判されたくない」と思っているのです。

「フィードバックを求める」から、さらに進んで「あえて自分を批判させる」。

自分自身の成長のために、
自分自身が軌道を修正するために、
自分自身に対して「批判的」になる許可を与える。

批判することを「許す」

その考え方は、フィードバックにまつわる今までのネガティブな体験や感情を払拭する一つのきっかけになるかもしれません。

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【参考文献】
David Rock, Beth Jones, and Chris Weller,2018, Using Neuroscience to Make Feedback Work and Feel Better,strategy;business,PwC.

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