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礼節を重んじる組織文化の作り方

礼節を重んじる組織文化の作り方
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朝、おはようと「挨拶する」のは礼儀。
相手の「目を見て話す」などは礼節。

表面的で形だけの礼儀を一方的に相手に押し付けるのではなく、相手を尊敬する気持ちをもち、相手に失礼に当たらない、また相手が心地よく思う礼儀を示すことを「礼節」と言います。

武道は「礼に始まり礼に終わる」と言われます。試合は礼儀(作法やルール)を守った上で、「相手への敬意を示すことが、何よりも重んじられるべき」であり礼節をもって試合に臨むことは勝敗よりも重要であるという考え方がなされます。

実は私たちが組織で仕事をするうえでも、礼儀より礼節のほうが大切なのではないでしょうか。

職場での「無礼」な態度とは?

私が思う職場の中で見かける礼節を欠いた行為、つまり無礼な態度は例えば下記のようなことです。

  • 自分と違う意見の人に敬意を払わない
  • わからないことがあっても謙虚に人に尋ねない

その言動や振る舞いが無礼かどうかは、相手がどう感じたかで決まります。

では、無礼な態度は職場にどのような影響を与えているのでしょうか。

礼節に関して数々の研究や論文を執筆しているクリスティーン・ボラス氏の著書『Think CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』には、いくつもの興味深いデータが紹介されています。

例えば、17の業界の800人の管理職、従業員を対象に実施した調査では 、職場で誰かから無礼な態度を取られている人については、次のようなことが言えるのだそうです。

  • 38%の人が、仕事の質を意図的に下げている。
  • 47%の人が、仕事にかける時間を意図的に減らしている。
  • 66%の人が、自分の業績は低下している。
  • 78%の人が、組織への忠誠心が低下したと答えている。

また、アメリカ「フォーチュン」誌に掲載された調査によれば、フォーチュン1000企業の管理職や経営幹部は礼節に欠ける言動から生じたトラブルの尻ぬぐいや従業員間の関係修復に彼らの業務時間の13%(年間計算で7週間相当)を費やしているそうです。

組織の中での無礼な振る舞いを見過ごすと、組織のパフォーマンスが低下し利益や社員を失うことは明らかだと言えるでしょう。

では、礼節のある組織文化を作るためには何が大切なのでしょうか。

礼節のある組織づくりとは?

真っ先に思い浮かぶのは、リーダー自身が率先して礼節を重んじることでしょう。

調査では、職場に無礼が起こる原因を、

  • 社員の4人に1人は、上司の態度が悪いために自分の態度も悪くなっている
  • 20%の社員は会社や上司は社員同士が互いにどう接するかを気にかけていない

と答えたのです。(※2)

社員は、職場で仕事ができると思われている上司の慣行を察知し、良くも悪くもその先例を真似するのでしょう。

とすれば、リーダーが礼節ある態度をとれば、社員にとって信頼や尊敬、安心感を与えることにつながり、結果としてパフォーマンスの向上につながると考えられます。

仮に、リーダーが組織の中で礼節を重んじて、社員のモデルとなることを目指したとしましょう。

リーダーが無礼な態度を取る社員に対して、「私の礼節を見習え!」と指摘して、指導すればいいのでしょうか。

礼節を強制することで、礼節のある組織文化は作られるのでしょうか。

ある調査では無礼に振る舞ってしまう理由を尋ねたところ、「傾聴やフィードバックといった基本的スキルについて会社が十分な教育の場を提供していないから」と回答した人が25%いたそうです。(※1)

つまり、「礼節ある態度や振る舞いとはどのようなものかを誰もが承知しているものだ」と決めつけてはいけないということです。

礼節について基本的なことを学んでいない人も多いかもしれません。とすると、礼節のある組織文化を作るためにリーダーが担う役割は何でしょうか。

礼節はどこで作られるのか?

私は、リーダーの役割とは、組織における自分たちなりの哲学やルールを作ることだと思います。

どんな激しい試合でも、終われば礼をして、平静な心に戻すのも武道の特徴です。終了のブザーの後に相手につかみかかる選手はいません。

会議の場では、激しいやり取りが人間関係を壊すのではないかという危惧が、建設的な議論の妨げになることがあります。

例えば会議の時は「相手の話を聴こう」という哲学や

  • 会議に参加するときには準備して臨む
  • 必ず自分の議題を持ちこむ
  • 自分の意見はその場で言う
  • 議論を尽くして結論が出たら全員で賛成する
  • 会議の後では「本当はこうだった」などと言わない

などのルールを作る。

哲学やルールを作ることは、社員が互いに敬意を持って接するようになり、心理的安全につながり、リスクがあったとしても新しいことに取り組んでみようという勇気が出てくると思います。

そして、礼儀正しい振る舞いへの相互責任を負うことについて、より多くの支持や共感を得ることが、礼節ある文化の実現の後押しになると思うのです。

みなさんの組織はどれくらい礼節がありますか。

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参考資料
※1 クリスティーン・ポラス(著)、夏目大(訳)、『Think CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』、東洋経済新報社、2019年

※2 Christine Porath and Christine Pearson, 2013,You’re Rude Because Your Boss Is Rude
http://blogs.hbr.org/2013/01/youre-rude-because-your-boss-is/

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