Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。
「フィードバック」がもたらすもう一つの価値
コピーしました コピーに失敗しましたエグゼクティブ・コーチングの成果に関する調査で、成果の一つとして「コーチングを受けたエグゼクティブが、フィードバックを受容するようになる」という項目があります(※1)。ここでいう「フィードバック」とは、「目標に向けていち早く軌道修正するために周囲からもらう情報」のことを意味します。
「フィードバックを受容する」とは、エグゼクティブが「フィードバックを受け取る」ことを意味します。「フィードバックを受け取る」ことは、エグゼクティブ自身のブラインドスポットをなくすことにつながり、目標達成に向けて自身の言動・行動などの軌道修正が可能になるという効果があります。しかし「フィードバックを受容する」とは、単に「フィードバックを受け取る」ことにとどまりません。それは、エグゼクティブ自らが「フィードバックを求める」という行動にもつながっていくのです。
フィードバックは、する側にとっても価値がある
ここに「フィードバック」というコミュニケーションがもたらす、もう一つの大事なポイントが存在します。実は「フィードバック」は、「フィードバックを受け取る」側だけでなく、「フィードバックする」側にも、あるポジティブな変化を起こします。「フィードバックする」という行為は、その人自身の主体性を高める効果があるのです。
人から「フィードバックを求められる」という体験は、その人にとって自分の存在価値を実感する体験であり、自己効力感の向上につながります。その自己効力感の高まりが、「フィードバック」する相手や、その人が取り組んでいることに対して自ら主体的に関わっていこうという意識を高めるのです。
しかし「フィードバック」することにはリスクが伴います。なぜなら、その内容が相手にとって耳の痛いことだった場合、今までの関係性が損なわれるかもしれないからです。しかし、そのリスクを自ら選択して他者に関わろうとする体験が、相手に対する「責任」ともいえる感覚を生じさせます。そこに、主体的な在り方が浮かび上がるのです。
実際に、コーチング研究所の調査では「コーチがクライアントにフィードバックを求めること」と「クライアントが主体的に行動を起こしていること」には相関が認められており、「フィードバックする」ことと「主体的な行動」の関連を示唆していると考えられます(※2)。
「働きがい」はどこから生まれるか
Great Place to Work® Institute Japan(※3)による「働きがいのある会社」の中規模部門(100~999人)で3年連続でランキング1位を受賞しているコンカー社という会社があります(※4)。コンカー社では、経営陣を含め「フィードバックしあう文化」が定着していると言います。
社員が主体的に考え、行動し、日々働きがいを感じるためには、社員同士がお互いに刺激しあって成長すること。そのためには、何か問題意識があれば、オープンにフィードバックし合うことが必要だとコンカー社の三村真宗社長は説きます。
コンカー社では、管理職も部下からのフィードバックを求めることを意識しており、社長自らも、部下に対して「いい機会だから、私や会社へのフィードバックをください」と伝えています。
上司である三村氏から「フィードバックを求められた」部下たちは、三村氏に「フィードバックをする」という行為を通して、自らの仕事に対する姿勢やリーダーシップに向き合い、より主体的になっているのではないでしょうか。その結果が「働きがいのある会社」という意識につながっているように思えます。
そうであるならば、
「どうして、私たちは戦略の実践に至らないのだろうか。教えてほしい」
「私が見落としていることは、何だろうか」
「目標達成に向けて、私が変えたほうがよい行動とは何だろうか?」
など、リーダー自らが起点となって周囲に「フィードバック」を求める関わりが、目標達成への軌道修正ばかりでなく、メンバーを主体的にさせ、組織の活性化を構築する第一歩になるのではないでしょうか。
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【参考資料】
※1 『クライアントが実感するエグゼクティブ・コーチングの効果』 調査期間 2013年1月~2014年10月/コーチ・エィが提供する「エグゼクティブ・コーチング」を受けた107名を対象に実施したアンケート調査に基づく。
※2 アセスメント:調査期間:2015年10月~2020年5月/コーチング・プログラム参加者3,930名に対する、コーチングを受けた周囲の人17,037名の回答にもとづく。
※3 Great Place to Work® Institute Japan(株式会社 働きがいのある会社研究所)
※4 d's JOURNAL 「『働きがいのある会社』3年連続1位。経営陣も含めたメンバー同士がフィードバックして成長し合うコンカーの企業文化とは?」 2020年6月25日
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