Coach's VIEW

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今のコミュニケーションが未来につながる

今のコミュニケーションが未来につながる
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Language: English

クライアントのA氏のエグゼクティブ・コーチングのゴールは、「共創する組織をつくる」ことです。A氏は「社員全員で未来を共創する組織」を目指したいと考えていらっしゃいます。A氏がこだわっているのは、「共に何かを創り出し、部分の総和以上のものをアウトプットする」という「共創」のコンセプト。なぜなら、A氏には自分の会社の文化が、「共創」と真逆に見えたからです。

A氏の会社は親会社からトップがやってくることが慣例となっており、A氏は初めての生え抜きの社長でした。これまでは「親会社」の存在があったせいか、

  • トップの意向に従う
  • トップの持つ答えに当てに行く

つまり一つの「正解」に合わせて全体が動いているような雰囲気があったのです。

A氏は、目指す組織の姿について経営チームとも話し合ったうえで、その実現に向けて自らのリーダーシップを高めることをテーマに、コーチングをスタートしました。

しかし、コーチングが始まってしばらくすると、A氏が浮かない表情をして現れることが数回続きました。そして毎回「何度言っても伝わらないんだ...」と、頭を抱えるのです。

「何度言っても伝わらない」の後ろにあるもの

何回かその言葉を耳にした私は、違和感を覚えて、A氏に問いかけました。

「Aさんは、毎回『何度言っても伝わらないんだ』と言いますが、その言葉は、Aさんのどのような考え方からきているのでしょうか?」

私の問いかけに、A氏は最初、何か言いたそうな表情をしたものの、苦笑いをしながら言いました。

「結局、私も、これまでのトップと変わりませんね。『共創』と言いながら、私の答えが正しくて、それに従わせたいと思っている」

さらにA氏は続けました。

「実は『何度言っても伝わらないんだ』というセリフは、経営チームの議論でもよく出てきます。でも、まず私たちが変わらないと、共創する組織は実現できませんね」

コミュニケーションが変わらなければ、人の意識も組織も変わらない

A氏の言葉を聞いて思い浮かんだのは、「コミュニケーションが変わらなければ、人の意識も組織も変わらない」というコーチ・エィの組織変革の哲学でした。

組織の活動のほとんどはコミュニケーションによって成り立っている。
したがって、コミュニケーションが変わらなければ人の意識も組織も変わらない。

私たちは、「今、コミュニケーションについて理解していること」以上のコミュニケーションを交わすことはできない。

コミュニケーションが変わるということは、コミュニケーションに対する理解、捉え方、目的が変わるということ。

コミュニケーションに対する理解と目的が変われば、その結果、人との関わり方やコミュニケーションの交わし方が変わる。

コミュニケーションの目的や理解が変わる、とはどういうことでしょうか。

たとえば、「ほめると、人はモチベーションが上がる」と思ってしている人は、相手のモチベーションを上げることを目的に相手を「ほめる」でしょう。一方、「ほめると、人はつけあがる」と思っている人もいます。この人の場合は、もしかしたら相手をほめないかもしれません。

同じ「ほめる」という行為に対しても、どう理解しているかによって、行動が変わります。逆を言えば、理解が変わらなければ、行動も変わりようがないわけです。

つまり、人の意識や行動を変えるには、自分たちのコミュニケーションがどういう前提に基づいているのかを理解し、どうしていきたいかを考える必要があります。

自らの「コミュニケーション」について振り返る

A氏の目指す組織の姿を実現するには、まず、組織で交わされるコミュニケーションを見つめ直す必要があるのではないか。そう考えた私は、経営チーム全員でコミュニケーションを振り返る機会をもつことを提案しました。経営メンバーの合宿をその機会とすることが決まりました。

A氏は、数週間後に予定されていた中期経営計画等を話し合う役員合宿の内容を変更し、役員全員でコミュニケーションについて振り返る時間にすると決断されました。

合宿の初日、A氏は経営チームメンバーに対して宣言しました。

「この役員合宿は、もともと会社の未来を考えるための時間として予定していた。でも、未来について語り合う前に、現在の私たちの状態を見つめなおす必要があると考えた。それは必ず未来につながる。この機会を未来に向けて、私たちが変わる機会にしよう。私も変わる」

合宿では丸一日をかけて、役員全員で以下のようなテーマの対話を通して、自分たちのコミュニケーションを振り返りました。

  • 自分のコミュニケーションの目的は何か?
  • 一方通行と双方向は何が違うのか?
  • どのようなコミュニケーションが交わされていれば会社の変革は進むのか?
  • 生産的な対立とはどのようなものだと思うか?
  • 共創とは何か?
  • 会社の変革に向けてあなたは自分のコミュニケーションの何を変えるのか?

合宿後、役員からは次のような声が聞かれました。

「対立は面倒だと感じ、避けようとするが、早い段階で対立を起こし、解決策を一緒に検討するほうが、より良い結果につながると確信した」

「全員が会社のためを思って『自分はこう思う』と、まず自分の考えを口に出すところから対話が始まる。自分も口に出すが、部下にも口に出してもらえるような関わりを、自らすることが大事」

A氏によれば、この合宿を経て、会議でのコミュニケーションに変化が現れたそうです。これまでは、現場の担当者から提案が挙がってくる際には、いくつかの選択肢が提示され、経営陣が決定するというのが通例でした。しかし、最近は経営陣から担当者に「あなたは、どうしたいんですか?」と問う場面が増えてきているといいます。

すべて「トップが決める」というそれまでの社風から、「共創する組織」に向けて、一人ひとりが自ら考える組織への変化の手応えを感じているとAさんは話してくれました。

あなたは、組織にどのような変化を起こしたいですか?
そして、あなたのコミュニケーションの目的は何ですか?

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