Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。
双方向のコミュニケーションのつくり方
コピーしました コピーに失敗しました「止まって、今のコミュニケーションが双方向かどうか自分に問う」
これは、コーチ・エィが提供する「3分間コーチ」の主題となる「問い」の一つです。
組織活動のほとんどは、コミュニケーションによって成り立っており、コミュニケーションのあり方が変わらなければ、組織を変えることはできません。
企業が人材に求める能力のランキングでは、常に「コミュニケーション能力」が上位に入ります。そのためか、世の中では、プレゼンや営業などでのコミュニケーションを学ぶために「傾聴のスキル」や「効果的な質問の方法」「褒め方」などのさまざまなスキルトレーニングが提供されています。しかし、スキルを学んでも「使わない」「使えない」ことが多く、その効果はかなり限定的なものです。
営業場面でのコミュニケーションの目的は?
たとえば、「営業場面で顧客と話す目的は、相手に自分の思っていることを正確に伝えることだ」と考える営業担当者は、たくさんの資料を用意し、顧客に対して詳しい商品説明をするでしょう。
つまり、顧客とコミュニケーションを交わす目的が「情報を正確に伝えること」であれば、相手の話を聞くよりは、自分が話すことに一生懸命になるに違いありません。この営業担当者が「傾聴のスキル」を学んでも、彼の営業場面でのコミュニケーションの目的が変わらない限り、そのスキルは宝の持ち腐れになってしまいます。
「双方向のコミュニケーション」とは?
「3分間コーチ」は、「コミュニケーションの目的やコミュニケーションに対する理解が変わらなければ、実際のコミュニケーションは変わらない」というコンセプトに基づくワークショップです。
ワークショップ参加者の事後アンケートでは、大多数の参加者が「コミュニケーション」に対する解釈が変化したと回答しています。
そして、気づきのあったテーマについては「双方向のコミュニケーション」が第一位に上がります。
先に述べた通り、組織活動のほとんどは、コミュニケーションによって成り立っています。そして、その活動のすべては、組織をドライブさせることに向けられています。一人ひとりが組織の一員として、自分の意見やアイディアを出し合い、「対話」することによって、新しい意味やアイディアを創造する。「双方向のコミュニケーション」による「対話」は、組織をドライブさせるための必須の要素なのです。
「聞こう」と思うだけでは双方向にならない
ワークショップの中では、そもそも「双方向のコミュニケーション」というものをどのように理解しているのか? など「双方向のコミュニケーション」についての「3分間の対話」が繰り返し行われます。
あるとき、参加者の一人であるYさんから、こんな発言がありました。
「職場での1on1ミーティングで、私は部下の話を聞こうと思っているのに、部下が沈黙してしまうことが多く、聞こうと思っているだけでは双方向にならない」
Yさんに「双方向のコミュニケーション」についてどう思っているかを聞いてみると、
- Aさんが話す、Bさんが聞く、Bさんが話す、Aさんが聞く、を繰り返すこと
- キャッチボール
- 話すだけでなく、聞き役にもなる
- お互いに理解しあうために大切なこと
- 両者が話し手、聞き手、になれば双方向になる
などなど。
Yさんは、その後、ワークショップで「双方向のコミュニケーション」についての対話を続ける中で、部下とのミーティングにおいて自分は双方向にしているつもりでも、実は双方向にはなっていない瞬間が多いことに気づいたと言います。
- 「一方が質問し、一方が答える」という繰り返し、役割の交代はない
- 両者が話してはいるが、お互いに聞いていない
- こちらは聞くつもりでも、相手が話さない
など、双方向にならないことが多い。最後に、Yさんは次のように語ってくれました。
「今まで、自分が聞き役になれば、部下は話す。そうすれば自動的に双方向のコミュニケーションになると思っていましたが、部下にもこの双方向のコミュニケーションに参加してもらうこと、言い換えれば、部下に双方向のコミュニケーションを一緒につくるという意図を持ってもらうことが大切なのではないかと思いました」
相手をコミュニケーションに招き入れる
双方向のコミュニケーションは、自然に起こるわけではありません。まず、自分が双方向のコミュニケーションをつくるという意図を持つ。
そして、相手を今目の前にあるコミュニケーションに招き入れ、相手にも双方向のコミュニケーションをつくる意図を持ってもらうことが重要なのです。
Yさんからは、ワークショップ参加後しばらくしてから連絡がありました。
「双方向のコミュニケーションに対する理解が深まったことで、自分自身のコミュニケーションの取り方が具体的に変化したと思います。
今のコミュニケーションが双方向かどうか、いつも意識するようになりました。
ここまで話して、どう思いますか?
私の話し方について気が付いたことがあったらフィードバックしてください。
今の話について、質問やわからないことがあったら聞いてください。
など、相手を、『今、ここにあるコミュニケーション』に招きいれるための『問いかけ』が確実に増えました」
* * *
「止まって、今のコミュニケーションが双方向かどうか自分に問う」
今、あなたのコミュニケーションは、双方向になっていますか?
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【参考資料】
※ 3分間コーチの参加者394人(12社21回のワークショップ)を対象とした調査( 調査内容:ワークショップ後のアンケート /調査期間:2020年6月~2020年10月) コーチング研究所 2020年
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