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「つながり」の開発

「つながり」の開発
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「挑戦の文化」を創りたい。

目指す企業文化に「挑戦」というキーワードを掲げるエグゼクティブが多くいらっしゃいます。

事実、日本の上場企業で、売上ランキングトップ3企業のホームページを見ると、トップメッセージの中に「挑戦」のキーワードがありました。

では、「挑戦の文化」は、どのように創ることができるのでしょうか?

人の「挑戦」は何から生まれるのか?

「挑戦」の文化を醸成するひとつの方法としてまず思いつくのは、「上司が部下に関わり、部下の挑戦を促す」という方法です。

これを全社で行えば、「挑戦の文化」になっていくかもしれません。

ただ、私自身はこの方法とは別の方法についても、可能性を感じています。

最近、偉大なるふたりの挑戦者の講演を聞く機会がありました。

ひとりは出雲充さん。2005年に株式会社ユーグレナを立ち上げ、ミドリムシを活用し、食品や化粧品、バイオ燃料の販売、研究等を行っています。第1回日本ベンチャー大賞の「内閣総理大臣賞」をはじめ、数々の賞を受賞歴があります。

もうひとりは、山﨑敦義さん。

2011年に株式会社TBMを立ち上げ、紙やプラスチックの代替となる新素材「LIMEX」を開発、製造しています。2017年にはテスラやメルカリが受賞した日米イノベーションアワードでInnovation Showcaseに選出されるなど、いくつもの賞を受賞。直近では、日本経済新聞社の「NEXTユニコーン推計企業価値ランキング」で第4位に選ばれました。

いずれも日本を代表するベンチャー企業の創業者です。

おふたりは、地球規模の社会課題を解決するという大義をもって、事業を成長させることに挑戦しています。

では、このおふたりの挑戦はどこから始まったのでしょうか?

挑戦者に共通する、あるひとつのこと

出雲さんと山﨑さんに共通していたのは、おふたりともに「ある人との出会いがあった」ということでした。

出雲さんは、大学時代にバングラデシュに留学したそうです。

そこでグラミン銀行の創始者ムハマド・ユヌス氏と出会い、同氏が目指す世界とやりたいことにふれたことが、自身の今の挑戦につながっているとおっしゃっていました。

山﨑さんの場合は、30代で訪れたヨーロッパの街並みを見て、「100年後も人類に貢献する事業を興したい」という気持ちを持ち始めたそうです。そして、その後「紙の神様」と呼ばれる同社現会長の角祐一郎氏と出会います。

興味深いのは、その「ある人」から、挑戦を促されたわけではないということです。

「ある人」との対話によって、強い「Want」が生まれたようなのです。

講演後に、おふたりと個別にお話をさせていただく時間がありました。

私も、彼らから挑戦を促されたわけではないのですが、お話しながら、自分の中に強い「Want」が生まれてくる感覚がありました。

現代の組織と「挑戦」の関係とは

挑戦の第一歩とは、内なる強い「Want」だと思います。

強い「Want」の生まれ方は、人によって色々だと思いますが、誰かと新しくつながり、誰かの「Want」に触れることで生まれるものでもあることを、身をもって体感しました。

誰かの「Want」に触れることができる新しい「つながり」の開発は、「挑戦の文化」につながる可能性がありそうです。

昨年出版された『組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす』では、現代の組織を、とても興味深いキーワードで表現しています。

  • 多様性が増したことで、「てんでバラバラ」になっている
  • 集まってすぐに結果を出さなければいけない「待てない組織」
  • 「個業化」により、おひとりさまばっかりの「ひとりぼっちの組織」

これらのキーワードから見えてくるのは、現代は、そもそも人と人がつながりにくい組織が増えているということだと思います。

ただでさえ「つながりにくい組織」の中で、ましてや誰かの「Want」に触れるのは、とても難しいことのように思えてきます。

では、私たちは、組織の中でつながりをつくるために、どんな「ほんの少しのきっかけ」をつくることができるでしょうか。そして、それをどんな「Want」に結び付けられるでしょうか。

挑戦を生む「ほんの少し」のきっかけづくり

先日、こんな言葉で締めくくられるあるテレビCMを目にしました。

「ほんの少しのきっかけで、人はつながれる」

あるカフェの店内が舞台のCMです。店内の初対面の人たちが言葉を交わしたり、何かを一緒にしたりするきっかけを店が創り出しているという内容でした。

現代では、インターネットで容易につながることができるようになり、リアルにつながるという行為が薄れてきています。意図的に、そして物理的に「つながり」を開発する時代になっているとも言えます。

例えば、週次のミーティングに別部門の人に入ってもらい、「最近やりたいと思っていること」を自由に話す時間を設ける。

朝礼や昼礼を別部門と合同で行い、「やりたいこと」をテーマにして、メンバーに順番に話してもらう。

部門を超えて、コーチをし合うというのも面白いです。

少し大掛かりではありますが、フリーアドレスの導入もその一つでしょう。

たまたま隣に座った人に「どんなことやりたいの?」と聞いてみる。

つながりの当事者には、強い「Want」が生まれる可能性が高まります。

それは「挑戦の文化」に向けた、第一歩と言えるかもしれません。

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【参考資料】
・中原 淳 (著)、中村 和彦 (著)、『組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす』、ダイヤモンド社、2018年

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