Coach's VIEW

Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。


あなたにとって、部下はどんな存在ですか?

あなたにとって、部下はどんな存在ですか?
メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

2020年3月にタイに赴任しました。当社のバンコク拠点は、アセアン・オセアニアエリアの日系企業を中心に対話型組織開発プロジェクトを多数展開しています。クライアントのほとんどが日系企業であるため、プロジェクト導入の決裁者である経営トップの多くは日本人。赴任早々、タイオフィスの中心であるタイ人のメンバーからは「私たちタイメンバーが、日本人経営者とプロジェクト契約を合意することはかなり難しい」という話を聞きました。

実際に営業活動を進めていくと、たしかに日本人の経営トップとの交渉は、自分が担うほうがよいと考えるようになりました。タイ人メンバーにできない領域を自分が引き受け、みんなには、それぞれの力を発揮できる領域で活躍してもらおうと考えたのです。

そこで、赴任してからというもの、私は日系クライアント企業の経営者と対話し、変革のストーリーを創造することに全力を注ぎました。メンバーには決まった内容を共有し、その実行のプロセスを指示するという仕事の進め方の流れができました。

「一緒にやっている感じがしない」

ところがしばらくして、スタッフから「望月さんとは一緒にやっている感じがしない」という声が上がりました。他のメンバーからも「方針は聞いたけれど、プロセスが見えない」「積極的に情報共有してくれるようになったけど、私たちは参加していない気がする」「望月さんは本当にいつも予定がパンパン。私たちに手伝えることはないですか?」といった声が聞こえてきます。

これはショックでした。というのも、自分では、ベストな役割分担でいいコラボレーションができていると考えていたからです。

「部下」をどう見ているか?

何がいけないんだろう? 一人で考えていても堂々巡り。そこで、上司に相談したところ、次のような問いを投げかけられました。

「そもそも望月さんにとって、メンバーって、どんな存在なの?」 

この問いかけにはドキッとしました。「メンバーにどう関わっているか」ではなく「メンバーをどのような存在と意味づけているか?」そんな視点では考えたこともありませんでした。 

タイのメンバーは自分にとって、どんな存在なのか。

振り返ると、それは自分の考える「リーダーと部下の関係」に基づいているように思えました。私自身の抱く理想のリーダー像とは「情報網を張り巡らせ、自分で考え抜いて方針を示し、どう動くかまで計算し、的確に指示し、徹底的に実行させる人」でした。そして、そのリーダー像からイメージする「部下」とは、リーダーからの指示を、確実に遂行してくれる存在です。拠点長である自分がリーダーだとすれば、タイ拠点のメンバーは「部下」です。だからこそ、私もメンバーを「サポートしてくれる人」と位置づけ、自分は責任をもってビジネスを決め、メンバーに指示するという行動を無意識のうちに選んでいたわけです。

上司からの問いかけで、前職時代の経験から抱くようになった自らのリーダー像に無意識に影響を受けていたことに気づき、改めてメンバーとどんな関係を築きたいかを考えるようになっていきました。

「部下」から、ともに前進する「パートナー」へ

私たちコーチには、国際コーチング連盟(ICF)によるコア・コンピテンシー(※)というコーチングの指針があります。コンピテンシーには、コーチとしてのあり方が定義されており、その中に「コーチとクライアントはパートナー関係である」という表現があります。その言葉がヒントになりました。

コーチとは、クライアントのパートナーとして、クライアントがその能力を最大限発揮し、前進することに共に取り組む存在です。そうだとすれば、相手が部下であっても、その関わりのスタンスは変わらないのではないか。そう思いました。

実際に、メンバーたちは、言語の壁を越えて、私よりもはるかにクライアントの組織を理解しています。ある意味では、日本人である経営者の方々よりも、その組織について理解している可能性もある。彼らは私の指示に従って動く存在ではなく、一緒に知恵を絞ってくれる仲間なのだと改めて認識したのです。

パートナーであるためには、信頼関係が必要です。信頼関係を築くにはさまざまなアプローチがありますが、まず、私が変えるべきことは「リーダーはかくあるべし」という自らの価値観の押しつけでした。彼らの価値観を尊重しつつ、「お客様に最高のサービスを届ける」という共通の目的に向けて、ともにアイディアを生みだし、ともに実行の困難を乗り越えていく。共通の目的に向けた対話のパートナーとして、改めてメンバーと関係を築いていこうと考えました。

情報の共有や指示出しなど、私の行動そのものは以前と変わらないこともあります。しかし、私自身の意識が変わることで、メンバーの反応が変化したことを感じています。メンバーからは創造的なアイディアがどんどん出てくるようになり、これまでは自分がそれを止めていたのかもしれないとドキリともしました。

* * *

組織のトップは、日々様々な問題を解決しながら、中長期のビジネスの発展、組織の成長を考え、手を打ち続けています。その中で出てくる悩みには、次のようなものが多く見られます。

  • 部下が動いてくれない
  • 部下が受け身で指示を待っているように見える
  • 私のやりたいことがなかなか伝わらない 

もしかしたら、その裏側には私と同じようなテーマがあるかもしれません。

あなたは部下をどのような存在と見ていますか?
部下をパートナーとしてみることで、組織のパフォーマンスはどのように変わると思いますか?

この記事はあなたにとって役に立ちましたか?
ぜひ読んだ感想を教えてください。

投票結果をみる

この記事を周りの方へシェアしませんか?


※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

グローバルリーダー/駐在員 チームマネジメント/チームビルディング リーダー/リーダーシップ 上司/部下 信頼関係/関係構築 対話/コミュニケーション

コーチング・プログラム説明会 詳細・お申し込みはこちら
メールマガジン

関連記事