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チームの協力関係を最大化する
コピーしました コピーに失敗しましたHarvard Business Reviewに掲載された、幸福学の研究で最先端を走る慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司氏と、早稲田大学大学院・ビジネススクール教授の入山章栄氏の対談があります。その中の前野氏のコメントに、興味深い内容がありました。
「心配性になりやすい気質には『セロトニントランスポーターSS型』という遺伝子が関係しており、それを持つ日本人は約8割と多いのに対し、欧米人は3割ぐらいしかない。つまり、日本人は元来から心配性で、自分1人で新しいことを決めて取り組むのが苦手な民族と考えられます」
「私が提案しているのは、日本人は1人でやると心配になりやすいのだから、組織的に皆で力を合わせる方法を考えるべきだということです」
これを読み、「組織的に皆で力を合わせる」方法として最初に頭に浮かんだのは「チーム」を組むことです。
大事なのは「チームがどのように協力しているか」
そもそもチームとは何でしょうか?
チームに関する研究では、Googleの行った「Project Aristotle」が、とても興味深い結論を導き出しています。
アリストテレスの言葉「全体は部分の総和に勝る」にちなみ、アリストテレスの名を冠したこのプロジェクトの目的は、「効果的なチームを可能とする条件は何か」という問いに対する答えを見つけ出すことです。
ちなみに、このプロジェクトでは、ワークグループと区別し、「メンバーは相互に強く依存しながら、特定のプロジェクトを遂行するために、作業内容を計画し、問題を解決し、意思決定を下し、進捗状況を確認します。チームのメンバーは、作業を行うために互いを必要とします」とチームを定義しています。
リサーチの結果、「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」が真に重要な要素であることを突き止めたのです。
チームリーダーもフォロワーもいないチーム
新型コロナウイルスの出現で、私たちを取り巻く環境は一変しました。人間は社会的な生き物であるにもかかわらず、他者へ関わることに制限が設けられ、より不安を感じやすくなっているのが現在です。
先を見通せない不透明さの中、一人きりでは不安になりやすい日本人である私たちは、チームを組み、今まで以上に他者との協力関係を最大化していく必要があるのではないでしょうか。
私は、この協力関係の最大化を左右する要素の一つに「チームに向かう個人のスタンス」もあるのではないかと考えます。
そのような考えに至った背景には、私自身がこの3か月ほど、チームで前進していくプロセスにおいて新鮮な体験をしたことにあります。
私が過去に体験してきたチームには、必ずチームリーダーがいました。
チームリーダーがいると、必然的に他の人はチームメンバーになり、そこには、リーダーとフォロワーという関係性が生まれます。チームリーダーはリーダーの役割を、そしてチームメンバーはフォロワーの役割を果たします。チームリーダーはリーダーらしく振舞い、チームメンバーはフォロワーらしく振舞う。それぞれチームに向かうスタンスが決まります。
私は、このことに、これまで疑問を抱いたことは一度もありませんでした。
この3ヶ月の新鮮な体験とは、この間に体験したチームには、誰一人としてフォロワーのスタンスをとる人がいなかったことです。チームの一人ひとりが、圧倒的な当事者意識をもつリーダーのスタンスで成果に向けて協力関係を築いていたのです。
チームは時に、失敗することもありましたが、日々の前進は目を見はるものがあり、目標の最初のマイルストーンを速いスピードでクリアすることができました。では、なぜそのような状態をつくれたのでしょうか?
合意する、毎日話す、フィードバックし合う
私は、3つの要因があると思っています。
一つは、「全員がリーダーである」という合意をして、スタートをしたことです。
ここでいう「リーダー」の定義は、
- 成功についての責任を引き寄せている
- 観察者ではなく、参加者の立場を取り続ける
- 主体的に変化を起こし続ける
の3つです。
私たちは、あえて明確にチームリーダーを決めず、全員がリーダーであるという合意をして、スタートしました。
2つ目は、毎日必ず全員で話すこと。
リモートワークの環境下でしたので、直接会うことは叶いませんでした。そこで毎夕方に、オンラインで全員が集まり、30分間のミーティングをしました。
そして3つ目は、そこで話す内容です。
その日、何に取り組み、どのような発見があり、そこにはどのような葛藤があったのかをシェアすると同時に、お互いに「リーダー」としてどう見えているかをフィードバックし合いました。
その上で、「私たちはどのような協力を創り出せるか?」を話し合ったのです。
「リーダーとしてのスタンス」を整えた上で、「どのような協力ができるか?」を話すという順番が機能していたように思います。
改めて私は、変化が激しく、先が見通しにくい今こそ、チームの協力関係を最大化して、前進していく必要があると思います。
全員が「チームにリーダーのスタンスで向かう」状態を創ることに挑戦してみてはいかがでしょうか。
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【参考資料】
Harvard Business Review Web版
コロナ禍が問い直す「はたらく」ことの意味
~ 働く人にはセルフリーダーシップが欠かせない
[特別対談]幸福学は経営を変えるか(前編)
Google re:Work 「効果的なチームとは何か」を知る
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