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「自由」に表現できる空気の創り方

「自由」に表現できる空気の創り方
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ファッションブランド「プラダ」の販売したキャラクター製品が、批判を受け、販売中止になるというニュースがありました。

デザイナーであるミウッチャ・プラダはこの件について、「『自分は誰かを傷つけていないだろうか』と考えるようになったのと同時に、何をしても傷つく人はいるから、どうやってこの問題を解決すればよいかわからない。問題を起こさないよう、発言することをやめようという気にさえなる。しかしこれは自由の欠如にもつながることで、正しいことしか発信できなければ自由が失われてしまう」と言っています。(※1)

技術の発展により、誰もがいつでも発信し、表現できる時代になりました。

一方で、「炎上」という言葉が日常的に使われるように、「発言するとたたかれるのではないか」という「空気」も蔓延しているようにも感じます。

いま「自由に表現する」ことが、とても不自由な社会になってきているのかもしれません。

では、「自由に表現する」ことには、どのような価値があるのでしょうか?

「自由な表現」の価値とは?

そもそも、人が考えていることは、千差万別のはずです。

私たちは、互いに「表現し合う」ことで、初めて他者との違いに気づくことができます。

そして、お互いが異なる考えを自由に表現することで、その考えが組み合わさり、全く新しい考えが生まれることが期待できます。

また、人間は、自分の内側にある情報、つまり自分が何を思っているかは、いったん外に出すことで初めて認識できると言われています。この作用を生物学における細胞間の作用になぞらえて「オートクライン」といいます。

この際に起きるのが、いわゆる「気づき」と呼ばれるもので、その「気づき」によって、人は主体的に行動を始めるのです。

つまり、自分の組織の成長についてメンバーたちが、自ら自由に表現し始めたら、

組織のいたるところで、会社を成長させるための新しい考えが生まれ、主体的な行動が生まれるわけです。

いつでもどこでも、会社の成長に向けて、自由に表現できる組織というのは、まさに理想の姿でしょう。

では、どのようにして、自由に表現できる組織を創ることができるのでしょうか?

「自由に表現できる組織」の創り方

私のクライアントA氏から聞いた話です。

北米やオーストラリアには、「Show and Tell」という、主に低学年の子ども向けの教育科目があるそうです。

これは、一人の子が、クラスのみんなの前で、自分の好きな物について話すという定番のアクティビティです。子供の表現する力、プレゼンテーション能力を高める効果があります。

発表の時間に向けて、先生や親は準備のサポートをするそうです。そして、子供が話す際には、先生や他の子供たちがじっくり話を聞き、質問をしたり、承認をしたりして盛り上げるそうです。

子供たちは、とても生き生きと話すそうです。
恐らく、そこには、「何でも自由に表現しても大丈夫」という「空気」があるのでしょう。

この時間は、「ちゃんと聞いてもらった」「この時間が楽しかった」というポジティブな体験として残ります。そして、次回の「Show and Tell」の時間が、どんどん楽しみになっていくようです。

A氏は、この方法に倣い、四半期に一度、社内で「Show and Tell」を行いました。
会社を成長させるためのアイディアを自由に表現してほしい、と。

1回目、2回目は、思ったほど盛り上がらなかったそうです。
出てくるアイディアも、何かの本に書いてあるようなものばかり。

「恐らく、正解を言わなきゃいけないという空気があったんだと思う」と、A氏は言います。

そこでA氏は、その場を盛り上げるべく、3つのことに取り組みます。

一つは、事前に当日話す人の準備を手伝います。
その人が本当に表現したいことを準備できているかを聞くそうです。

二つ目は、発表者に対しての質問を工夫します。

発表内容についてではなく、「発表している人」について質問するそうです。

「あなたは、どうやってこのアイディアを思いついたのか?」
「準備をしながら、あなたにはどのような発見があったか?」
「今日発表してみて、あなたはどのようなことを思ったか?」

最後は、表現してくれたことへの感謝を必ず伝えるそうです。

「あなたの考えを聞かせてくれてありがとう。」と

この努力が実り、最近の会では、手書きの絵を描いてきた社員まで現れたそうです。

最後に、興味深い研究結果があります。

ハーバード大学社会的認知・情動神経科学研究所(Harvard University Social Cognitive and Affective Neuroscience Lab)の科学者たちは、人は自分自身について語るときには、生理学的に快感を得られることを発見しました。

その理由は、「その行為が脳の快楽や満足に関係する脳の神経領域を活性化させるからで、しかもこれは、話しているのを聞く相手がいなくても機能するメカニズム」なのだそうです。(※2)
脳科学的に、人が表現したい生き物であることは証明されています。

自由に表現できる「空気」に満ちた、「Show and Tell」のような「場」を創れば、人は、自由に表現することを始めるのではないでしょうか。

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※1 WWD JAPAN vol.2065

※2 「なぜわたしたちは自分のことを話すのが好きなのか?:研究結果」

『「超」入門 空気の研究』 (ダイヤモンド社)
鈴木 博毅

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