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「マネーボール」の改革を組織に導入すると?

「マネーボール」の改革を組織に導入すると?
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最近、ある企業の新規プロジェクトのプランニングにむけて、担当者を決めることがありました。

プランニング期間は、3週間。

経験豊富であれば、一人でプランニングできる期間です。しかし、そうしたメンバーはみな多忙で任せるのが難しい状況でした。

私は考えた末、「経験ゼロ」のメンバーを3人選び、彼らに任せることにしました。私にとってみれば、ちょっとした冒険でした。

3週間後。

彼らは私の期待をはるかに上回る見事なプランを創りあげました。

そして、そのプランはクライアントにもご満足いただけたのです。

ホームラン数より「出塁率」をとったGM

「マネーボール」という映画があります。

メジャーリーグ球団オークランド・アスレチックスのビリー・ビーンというゼネラルマネージャー(GM)が統計学的手法を用いて、プレーオフ常連の強豪チームを作り上げていく様子を描いた映画です。

オークランド・アスレチックスは、決して資金豊富なチームではありません。

映画の序盤で、ホームラン数や打点数の高い強打者が、3人も他球団に移籍するシーンがあります。

球団に長年勤めているスカウトたちはその選手の穴を埋めるべく、ホームランを打ち、打点を稼ぐ選手の獲得を検討します。

しかし、GMのビリー・ビーンは、こう言います。

「彼の代わりを見つけるのは無理だ。それよりも、何人かで彼の穴を埋めることだ」

そして、「出塁率」という新しい指標を打ち出します。

チームが雇った統計分析のプロの「得点をとるには、まずは塁に出ることが必要だ」という考えに基づいた結果でした。

そして、ホームラン数や打点数で目立つ大物選手ではなく、地道に出塁を重ねる選手の獲得を提言するのです。

これまで、ベテランのスカウトたちが全く見向きもしなてこなかった選手たちでした。

そのシーズンのオークランド・アスレチックスは、序盤こそ苦戦するものの、最終的にはリーグ優勝します。そして、もう一歩でワールドチャンピオンを手にすることができるというところまで勝ち進みました。

「指標」を変えると「2:6:2 の法則」が変わる

「指標を変える」は、まさに視点の変わる瞬間です。

先述の3人を選ぶ際に私が考えたのも、まさにこの「指標を変える」でした。

プランニングの経験値という指標ではない、まったく新しい指標を持ち込めないか?と考えたのです。

日本には、「三人寄れば文殊の知恵」という諺があります。凡人も三人集まって相談すれば、すばらしい知恵が出るものだという意味です。

また、組織開発を行うClark Quinnの「Learning's Role in Innovation」には、こうあります。

「『イノベーション』 は、さまざまな アイディアが、温められ、交わり合う環境から生まれる『生産物』である」

つまり、お互いにさまざまなアイディアを出し合い、交わり合わせることで、これまでにない斬新なプランを生み出す可能性が高まるということです。

そこで、プランニング経験ではなく、「自分の考えや疑問を、恐れず、率直に発言ができるか?」という指標を持ち込めないかと考えたのです。

「普段から私への質問や提案の多いメンバーは誰か?」を思い浮かべると、数人の顔が浮かびました。

加えて、発言量をより多くするための二次指標として、「クライアント企業への愛着と成功への意欲があるか?」という指標も持ち込みました。

「なぜやりたいか?」を自分の言葉で語ることができたのが、今回プランニングを任せた3人だったのです。

お客様へのプレゼンが無事終わった後、彼らに、この3週間について話を聞いたところ、

  • お互いに意見を出し合って、自由に話せる場があった
  • 自分の持っているもの、考えていることをいかにアウトプットするかを考えていた
  • 他のメンバーの意見があったからこそできた
  • 3人で話す場が楽しかった

と答えました。

3人は、彼ら自身の強みを存分に発揮し、また互いを尊重していたことがわかります。

働き方改革が叫ばれる中、ひとつのプロジェクトに3人をアサインするのは、コスト高に見えるかもしれません。

しかし、期待以上の成果をあげ、このプロセスの中で、彼らは多くの学びを得ました。

成果とメンバーの開発の両方を手にすることができたのですから、価値ある投資であったと確信しています。

「2:6:2の法則」という表現がよく使われます。

しかし、組織における人材を、ある特定の指標によって「2:6:2」に分布しているだけのことです。もし、同じ母集団で、別の指標を持ち込めば、きっと別次元の「2:6:2」の分布ができるはずです。

みなさんの目の前のメンバーも、指標を変えて見ると、どのような世界が見えてきますか?

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参考資料
Clark Quinn, 2017, Learning’s Role in Innovation,
Chief Learning Officer
http://www.clomedia.com/2017/05/11/learnings-role-innovation/

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