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挑戦は「ありがとう」から

挑戦は「ありがとう」から
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Language: English

2020年も、「挑戦」に立ち向かう多くのお客様とご一緒させていただきました。

「挑戦」とは、安全な場所から、予測のつかない未来に自分の意思で一歩踏み出すことです。

一歩踏み出したその先には何があるのかわかりません。
予測もつかないことに巻き込まれるかもしれません。
厄介を背負い込むことになるかもしれません。

成功するとは限りませんし、失敗の代償を想像して躊躇も生まれます。そんな中、私がご一緒したリーダーたちは、どうやってその勇気ある一歩を踏み出したのでしょうか。

人との関わりから勇気をもらう

私のクライアントである大手メーカーのAさんも、2020年に挑戦に取り組んだお一人です。Aさんは会社から大きな挑戦を任されていたものの、なかなか成果の出せない時期が続きました。そんな中、コーチングにおいて、Aさんの上司である社長にフィードバックをもらう機会がありました。

Aさんに対するフィードバックの内容は、とても厳しいものでした。レポートを目にしたAさんは口を開くなり「上司はわかっていない」「これは誤解だ」と繰り返しました。しかし、フィードバックの最後にあった「お前にしかできないことをしろ」という一言を見て、Aさんはふと黙り込みました。そしてしばらく考えた後、「直接、上司にフィードバックの真意を確認する」とおっしゃったのです。

それまで「自分を守る」ことに向いていたAさんの関心が、相手に向いた瞬間でした。

上司と直接話すことで、Aさんは、自分がどんな期待をされているかを知ります。その後のセッションでは、上司のビジョンに共感する発言も増え、自分の目標のためにどうやって上司の力を借りるのかについて話すようになっていきました。そして、Aさんは、打って変わって楽しそうに挑戦に取り組むようになったのです。

その一連のプロセスの中で、Aさんにとって、上司が「敵」から「仲間」に変化していったような印象を受けました。

一歩前に踏み出すには

心理学者のアルフレッド・アドラーは、著書『人生の意味の心理学』の中で、対人関係や仕事に対して、次のような二つの姿勢があることを説明しています。

「人生は、危害に対してバリケードで自分を守り、無傷で逃れることによって自分自身を守ることである」

「人生は、仲間に関心を持ち、全体の一部であり、人類の幸福に貢献することである」

前者は人生の課題に立ち向かうことを避ける姿勢を、後者は人生に積極的に関わっていく姿勢を、つまり人生の課題に直面する勇気をもつ姿勢を示しています。これら二つの姿勢は、私たちが他者をどう見るかにも関係します。

前者の立場をとれば、他者が「厄介なことを引き起こす相手」に見えるかもしれません。後者の立場で見れば、他者は「仲間、味方」と見えるのではないでしょうか。

私たちは、どちらの立場をとることもできます。しかし、いくらそのことを頭で理解していても、知らず知らずのうちに「危害」を恐れ、自分を守りたいという心理が働きます。それは、生物としては、生存確率を上げるというごく自然な反応だと言えるでしょう。

しかしアドラーは、後者の立場を取ることで、結果的に自分自身の幸福と他者の幸福に貢献することができると言います。以下はそのための3つのポイントです。

  • 自己受容(ありのままの自分を受け入れる)
  • 他者貢献(他者に貢献できることを知る)
  • 他者信頼(他者を信頼する)

前述のAさんの体験されたプロセスには、まさにこの3つが含まれていました。「自分を守る」という防衛的なあり方から一歩踏み出して他者と関わることは、Aさんにさらなる挑戦に立ち向かう勇気をもたらしたのではないでしょうか。

2020年の締めくくりに

挑戦を前にした私たちが、自分の安全地帯から一歩踏み出て、何かを実現しようと思うのであれば、他者との関わりを避けて通ることはできません。そのためにも、他者を「敵」ではなく、「仲間」や「味方」として見る視点が必要です。

『嫌われる勇気』の著者、岸見一郎氏は、これを促進するためにできることとして「ありがとう」の一言が効果的だと言います。「ありがとう」の一言は、相手の貢献を明らかにし、お互いの関係を上下ではなく対等にします。

2021年、私たちはこれまで以上の挑戦に立ち向かっていかなければならないでしょう。

その後押しをするためにも、まずは今年、誰からどんな貢献があったかに想いを巡らせ、そして今年のうちに、その相手に「ありがとう」を伝えてみてはいかがでしょうか。

それはきっと、その方にとって、また、あなた自身にとっても、これからの挑戦を勇気づける行為になるはずです。

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【参考資料】
アルフレッド アドラー(著)、岸見一郎 (翻訳)『人生の意味の心理学 上・下巻』(アルテ)、2010年
岸見一郎(著)『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)、2014年

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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