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もう一度「人との関わり」を変化させる

もう一度「人との関わり」を変化させる
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知り合いを数人程度たどれば、世界の誰とでもつながるという「スモールワールド現象」というものがあります。

1967年に社会心理学者スタンレー・ミルグラムが行った検証実験では、人間の殆どは6人の知り合いでつながっている「六次の隔たり」という言葉で表現されました。

2011年になると、Facebookユーザーのうち任意の2人を隔てる人の数は平均4.74人であることがFacebookとミラノ大学による共同調査で発表されています。

高度に発達したIT技術によって、組織においても、距離があってもコミュニケーションは容易になってきたはずです。そして、距離を通り越した部署間、拠点間に様々なつながりが生まれ、情報がスピードを持って飛び交う「社内のスモールワールド化」も加速しているはずです。

ところが、中国で日系企業のプロジェクトに関わる中で、よく聞く声があります。

物理的に離れた組織の間で起きていること

「現地で何が起きているのかタイムリーな情報が入ってこない」
「中国国内各拠点で何が起きているのかの情報が入ってこない」
「工場から、必要な情報が届かない」
「本社で何が起きているのか、なぜ方針が急に変わるのかわからない」

物理的に離れた組織間で情報伝達がうまくいっていない、という声です。互いが互いを牽制し合っているようなことさえも見受けられます。

このような「物理的に離れた社内の情報伝達」が足かせになり、業績向上に向けた意思決定、実行が遅れるという現象は、中国でなくとも、日々起きているのではないでしょうか。

では、スモールワールド化が加速しているはずの今、こうした現象を乗り越えるには何が必要なのでしょうか。

情報伝達の足かせを越えるものは何か

早稲田大学入山章栄教授は、人と人の「関わり」について次のように述べています。

「人の認知には限界がある(=限定された合理性)。したがってそのまま放っておくと、目の前の知だけを組み合わせがちになり、やがて組み合わせは尽きる。この理由で、組織・人から新しい知が生まれなくなるのだ。したがって、新しい知を生み出したい企業・ビジネスパーソンがなすべき第一歩は、『自分の目の前ではなく、自分から離れた、遠くの知を幅広く探索し、それをいま自分が持つ知と新しく組み合わせる』ことになる」と。

さらに、「人は弱いつながりの人脈を豊かにもっていれば、『遠くにある幅広い情報を、効率的に手に入れる』という面で有利になる」、「強いつながりが重要なのは『実行』の局面である。新たに生まれたアイデアは実行されてこそ、イノベーションたりうる」とも述べています。

たしかに、人との「関わり」は、意識しなければ固定化しがちなものになります。

物理的に離れていればなお、新たな情報を手に入れるための「弱いつながり」とそれを実行するための「強いつながり」、この両方を定期的に見直し、変化し続けることが必要なのではないでしょうか。

私がプロジェクトを担当しているクライアントさんにも、ご自分と関係者の「弱いつながり」と「強いつながり」を見直し、変化を起こすことで目標達成に近づいた方が多くいらっしゃいます。

自分のコミュニケーションが日本語を話せる中国人に偏っていると感じた総経理Aさんは、日本語を話せない中国人社員と週一回ランチに行くことにしました。

現地法人部門長のBさんは、新ビジネスを展開するために直接的なコミュニケーションの無かった本社他部門との定例TV会議を開始しました。

本社社長の同意を得るのに苦慮していた総経理のCさんは、日本出張時に、本社社長と1対1で話す時間を持つことで信頼関係強化に努めました。

製販一体化を目指していた営業部門長のDさんは、中国人工場幹部との直接コミュニケーションを開始し、何でも言い合える関係づくりを進めました。

しかし、こうした方々も、「えい、それ」と簡単に行動を起こせたわけではありません。

「関係者との『関わり』を変えよう」と、どこか胸の内で思ってはいても、いざ行動に移すとなると、躊躇し尻込みしてしまう方も多くいらっしゃいます。

「人との関わり」を変化させるには、何かパワーが必要であるようです。

「関わり」を変えるために必要なことは?

物理的な距離を越えて情報が「聞こえる」「伝わる」ために、「弱いつながり」を増やす。同時に、その中に強固な信頼関係をベースにした「強いつながり」を作っていく。

そのために必要なことは、何なのでしょうか?

日本語を話せる中国人とばかり話していたAさんも、中国語しか話さない社員とランチに出かけるまで、最初の一歩をなかなか踏み出せなかった一人です。ところが、最終的にはたくさんのことに取り組まれました。

コーチングプロジェクトの最後に、Aさんを動かしたものは何だったのか?とお聞きしました。すると一言、「勇気」だと。

「なぜ、その勇気を出せたのでしょうか?」と聞いたところ、「コーチングで『手に入れたいゴールは何か?』を聞かれ続ける中で、徐々に湧き上がってきた」とおっしゃっていました。

「人との関わり」に変化を起こした皆さんに共通するのは、どうしても手に入れたいゴールがあった、という点です。

ITインフラがどんなに整っても、手に入れたいゴールを意識し、誰とつながりたい、つながりを強化したいという目的意識がなければ、本当の意味での社内のスモールワールド化は進まないのかもしれません。

あなたのゴールは何ですか?
ゴールを手に入れるために誰とつながると良いですか?
誰とのつながりを強化しますか?

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参考資料
「『スモール・ワールド』現象は、世界でさらに加速する」
入山 章栄(著)、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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