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チームを成功に導くときに忘れがちなもう1つの視点

チームを成功に導くときに忘れがちなもう1つの視点
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突然ですが、みなさんには「友人」が何人いますか?

最近は、SNSを通して100人、500人、あるいは1000人いる、という方もいるかもしれません。私自身はといえば、毎年、年賀状を出すのは決まってだいたい150人、ほんとうに仲のいい友人は、3~4人といったところでしょうか。

最近、「ダンバー数」なるものを調べました。「ダンバー数」とは、人間が安定的な社会関係を保てる人数について脳の大きさから調査・研究をしたイギリスの人類学者、ロビン・ダンバーが提唱したものです。

調べるきっかけは、あるクライアントとの会話でした。彼は「大きなチームほど全員で問題解決できるから、成功のためにも組織は大きいほうがいい」という考えで組織を拡大していたのですが、思うように成果が上がらず悩んでいました。

チームには最適な人数がある?

ダンバーは、人間には適切な関係を築ける上限人数があるといいます。相手がどんな人間で、自分とどのような関係なのかを把握できる人数には最大値があるというのです。ダンバーが提唱する典型的なチームの規模は次の通りです。

3~5人: 最も親密な友人関係を築ける人数
12~15人: 誰かが死んだときに深く嘆き悲しむ友人や家族の数
50人: オーストラリアのアボリジニやアフリカ南部のサン人が移動するときの平均的な規模
150人: 社会的交流が保たれる限界の数

目的にもよりますが、それぞれ5人、15人、50人、150人を上限に、これを超えたらチームを分けたほうがうまくいくということです。この数字は、ダンバーが新石器時代から近代までのさまざまな組織を調べる中で見つけ出した一つの法則です。

チームの人数と主体性の関係

先のクライアントは「チームの中に主体的に動けず、何があっても他人事にしてしまうメンバーがいて困る」と言います。クライアントが抱えるこの問題も、ダンバー数と関係があるのかもしれません。

チームの成功とメンバーの主体性は深く関係します。クライアントのチームは、組織が大きくなればなるほど全体的に主体性が失われていきました。彼は、その要因を自らのマネジメント能力やメンバーの能力にあると考え、解決策を模索していました。

そこで私は「ダンバー数」をヒントにチームの「人数」に目を向けることをクライアントに提案しました。

「チームが成功するために、機能的で適切なサイズはどれくらいだろうか」という観点で、メンバーの責任感やチームへの貢献実感などを考えた結果、試しに8人のチームを2つに分けてみることにしました。

チームが4人になると、チーム内でのコミュニケーション量が増えました。これまであまり意見を言わなかったメンバーも発言するようになり、それぞれが自らのアイディアをミーティングに持ち込むようになりました。少しずつではありますが、メンバーの動きには確実に変化が見られました。お互いに対する理解が深まり、親密性が増すことによって「自分にできることは何か」に意識が向くようになったのです。

彼はその後、改めて組織全体を見直して、組織内のチーム構成を変え、全体の人数を増やしながらも機能的に動く組織を実現しています。

組織は、たくさんの「1対1」でできている

実は「4人」という数字は、彼の常識から言えばチームとしては小さすぎる数でした。しかし、彼は「ダンバー数」をヒントに、チームを組み替えることで機能する体制をつくることができました。

もちろん、ダンバー数がすべての解ではありません。小さなチームがうまくいくとは限らないでしょう。組み合わせも大事でしょうし、成功のためにはリーダーのマネジメント能力やメンバーの能力も重要な要素です。

しかし「数」も一つの大事な要素です。人数が多くなると、1対多のコミュニケーションが増え、1対1のコミュニケーション量が減ったり、偏ったりしがちになります。

組織は、無数の1対1の関係で成り立っています。問題解決もイノベーションをもたらすアイディアも、1対1のコミュニケーションによって呼び起こされます。大きさを問わず、機能的な組織を維持するためには、1対1のコミュニケーションがたくさん起きやすい環境づくりが欠かせません。

あなたのチームでは、どのくらい1対1のコミュニケーションが起こっていますか?

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