Coach's VIEW

Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。


変革の仲間を創り出す

変革の仲間を創り出す
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『Whyから始めよ』の著者サイモン・シネックの著書に、『一緒にいたいと思われるリーダーになる 人を奮い立たせる50の言葉』という絵本があります。リーダーシップに関する絵本です。

この本には、そのタイトルの通り、人を奮い立たせる(原文ではInspireという言葉が使われています)50の言葉がちりばめられています。

好きな言葉はいくつもあるのですが、特に私が好きなのが次の3つです。(※)

「ひとりでは何もできない
だからひとりでできるというふりをしてはいけない」

「失敗はひとりでできる
成功はほかの人の助けなしにできない」

「早く着きたいなら、ひとりで行け
遠くまで行きたいなら、みんなで行け」

この3つからわかるのは、リーダーには仲間の存在が不可欠ということです。

このコラムを読んでいるみなさんも、実現したいこと、成し遂げたいことがきっとあるのではないかと思います。それを成し遂げるための、あなたの仲間は誰でしょうか? 今、誰の顔が浮かんでいますか?

リーダーがよくなれば、組織は変わるのか

ビジネスの世界において、コーチングは長い間、個人の能力開発に焦点が当たってきました。
優秀なリーダーをもっと優秀に。または、いわゆる問題児を何とか良い状態に。

その前提には、リーダーがよくなれば、そのリーダーの率いる組織はきっとうまくいくという考え方があります。

ゴルフのような個人スポーツの場合、個人の能力が高まれば、結果として成績につながりやすいでしょう。しかし、チームを組んで仕事をすることの多いビジネスの世界では、相互に影響し合い、協力し合い、前進を創り出すことが求められます。

そのような状況で、リーダー個人の能力が高くなるだけで、本当に組織全体がうまくいくのでしょうか。

「全体性」を背景とするシステミック・コーチング™

コーチ・エィの「システミック・コーチング™」は、誰か一人だけではなく、「みんなで変わる」という「全体性」を背景にした組織変革のためのコーチングモデルです。「全体性」を背景に、

  • 組織の何を変えるのか?
  • あなた自身はどう変わるのか?

といった問いを含む「組織変革に向けた4つの問い」を軸に展開します。

組織変革に取り組む中で、「自分こそが組織を変えるリーダーである」と目を覚ます人を創り出していくプロセスです。

エグゼクティブ・コーチングのクライアントであるA氏は、消費財メーカーのトップです。彼の会社は競合ひしめく厳しい競争環境にあり、二代にわたってカリスマ的なトップが会社を率いてきました。A氏自身「トップが答えを出し、それに従う」という文化の影響を強く受け、そうしたリーダーシップをとってきました。しかし、会社が直面する問題の数が増え、複雑化していく中、A氏は自分だけが答えを出すスタイルに限界を感じるようになりました。

「今のままでは、スピードが上がらない。一人ひとりが、自分が答えを出すというオーナーシップを持ってほしい」

そんな背景で、A氏の会社ではシステミック・コーチング™がスタートしました。

問い続けることで、文化を変える

A氏は、2つのことから始めました。

  • 部下が答えを求めたときに、すぐに答えを出さずに「あなたはどう考えるのか?」を問う
  • 部下からの報告に終始していたミーティングで、「次は何をやりたいのか?」を問う

とは言え、染みついた文化がそう簡単に変わるわけもなく、A氏が問いかけても黙り込んでしまったり、「考えます」と言って、そのまま1週間アクションがなかったり。むしろより時間がかかる結果になっていました。「何とかスピードを速めることはできないか?」と焦るA氏から相談を受けました。

「あなたが私に問いかける4つの問いを、私が社内のリーダーたちに問いかける。同時に、あなたからも直接彼らに同じことを問いかけてくれないか?」と。

そこで、A氏が選んだキーパーソン数名に対して、約1ヶ月間のコーチング・プログラムを提案し、実施することにしました。それは、先に挙げた「組織変革に向けた4つの問い」を問いかけるコーチングセッションと、自身のリーダーシップに関するアセスメントを組み合わせたプログラムです。

キーパーソンに対するコーチングのプロセスで明らかになったのは、彼ら自身も「このままでいいはずがない。変わらなければいけない」と思っていたということです。ただそれを「どのように表現するのか」、また「本当に表現していいのか」わからなかっただけでした。

このプログラムを経て、A氏の会社では以下のような変化が見られるようになりました。

  • キーパーソンが語る際の語尾が、「~すべき」から、「~したい」に変わった
  • キーパーソンが語る際の主語が、「会社は、~」から、「私は、~」に変わった

複数の人から何度も問われるプロセスは、キーパーソンたちが「自分の考えを求められているのだ」と認識するために必要なプロセスだったのではないかと想像します。

「もちろんまだ大きな行動変容までは至っていない。でも彼らが目を覚ましてくれた手応えはある。もう少し問い続けることにします」

と、A氏は言います。

A氏と共に取り組んだこのプロセスは、組織の中に、A氏の変革の仲間を創り出す効果がありました。

* * *

あなたは何を成し遂げたいですか? 何を実現したいですか?
それを成し遂げるために、あなたには何人の仲間がいますか?
その仲間に、何を問いかけたいですか?

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【参考文献】
※ サイモン・シネック (著)、イーサン・M・アルドリッジ (作画)、鈴木義幸(監訳)、こだまともこ(訳)、『一緒にいたいと思われるリーダーになる 人を奮い立たせる50の言葉』、ダイヤモンド社、2019年

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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