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「アカウンタビリティ・ギャップ」を短くする

「アカウンタビリティ・ギャップ」を短くする
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世界トップ20のリーダーシップ開発会社として知られるVital Smarts 社は、「アカウンタビリティ・ギャップ=組織における沈黙の長さ」という面白い概念の研究をしています。(※1)

「アカウンタビリティ・ギャップ」とは、問題を特定してから議論するまでの「タイムラグ」を意味します。

Vital Smarts 社のデイビッド・マックスフィールド氏とスティーヴ・ウィリス氏によれば、「ビジネス上の人間関係、チーム、組織の健康は、問題を見つけてから議論するまでの『タイムラグの平均』と相関している」とのこと。

タイムラグが長くなる、つまり「アカウンタビリティ・ギャップ」が大きくなるほど、「ビジネス上の人間関係」や「チーム」そして「組織」の健康が損なわれるということです。一方で、「アカウンタビリティ・ギャップ」が短い企業では、社員はより早く声を上げ、お互いをアカウンタブルにしているといいます。それゆえ、企業が成功するためには、社員が「その場で、その瞬間に発言する」能力が必要であるというのです。

半数以上が発言にためらう理由

にもかかわらず、彼らの調査によれば、次のような結果が出ています。

  • 52%の社員は、不適切な対応、細部への注意力の欠如、未完了の仕事などの同僚のパフォーマンスの問題について話すことをためらう。

  • 55%が、誰か(またはグループ)が、「悪い戦略的選択」をしたと思ったときにでも、それについて議論するのをためらう。

なぜ発言をためらうのでしょうか。

もっとも大きな理由は、そのことに言及することで起こるかもしれない「反目」や「敵対」という「対立」の図式を生むことに対する恐れです。

では、「アカウンタビリティ・ギャップ」を短くするために、社員が「対立」のリスクを越え、率直に意見を伝え合う環境をつくるために、リーダーにできることにはどんなことがあるでしょうか。

「対立」を選ぶとは

グーグル会長のエリック・シュミット氏は、「会議中は、自分と異なる意見の持ち主を積極的に探す」と述べています。また古くはエイブラハム・リンカーンも、「ライバルからなるチーム(Team of Rivals)」として、自分の意見に反する内容であっても自信をもって意見してくる人々を選んでチームを構成したといいます。シュミット氏もリンカーンも、あえて「対立」を生むことを選んでいます。(※2)

彼らはなぜ、そのような態度を選んでいたのでしょうか。それは、シュミット氏やリンカーンは、自身の属する組織や国が目的を達成するためには「対立」つまり「異なった意見を闘わせる」ことに意味があると解釈していたからだと思います。

グーグルの「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにする」というミッション、リンカーンの「人民の、人民による、人民のための政治」という政治理念、彼らはその実現に向けて、自分と同じ人の意見を聞くばかりでは、ブラインドスポットができてしまうことを知っていたのでしょう。異なる意見に耳を傾けることを避けていれば、ブラインドスポットを放置することにつながり、結果的には組織運営が危うくなってしまいます。

そこで、あえて異なる意見の人とも、進んで議論を闘わせる環境を用意した。そこでの「対立」が「新たな視点や価値」を生み、会社や国家の存続を可能にすると信じていたからだと思います。

つまり、彼らにとっての「対立」とは、「敵対や反目を生むもの」ではなく、「新たな視点や価値生むもの」という意味づけられていたのです。それゆえ「対立」は避けるべきものではなく、歓迎すべきものとなり、結果として卒直なコミュニケーションが交わされる可能性が高まったといえると思います。

「対立」に対する意味づけの更新

組織内のメンバーが、もし、「対立」に尻込みをして卒直なコミュニケーションができていないと思ったら、

「対立の何を恐れているのか?」
「対立することの価値は何なのか?」
「対立は、必ず人間関係を悪くするものなのか?」

といった「問い」を真ん中において、お互いに対話をしてみることをお勧めします。「対立」に対して、「反目」や「敵意」以外の意味を見出すことにつながるかもしれません。

「アカウンタビリティ・ギャップ」を短くするためには、組織内の「対立」に対する意味づけを見直し、新たな意味を見い出すことがひとつの方法だと思えます。

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【参考資料】
※1 “LONG SILENCES AT WORK: COMPANIES STRUGGLE WHEN EMPLOYEES DON’T QUICKLY SURFACE PROBLEMS OR CONCERNS” VitalSmarts, Jul 11, 2018
※2 「レッドチーム思考 組織の中に『最後の反対者』を飼う」(文藝春秋)ミカ・ゼンコ Micah Zenko(著)、 関 美和 (翻訳)

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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