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「自分には関係ない」を減らすためにリーダーができるたった1つのこと

「自分には関係ない」を減らすためにリーダーができるたった1つのこと
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トヨタ自動車の豊田章男社長は、年初にラスベガスで実証都市「ウーブンシティ」構想を大々的に発表した直後に社内の年頭挨拶に臨み、熱をこめて訴えました。

「アメリカから帰国してみたら、(ウーブンシティを)自分には関係ないと受け取っている人がいることを知り、残念な気持ちになった。そういう意識は捨てていただきたい」(※1)

未来に向けて組織を大きく変化させようとしたとき、リーダーひとりで成し遂げることはできません。また、経営チームだけで取り組むものでもないでしょう。

では、オーナーシップを持ち、変化のプロセスに主体的に参加する社員をどうしたら増やすことができるのでしょうか?

リーダーたちの下で何が起きていたのか?

IT企業のA氏は、CEO就任直後から複数の変革プランを創り、早いスピードで実行に移していきました。

ところが、経営チームでひとり、B氏だけはそのスピードや変革の流れに足並みを揃えようとしませんでした。

実は、A氏とB氏は以前から会議の場で反目して直接話をしないなど、周囲もその関係性を心配する間柄でした。

A氏は、B氏の様子にいら立ちを募らせていきました。そして、この変革プランがいかに必要であるかを力説し、早いスピードで取り組んでほしいと繰り返しリクエストしました。第三者を通して説得を試みることもありましたが、B氏が取り組むことはありませんでした。

A氏とB氏の距離が縮まることのないまま、A氏の就任から8か月が経っていきました。

翌年。

A氏が再編成した新体制のメンバーにB氏の名前はありませんでした。

新チームは、A氏と変革を共に進めることにコミットしているメンバーで構成されていました。A氏は改めて変革の必要性を説き、共に変革を進めようと鼓舞しました。

しかし、3か月が経っても、B氏が統括していた部門だけはスピードが上がりません。B氏がいなくなったにもかかわらず、です。

この部門のメンバーにようやく変化の兆しが見えてきたのは、新体制発足後、6か月も経ってからのことでした。

主体的な社員を増やす、最初の一歩とは?

調査会社ギャラップが190の組織を調査した結果(※2)、エグゼクティブチームが高いレベルで「エンゲージ」していると、「マネジャー層のエンゲージ度」は39%上がり、マネジャー層が高いレベル で 「エンゲージ」していれば、「社員たちのエンゲージ度」は59%上がる、ということがわかりました。

こうしてみると、A氏とB氏の関係が、部門のメンバーに影響を及ぼしていた可能性は否めません。A氏がB氏をエンゲージできなかった1年もの間、メンバー全体のエンゲージは「低い状態が続いていた」と考えられます。そして、その復活にはそれなりの時間が必要だったのです。

心理学者でイェール大学の教授ローリー・サントスは、組織の「幸福感」は、CEOからトリクルダウンする(上から下に降りてくる)と言います。(※3)

こうしたポジティブな感情や姿勢も「トリクルダウン」するものだとすれば、社員一人ひとりがオーナーシップを持ち、変化のプロセスに主体的に参加している状態にするには、トップをはじめ、それぞれのリーダーが「それぞれの目の前」の人にいかに関わるかがカギを握っていると考えられるのではないでしょうか。

では、あなた自身の立場で考えたとき、あなたの「目の前」にいる相手への影響はどうでしょうか? さらに、その「目の前の相手」のさらに「その先」のメンバーへの影響はどうでしょうか?

例えば、あなたが支店長であれば、営業部長への影響はどうでしょうか?
あなたが部長であれば、課長への影響はどうでしょうか?
そして、「さらにその先」への影響はどうでしょうか?

* * *

コーチング研究所が、役員チームの「会社へのエンゲージメント」は何によって左右されるかを調査したことがあります。「会社へのエンゲージメント」が高い企業と、そうでない企業の役員チームが評価した経営者のリーダーシップを比較した結果、経営者の次の行動に特に大きな差が見られることがわかりました。(※4)

「成長促進」

  • 役員と週に10分以上まとまって話す時間を設けている
  • 役員をやる気にさせる提案や要望をしている
  • 役員の成功や成長を支援している

「方向性の提示」

  • 「会社のビジョン」を周囲に魅力的に語っている
  • 「節目」だけでなく、「日常」的にビジョンの話を持ち出している

オーナーシップを持ち、変化のプロセスに主体的に参加する人を組織内に増やしていくために、あなたは、目の前のメンバーに対して、何から始めますか?

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