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期待しない。でも、関わりは諦めない。
コピーしました コピーに失敗しました皆さんには、関わり続けることを諦めてしまった人、いつの間にか距離を取ってしまった人などはいませんか?
こうした状況にどう向き合うかを教えてくれた、Aさんのことをご紹介します。
Aさんは、私がコーチしていたクライアントさんの上司でした。
外資系メーカーR&D部門で、個性豊かな多人数のメンバーを率いながらも高い成果を上げ続けるAさんは、社内でも「ネイティブコーチ」として知られるリーダーでした。
Aさんに直接お会いする機会を得た私は、真っ先にお聞きしました。
「部下と関わるとき、Aさんには心構えや決め事のようなものがあるのですか?」
ネイティブコーチAさんの決め事とは?
私の問いに、Aさんは即答しました。
「『期待しない。でも、関わりは諦めない』という決めがあります」
そして、こう続けました。
「相手に期待するのは、こっちの勝手じゃないですか。
なのに、思い通りに動いてくれないと勝手にイラついたりする。
それで相手との間がぎくしゃくする。
部下にも私にも、良いことがないんですよ」
これは過去、難しい部下との出会いがあり、悩み抜いた末に辿りついた境地とのことでした。
「『相手に期待しない』と決めると、関わり続けられるんです。
で、手を替え品を替え、どうしたらコイツとうまくやれるか、
探し続けることができるのです」
Aさんの祖父と両親は、何が違ったのか?
互いの力を存分に発揮し合える関係をつくる能力をリーダーの「関係構築力」だとすると、どうすれば、Aさんのように関係構築力を携えられるのでしょうか。
Aさんのヒントになったのは、幼少時代の自身の祖父との日々でした。
「おじいちゃん子」だったAさんは、教育熱心だった両親への反抗心もあり、おじいちゃんとよく一緒にいたのだそうです。
難しい部下を目の前にぼう然としていたAさんには、自分の姿と幼少期の両親の姿が重なったそうです。そして、祖父と両親の自分への関わり方の違いを棚卸ししたといいます。
- 祖父は、Aさんが夢中だったプラモデルや漫画に、興味を示してくれた
親は、これらを勉強のじゃまになるから、と、奪った - 祖父は、好きなこと、嫌いなこと、やりたいこと、やりたくないことをよく聞いてくれた
親は、塾の宿題の進捗や、次のテストの準備についてよく聞いてきた - 祖父とは、将来の夢や憧れについてよく話した
親とはこういった会話をした記憶はなかった - 祖父は、一緒に居ると対等な関係だと感じられる存在だった
親はつねに上位者だった
そしてAさんは、自分がその部下に対して「両親と同じような接し方」をしていることに気づいたのです。
これではお互いの間に明るい未来は訪れない、と痛感したAさんは思い切って、彼との関わり方を大きく変えることを決意します。
これが、Aさんのリーダーとしての関係構築力を高めるスタートだったのです。
上司が変わると何が変わるのか?
では、部下との関わりを変えることは、どんな未来と結びついているのでしょうか?
ひとつのリサーチ結果をご紹介します。
[拡大表示する]
このデータからは、「上司が部下へのコミュニケーションを変えることで、目標に向けた部下の行動が主体的になる」ことが明らかになります。
Aさんの
「相手に期待しない。でも、関わりは諦めない」
という言葉は、文字どおり「相手に期待しない」のではなく、関わり方を探求し続けるために、時にくじけそうになるAさん自身を奮い立たせる"呪文"のようなものだと私は理解しました。
グーグルの経営陣がコーチをつける訳
以前、グーグル元CEOのエリック・シュミット氏の来日時の講演会で弊社のスタッフが質問しました。
「なぜあなたは、これだけ長い間コーチをつけているのですか?」
シュミット氏の答えは、次のようなものでした。
「グーグルは、世界中から素晴らしい才能の持ち主を集めている。
でも、必ずしもそういった人々と私が努力なしにうまくやれるわけではないのです。
どうすれば優秀な人々といい仕事ができるのか?
そのことについて常に考え、ブラッシュアップするパートナーとして、
私はコーチをつけ続けています」
優秀な人材が多くいればイノベーションが起きるわけではありません。リーダーには、彼らとうまくやれるだけのコミュニケーション力が必要となります。
エリック・シュミット氏も難しい相手と関わり、より高い成果にたどり着くためにどうするか、「関係構築力」を高める方法を、コーチと探求し続けていたと言えるのでしょう。
自分からの「関わり」を変えることで、未来をつくり変えられる相手がいるとしたら......。
あなたが今日声をかけたい人は誰ですか?
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