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組織開発に向けてのコーチング

組織開発に向けてのコーチング
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Language: English

まず簡単に、日本におけるコーチングの歴史を、私の主観で振り返らせてください。

2000年代、多くの企業がコーチングを「研修」として導入し始めました。

当時は失われた10年と言われ、その10年からの脱却を模索する中で、上司が持つべき新しいスキルとしてコーチングは企業で脚光を浴びます。

コーチング「研修」は、日本における初期のコーチングの導入の形でした。

次いで、2008年前後から、コーチング発祥の地であるアメリカから少し遅れて、本格的に経営者や管理職が自身のパフォーマンスの発揮のために、コーチングを1on1で受けるということが始まります。

「人材開発のためのコーチング」の幕開けでした。

そして、今、コーチングは単なる人材開発の手段としての存在を超え、「組織開発を実現するアプローチ」として新たな注目を浴びて来ています。

「組織開発に向けたコーチング」の価値について、私たちは様々な場面で発信しています。

では、そもそも組織開発とは何なのでしょうか。

Googleで生産性の高いチームにあるもの

仮に10人の人を集めて組織を作ったとします。

この10人それぞれがどんなに優秀であったとしても、各人の間に「つながり」がまるでなく切り離されて存在し、それぞれが与えられたタスクを、バラバラにこなしていたのでは、組織としての生産性は上がりません。

一人ひとりのアウトプット能力が「1」として、10人の総和は「10」以上にはならないであろうとことは、容易に想像できます。

一方、この10人の間に「つながり」が存在し、10人が互いにコラボレートし合うことができたらどうでしょう?

10人の総和は、「20」にも、「30」にもなる可能性があります。

昨年10月、シリコンバレーにあるGoogleの本社を訪ね、1時間半に渡ってどのような組織が高い生産性を上げるのかをディスカッションしました。

人事のシニアマネージャー曰く、

「Googleでは、これまで200以上のチームを生産性という観点から調べてきました。結果わかったのは、最も生産性が高いのは、ひとり、ふたりの天才がいるチームではなく、チームメンバーの間の『インタラクション』の数が最も多かったチームだったのです」と。

組織開発とは、何か?

組織開発とは、簡単に言えば、そこにいる人の間に、全体の生産性を高めることに紐づく「価値あるつながり」を創ることです。

「価値あるつながり」とは、互いの生産性を高める価値ある情報や刺激が行き交う、双方向による「つながり」です。

神経経路のようなものを想像していただけるといいかもしれません。太く、みずみずしく、ポジティブな情報と刺激が常に行き交う神経経路。それでメンバー同士がつながっている。

ところが、実際に「価値あるつながり」を創るとなると、それほど容易ではありません。多くの組織では、メンバー同士がこのような神経経路ではつながっていません。

そもそも「つながり」がなかったり、つながってはいても、一方通行にしか情報が流れていなかったり、双方向であったとしても、稀にしか情報の行き交いが起こっていなかったり...。

それは、組織の文化の影響であったり、トップに立ったばかりのリーダーの影響であったり、組織を取り巻く様々な環境の影響だったりします。

なぜコーチングは「組織開発」に機能するのか?

コーチングは「価値あるつながり」を創ることに2つの点で機能します。

ひとつは、他者とのつながりを創ることに向けた、主体的な行動を生み出すプラットフォームとして。

例えば、エグゼクティブ・コーチングは、経営者が周囲と効果的な双方向のつながりを生み出すことに寄与します。

ある、企業トップのコーチングをしていたときのことです。

ある時、彼の時間の使い方を調べてもらうと、なんと、彼の時間の60%が部門との定例ミーティングに費やされていることがわかりました。定例ミーティングは、部門側が膨大な資料を用意し、トップにレポートする場として先代のトップ時代から脈々と続いているものでした。

トップは、コーチングの中で、定例ミーティングの価値そのものについて検証することをしました。結果、全ての定例ミーティングを廃すること、代わりに、各CXOとの1on1ミーティングに時間を割くことを決断しました。

「何を用意したらいいでしょう?」と戸惑うCXOたちに、トップは、何も用意しなくていい。まずは1対1で話がしたい。未来に向けての課題、戦略、それをふたりで話したい、そう伝えました。

CXOたちがトップとの1on1に慣れ、ある程度双方向のやり取りができているとトップが感じるまでに、半年もの時間を要しました。

「コーチング」が作る関係とは?

もうひとつは、「コーチングをする」という関係をつくること自体が、「つながり」の創出になります。

上司が部下を、あるいは同僚同士で、あるいは、ある部門の人が別の部門の後輩といった斜めの関係で、30分という決まった時間を使ってコーチングをする。

「コーチングをする」ということは、片方の人がもう一方の人のビジョン実現や目標達成に向け、問いかけで支援するということ、つまり、徹底的に相手をうまくいかせようとするスタンスでコミュニケーションを交わす、ということです。

「価値ある双方向のつながり」とは、お互いがお互いをうまくいかせようとする関係のこと。その相互支援の関係は、おいそれと同時発生的に生まれるものではありません。

まずは、一方から他方への支援があり、それを契機に、もう一方も相手を支援するような行動を取るようになるわけです。

そして、徐々に「価値ある双方向のつながり」へと昇華していく。

「コーチをする/される」というセッションを、網の目のように組織に張り巡らせることは、組織の中に「価値ある双方向のつながり」を張り巡らせることに、間違いなくつながります。

また通常、コーチングは上司と部下の間で定期的に時間を取ってなされます。

上司部下の関係とは、「上司が話し、部下は聞く」というものではないでしょうか。

しかし、コーチングによって「上司が聞き、部下が話す」という時間を、ある程度「構造」として作ると、普段の関係において、「上司も話す、部下も話す」という関係に変わっていきます。

全員が相手の支援のために話し、相手の支援のために聞く。まさに、太く、みずみずしい神経回路ができていきます。

組織開発にむけたコーチングとは

MITのトーマス・マローン氏は、「集団知能」に関する研究をする中で、「創造的な問題解決」において並外れた効果を発揮しているチームを分析した結果として、以下のことを伝えています。

「高い知能の総和も、ひとりかふたりのスーパースターがいることも、重要なわけではなかった。より高く上に上がり、より有効なソリューションを出す集団には3つのポイントがあり、その1つは、『互いに、だいたい同じ時間しゃべらせていた』ことだ。高い目標達成を実現する集団は、誰ひとりとして、会話を独占する人も、傍観者もいなかった」

コーチングは、組織の中に「価値ある双方向のつながり」を生み出すことによって組織開発を支援していく強力な仕掛けであり、コミュニケーションのスタイルであり、哲学です。

みなさんの組織の「つながり」の現状は、どのようなものでしょうか?

どんな「つながり」を増やしていきたいですか?

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