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持続する組織づくりのために大切な問いとは
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コロナ禍が長期化する中、「これからいったいどうなっていくだろう」と将来に不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。未来が不透明になる中、今、どんな問いが、私たちに光を投げかけてくれるでしょうか。
エコノミストであり、エグゼクティブコーチでもある Ashley Harshak氏は「『持続可能な組織』を構築するためには、3つの問いが有効である」と説きます。3つの問いとは、
「私たちは、どこへ行こうとしているのか?」
「私たちは何をしているのか?」
そして、
「私たちは何者なのか?」
という問いです。
なぜ、この3つの問いが、「持続可能な組織」を構築するために有効なのでしょうか?
現状をマネジメントし、未来を創造するより大切なこと
Harshak氏によれば、「私たちは何をしているのか?」という問いは、マネジメント・リソースを配分し、組織全体のパフォーマンスを最適化して、成果を出すことにつながる問いであり、「私たちは、どこへ行こうとしているのか?」は、ビジョン構築し、戦略を示し、ビジネス開発などをすることに関わる問い。そして、「私たちは何者なのか?」という問いは、他社との差別化や競争優位の源泉に結びつく問いだと言います。
「現状をマネジメント」し「未来を創造」し、競争優位性に導く「組織のアイデンティティ」を明確にすることが、持続可能性を高めるということです。
同氏は、多くの組織では「現状をマネジメント」し、「未来を創造する」ことにも腐心しているものの、「自身のアイデンティティ」に力を入れることはおろそかになりがちだと言います。つまり、「私たちは何をしているのか?」「私たちはどこに行こうとしているのか?」という問いには力を入れているものの、「私たちは何者なのか?」という問いは忘れられがちだということです。
一方で、Ashley氏は、経営者の多くが実はこの問いの重要性に気づいていることにも触れています。現場では忘れられがちな問いであるにもかかわらず、ある経営幹部は「ブランドを支える『文化』こそが、持続的であるための最大の防護壁である」と語りました。Ashley氏は、文化とはその組織が有している「存在意義」であるといい、だからこそ「存在意義」を問うことの重要性を説きます。
「私は何者なのか?」という問いがもたらすもの
実は、私自身がコーチングをする際にキーになる問いの一つに、クライアントの存在意義を問うものがあります。クライアント自身に「私は何者なのか?」という問いについて考えてもらうのです。
今まで描いてきた「物語」で未来を描くことが難しくなる中、改めて「私は何者なのか?」という「存在意義」への問いは、新しい物語をつくるきっかけになります。たとえば、こんなストーリーだとわかりやすいでしょうか。
勝つことに執着していたアスリートが、ケガを契機になかなか勝つことができなくなり、未来が見えなくなって挫折する。そんな中、自身の「存在意義」を「パフォーマンスを通して人に勇気を与えることだ」と再認識し、再起を果たす。
このように「自分は何者なのか」に対する自分なりの意味づけが、新たな「物語」を作るきっかけになるのです。
「組織の存在意義」と「個人の存在意義」がつながっているか
Ashley氏の説くように、組織の「存在意義」を明確にすることは持続可能な組織づくりにとって、重要な要因です。しかし、それと同時に大切なのは、個人の「存在意義」も明らかにすることだと思います。
個人の「存在意義」が明確で、それが、組織の「存在意義」とつながっていれば、個人は、組織で起こることを自分事として捉え、結果、組織は持続し、発展していくように思えます。
医療機関に勤務する私の知り合いの一人は、「患者さんの健やかな生活を守る」という「組織の存在意義」と、彼自身の「患者さんの未来の幸せをサポートする」という「自身の存在意義」がほぼ一致しています。それ故、彼の仕事への情熱や組織への貢献も高いものとなっています。
一方で、自身の「存在意義」が明確でない、あるいは、あまりに組織のそれと乖離している場合は、その組織に属していながら組織内で起こることは他人事になり、また、自身の業務に対するモチベーションを維持することも難しいものとなるでしょう。
そこには、個人の「存在意義」を明確にし「組織の存在意義」と接続するような作業、つまり対話が必要なのではないでしょうか。
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「持続的な組織」を構築するためには、3つの問いを大切にすること。特に「私たちは何者であるのか?」という問いを忘れないこと。そして、個人の「存在意義」と組織の「存在意義」をいかに接続していくかが、重要なポイントになります。
先行きが不透明になる中で、リーダーには、改めて「組織の存在意義」を問うとともに、自分自身、そして周囲の人たちに向けて「存在意義」を問いかけていくことが求められているのだと思います。
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【参考資料】
Ashley Harshak, “CHANGE TODAY, THRIVE TOMORROW”, January 30, 2020
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