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「シェアード・リーダーシップ」と「主体化」

「シェアード・リーダーシップ」と「主体化」
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先日、弊社のコーチング・プロジェクトを数年にわたり継続して導入してくださっている、ある企業の役員の方からうれしいお話を聞きました。

「コロナ禍で、見通しのつかない状況下、この時期、何が正解かがわからない。そんな状況でも、現場のメンバーが、自ら活動のイメージを描き、提案し、主体的に動いてくれた。

いわば、現場のメンバー一人ひとりがリーダーシップを取りながら、互いに啓蒙し合っていた。これは『会社を変えるために、日々、あなた自身は、何を変えていくのか』と、問い続けてきたコーチング・プロジェクトの成果の一つだと思う。」

シェアード・リーダーシップとは

近年注目されている「シェアード・リーダーシップ」という概念があります。

従来のリーダーシップ理論は、特定の一人がリーダーシップをとり組織を率いていくという前提に立ったもので、そこには「リーダーとフォロワー」という「関係性」があります。

一方で「シェアード・リーダーシップ」とは、「組織内の複数の人間、時に全員がリーダーシップ」を取るという考え方です。従来のリーダーシップの関係性は「垂直型」で「シェアード・リーダーシップ」は「水平型」の関係性になります。

「シェアード・リーダーシップ」という概念を具現化している組織の一つに、ニューヨークを拠点とする「オルフェウス室内管弦楽団」があります。オルフェウス楽団に指揮者は存在しません。楽曲ごとにリーダーを選び、そのリーダーが「楽曲の解釈」する。各メンバーすべてに対等の発言権があり、リーダーの解釈に対して意見を交わしながら、最終的に演奏ができあがっていきます。彼らはそうしたアプローチで、世界最高水準の演奏を可能にしています。彼らの演奏のつくり方には、メンバー各自が楽曲の解釈やプログラムづくりに主体的に関わり、個々の才能や意欲、献身、創造性などを引き出すプロセスがあるのです。(※1)

それでは、なぜ、近年「シェアード・リーダーシップ」が注目されているのでしょうか?

イノベーションは「知の交換」から生まれる

現在、多くの企業が何らかのイノベーションを求めています。新しい「知」を生み出すことが最も大切な企業のエンジンだからです。新しい「知」は何もないところから突然生まれるわけではなく、「既存の知」と「既存の知」との組み合わせで実現します。そして、その前提には、組織を構成するメンバー間で活発に「知の交換」がされていることが重要です。

その際に「すべてのメンバーがリーダー」である組織のほうが、「この組織は自分の組織である」という意識をメンバー全員が持ちやすく、結果として、知の交換が起こりやすくなります。

入山章栄氏は『世界標準の経営理論』の中で、「シェアード・リーダーシップ」に関する米国の自動車メーカーでの研究を紹介しています。そのメーカーでは、「社内改革のための知恵を出し合う」という目的の下、社内横断的に71のチームが結成され、各チームのリーダーシップが従来型のリーダーシップか、「シェアード・リーダーシップ」型かが特定されました。6ヶ月後の各チームのパフォーマンスを計測したところ、経営陣や顧客評価の両者において、「シェアード・リーダーシップ」型のチームの方がパフォーマンスが高いと判定されました。(※2)

すべては自分次第

さて、私は「シェアード・リーダーシップ」という概念が成立するための前提条件が一つあると考えています。それは、メンバー各人に「主体化」という在り方が求められていることです。

ここでいう「主体化」とは、「自分の有している価値観でその組織の価値観や存在意義を見つめたうえで、その組織が自分の居場所であると選択する行為」と言えます。自分で自分の居場所を選択したのですから、その居場所をよくするのも、悪くするのも自分次第という在り方です。

すなわち、「主体化」している人は、その組織や目標に自ら影響を与えているという自覚をもち、活動している人です。ある意味、リーダーとは「主体化」している人であると言い換えてもいいかもしれません。

ですから、組織の中に、「主体化」の連鎖を起こし、リーダーと言われる人を物理的に増やしていくことが、組織の成功につながります。

* * *

「シェアード・リーダーシップ」は、有効な概念だと思います。でも、その前提には、メンバー一人ひとりがいかに「主体化」しているかということが包摂されているのではないでしょうか。

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【参考資料】
入山章栄著『世界標準の経営理論』ダイヤモンド社(2019年)
※1 ハーヴェイ・セイフター&ピーター・エコノミー 著(鈴木主税 訳)『オルフェウスプロセス―指揮者のいないオーケストラに学ぶマルチ・リーダーシップ・マネジメント』角川書店(2002年)
※2 入山章栄著『世界標準の経営理論』ダイヤモンド社(2019年)(文中で紹介したリサーチの原典:Pearce, C. L., &Sims,H. P.,Jr.(2002).Vertical versus shared leadership as predictors of the effectiveness of change management teams: An examination of aversive, directive, transactional, transformational, and empowering leader behaviors. Group Dynamics:Theory Research ,and Practice ,vol 6,pp172-197 )

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