Coach's VIEW

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「ベテラン社員」を組織開発に活かす

「ベテラン社員」を組織開発に活かす
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  • イノベーションが創出される組織風土を作りたい
  • 部門を越えて提案が飛び交う組織にしたい
  • 月曜日みんながワクワク出社してくる会社にしたい

経営者の方々がコーチング中にお話しされる「理想の組織像」の一例です。

そして、理想の組織づくりにむけたプロジェクトについて「いつ、誰から始めますか?」とお聞きすると話題になるのが、いわゆる「ベテラン社員」の存在です。

こうした場面で出てくる「ベテラン社員像」には、次のような傾向があります。

  • 職歴が長い
  • 会社や事業のあるべき姿について一家言ある
  • その人の経験・知識に、周囲が一目置いている
  • 新しいものに取り組むことには抵抗感がある
  • 社内外の環境変化に対応できていない

なぜ「ベテラン社員」が話題になるのか?

「組織作り」の議論が進むにしたがい、歴史ある企業や大企業で顕著なのが

  • 本当は、ベテラン社員こそ、組織作りに一番協力してほしい存在である
  • しかし、今からベテラン社員が「新しいこと」に挑むのは年齢的に大変かもしれない
  • 仕事が忙しく、そもそも組織開発に取り組む時間が捻出できないのではないか

など、経営者のみなさんがベテラン社員を巻き込みたいと思いながらも、何かしら躊躇や不安を感じている様子です。

「ベテラン社員」「シニア人材」「おっさん」といった切り口でメディアが取り上げる機会も増えています。

私は、組織開発のプロジェクトに「ベテラン社員」の参画は不可欠だと思っています。

職場での会議や若手からの相談への対応、物事への取組み方など、経験豊富で影響力の高いベテラン社員の発言や行動、意欲、捉え方は、若手社員のモチベーションや学習機会に大きな影響を及ぼすからです。

心理学者レイモンド・キャッテル氏が提唱した「流動性知能」と「結晶性知能」という知能の分類があります。

「流動性知能」とは、新しいことを学習する知能や、新しい環境に適応するための問題解決能力などのことをいい、加齢とともに減衰していきます。

一方、「結晶性知能」とは、学校で受けた教育や仕事・社会生活の中で得た経験に基づいた知能のことです。言葉の分析、単語力、コミュニケーション能力などは、この結晶性知能によって行われます。この知能には、20代以降も高まり60歳前後でピークを迎えるものもあります。

先に紹介した「新しいものに取り組むことに抵抗感がある」や「社内外の環境変化に対応できていない」といったベテラン社員の印象は、「流動性知能」にまつわるものが多いのではないでしょうか。

しかし、「結晶性知能」による知識や経験をもとに、地域社会や趣味の世界で幅広くコミュニケーションしながら新たな分野に取り組む年配の方もいらっしゃるでしょう。

多くの企業や組織で「ベテラン社員」を巻き込むことができたら、どんな変化が起きるのか、コーチとして可能性を感じずにはいられません。

組織開発で「ベテラン社員」の結晶性知能を活かす方法

ベテラン社員の「結晶性知能」が活かされている場面を、お客様企業で見せていただくことがあります。

若手を焚きつける

ベテラン社員と若手社員の懇親会の場を作った企業があります。ベテランが会社への想いや、未来を担う人たちへの期待、自分が貢献したいことを語る場から回を重ねるにつれて、若手社員の方も自らの想いを語る場に変わっていきました。

若手の取組みを応援し、見守る

ある企業では、知識や経験のギャップがある若手社員と「ベテラン社員」が二人一組となり、半年から1年にわたり、定期的に対話する場を設けました。

ベテランの経験や知識に基づいた問いかけは、コーチにはできない特別な問いになります。

継続的にペアとして関わり続けるため、若手社員の新たな取組みを見守りながら、ベテラン社員のとことん応援する気持ちが醸成されていったようです。

プロジェクト終了後には、若手社員がなかなか動き出さずに苦心されたベテラン社員ほど、一旦動き出した若手社員の様子を嬉しそうに話してくださいます。そして、「ベテラン社員」の話を人づてに聞いた若手社員がさらに頑張る、そんな好循環が起きています。

自分の知見を紹介する

若手社員の取り組みに役立ちそうな人や情報のありかを紹介する仕組みを構築した企業がありました。

「ベテラン社員」自身の経験には、参考になるものが多々あります。大事なのは押しつけでなく、若手社員が本当に必要と思うタイミングで紹介すること。豊富な経験や人脈の中から紹介する、というアクションは、ベテランにしかできないことの一つでしょう。


さて、みなさんの周囲にいる「ベテラン社員」には、どんな役割を期待し、任せることができるしょうか?

「ベテラン社員」の活躍の場面は、他にもまだまだあるはずです。

どんな役割であっても、大事なのは、「ベテラン社員」一人ひとりと対話し、彼らの想いをとことん聞き、アサインに活かすこと。

例えば、

  • 仕事人生の中で一番働き甲斐を感じた出来事は何か?
  • 仕事をする上で大事にしてきたことは何か?
  • 未来にむけて、会社にどう変わって欲しいと思っているのか?
  • ベテランとして若手社員にできる貢献とは何か?
  • 会社に何を残したいのか?

など、知識や経験、想いを聞きながら強みを探る。そして、理想の組織づくりにむけた若手社員との関わりをアサインするのです。

アサインする側の本気と期待が伝わらなければ、きっとうまくいかないと思います。

社員一人ひとりが、新しいことに楽しんで挑み、結果がどうであれ共有している。

そんなムーブメントが起これば、年齢、階層問わずみなが自然に新しいことにチャレンジする組織に誘うことになるのではないでしょうか?

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【参考資料】
「シニアの『心の高齢化』をいかに防ぐか」
竹内 規彦
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2019年4月号

『劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか』(光文社新書)
山口周

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