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1on1を成功させる、たったひとつのこと

1on1を成功させる、たったひとつのこと
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組織における人材開発は、より高いパフォーマンスを発揮することを目的に、様々な手法が用いられてきました。

その考え方の主流は、個の能力を高め、能力の高い人材を増やすことが組織の生産性を高める、ということであったように思います。

しかし、現在における人材開発は、個の能力開発に加えて、組織の中でのコミュニケーション、つまりは「つながりを開発する」という考え方に移行してきています。

「つながり」とは何か?

「つながり」を辞書で引くと、次のように定義されています。

  1. 関係、関連、結びつき
  2. 血縁関係、きずな

私たちの身体の中では、一つひとつの細胞同士が「つながり」あっています。

ある細胞から神経伝達物質が発信され、他の細胞がそれを受信することで、細胞単体では成しえない機能を出現させ、維持し、さらにはパワーを発揮しています。

私たち人間も、一人では成しえない夢の実現や生産性の向上に向けてコミュニケーションを交わし、「つながり」あうことでそれを達成しようとしています。

どんなに巨大な組織であっても、ミクロでみれば、つながりの最小単位は「1対1」です。

近年、多くの組織で「1on1」と呼ばれる「1on1ミーティング」や「1on1面談」の導入が進んでいる背景には、「1対1」の関係性を重視し、その総和である組織全体のパフォーマンスを向上させるという目的があります。

「1on1」の成果を分かつのは何か?

組織で行われる「1on1」の中で「コーチングを行った」場合と「コーチングを行わなかった」場合とでは、受け手側の「職場での状態」に差が出ることを示すデータがあります。

受け手側の「職場での状態」は、以下の項目からなります。

これらの項目がプラスに変化することは、生産性の向上に直接的に影響すると考えられます。

  • 目標への挑戦
  • ビジョンの明確化
  • 強みや課題の明確化
  • 仕事への創意工夫
  • 新視点の取り入れ
  • 変化への対応
  • 組織課題への責任感
  • アイディアの提案
  • 目標達成のため必要な人物と関わる
  • 周囲への情報提供

1on1のなかでコーチングを行うとどうなるか? -個人の状態からみる-


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[調査対象:コーチ・エィのプログラム(DCD)に参加したリーダー 2,624人のSH 11,584人/調査内容:D-meter 1回目・2回目/調査期間:2015年5月〜2018年3月] コーチング研究所 2019年

また、次のデータでは、「1on1」のコーチングの中で、受け手側の「職場での状態」にもっとも影響するスキルが「聞く」であることが分かります。

どのコーチングスキルを上げると「個人の状態」が最も上がるのか?


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[調査対象:コーチ・エィのプログラム(DCD)に参加したリーダー 2,624人のSH 11,584人/調査内容:D-meter 1回目・2回目/調査期間:2015年5月〜2018年7月] コーチング研究所 2019年

ここから推測できるのは、「1on1」を実施したからといって、相手が「話を聞いてもらった感じがしない」のでは意味がない、ということです。

大切なのは、「聞く」ことであり、さらには、相手が「十分に話を聞いてもらった」と感じることなのです。

細胞間のコミュニケーションは、「発信」と「受信」で成り立っています。

私たちのコミュニケーションはそれと似てはいますが、「つながり」を感じるためには、「発信」と「受信」だけでは不十分です。

例えば、テレビを見たり、ラジオを聴くのは、「発信」された情報を「受信」してはいますが、そこに「つながり」という感覚は生まれません。

「つながり」という感覚を開発するためには、「発信」と「受信」にプラスして、受信したことを相手に知らせる「返信」ともいうべきコミュニケーションが必要になります。

例えば、相手の話を聞いたうえで

  • 変化や成長に気づいてそれを伝える
  • 目標に向けた行動に対して承認する
  • 話を聞いて感じたことを率直にフィードバックする

といった、「もうひとつ先」のコミュニケーションです。

私たちは、自分が相手にどのような影響を与えているのかを知りたいのです。

相手からの「返信」があってはじめて、自分がどのような影響を与えているのかを確認することができます。

「返信」によって、十分に自分の話が聞かれている、影響できている、という感覚が相手の中に生まれるのです。

お互いが影響を与え合っている。

お互いがそのことを受け入れている。

そうした双方向の関係性が「つながり」のベースだと言えるでしょう。

「聞く」とは、相手の話を受け取るだけではなく、相手の話を聞き、受けた影響を相手に返すことまで含まれる、「つながり」を創り出すための能動的な行為なのです。

1対1の「つながり」が、組織の中に網目のように張り巡らさている状態を開発すること。

それが組織開発の原点なのだと思うのです。

※ Driving Corporate Dynamism(DCD)は(株)コーチ・エィの登録商標です。

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