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私は正しい、あなたも正しい

私は正しい、あなたも正しい
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先日、以前から知り合いだった経営者のAさんにお会いする機会がありました。知り合った当時のAさんは、某大手メーカーの経営戦略を担う専務執行役員でした。現在は違う会社で経営者をされています。

昔話に花が咲く中で、Aさんが当時を思い出しながら話してくれたことは、私をはっとさせました。

「会社のため」か、「自分のため」か

Aさんは、上司と異なる意見であっても、自分が「正しい」と思ったことを進言するタイプのリーダーです。ある時、Aさんと社長であるBさんとの間で、会社の経営方針についての意見が対立しました。社長のBさんは、どうしてもAさんの意見を受け入れ難かったのだと思います。しばらくして、Aさんは戦略立案から外れ、異なる管掌となりました。その後、Aさんは現在の会社に移ります。

「いまになって、当時の私はどこかで社長の失敗を願っていたかもしれない、と思うようになりました。自分の意見が聞き入れられず、悔しかった。『会社のため』だと言って、自分の正しさを周囲に説いて回りましたが、実は、社長の失敗を願っていた気がするのです。それは『会社のため』ではなく『自分のため」ですよね。そんな自分にぼんやりと嫌気がさして、別の道を歩むことにしたんだと思います」

Aさんは続けました。

「あのとき『自分はプライドが傷つけられて、動揺してるのだな』と、もし気づくことができていれば、別の人生を歩んでいたかもしれません。『自分のため』なのか『会社のため』なのかの区別を自分でつけることができていたら、あの会社にもっと貢献することができたと思うのです」

Aさんの目は懐かしそうに窓の外を見ていらっしゃいました。

なぜ「会社のため」を考えるのが難しいのか

役員間の価値観のすれ違いは、エグゼクティブ・コーチングの中でしばしば出会うテーマです。

デロイトは、2018年に発表したレポートの中で、競争が激しく、デジタルによる「破壊」の続くビジネス環境においては、経営陣が「ファンクショナルなエキスパート」として振る舞うのではなく「チーム」として動く必要があると報告しています。しかし、そのレポートのもととなった調査では、73%の回答者が、それをわかっていながらも、自社において、経営幹部同士が「一緒に仕事をする」ことは「ほとんどない」と答えているのです。(※)

彼らがそう答えた理由は、想像に難くありません。どの会社でも、経営チームは厳しい競争を勝ち抜いてきた勝者集団であり、ハイパフォーマー集団のはずです。その分、自分のやり方、考え方に自信をもっているでしょう。おまけに社長レースが進行中で、お互いがライバルでもあります。

そこで横同士が連携するとなれば、それぞれの価値観の違いが露呈する可能性があるわけです。それぞれの「正しさ」がぶつかり合えば、そこには対立が生じます。実際、Aさんのケースでは、対立が表面化し、Aさんの配置換え、最終的には離職につながりました。対立によってもたらされるこうした負の影響を考え、「総論賛成、各論反対」、「お互いに領空侵犯しないでいきましょう」といった暗黙知が生まれます。

「総論賛成、各論反対」が起こると、チームで決めたはずの方針や戦略が骨抜きになります。それぞれが、会社の決定ではなく「自分の正しさ」に従って行動するからです。そして個別に話を聞いてみると「自分の考えのほうが、会社のためになる」という声が出てきます。

しかし、重要な人物同士がお互いに話すことなく、「会社のため」にできることなんてあるのでしょうか。

前述のデロイトの調査は、これからは、企業のトップリーダーたちが一体となって、連携的で、チーム・ベースの「調和した」演奏を奏でるような、エキスパートたちによる「シンフォニー」な在り方が必要だと主張します。

しかし、「シンフォニックな経営チーム "the symphonic C-suite"」をつくるのは、たやすいことではありません。なぜなら、私たちは誰しも「自分が正しい」と思い込んでいるからです。あなたも、あなたの目の前にいる人も、そして、私自身も。

「私は正しい。あなたも正しい」から始める

当社の創業者の言葉に、こんな言葉があります。

理由はすべて正しい、So What?
あなたは常に正しい、So What?
いずれにしても、So What?

「私は正しい、あなたも正しい。そしてそこからどうするの?」と問いかけてくる言葉です。

組織はひとつの生命体です。それぞれの役割、機能を果たす優秀な人材が集まっただけでうまくいくものではありません。組織内の一人ひとりが相互に関わり合い、影響し合いながら、進化し、成長していくものです。その関係性をどうつくっていくかが重要になることは言うまでもありません。

「私は正しい。あなたも正しい」を前提に、どうしたら大きな目的に向けて、互いに協力し共創する関係を築いていくことができるのか。誰かのせいにするのではなく、自ら責任を引き寄せ、共に前進することができるのか。

これは、経営チームに限った話ではありません。

「自分の存在価値を認めさせよう」とするところからではなく、「相手の存在価値を認めよう」というところから始めてみる。

その一歩を踏み出すことができれば、誰もが思っていないような価値がそこに創り出されるかもしれません。

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【参考資料】
Gaurav Lahiri, Jeff Schwartz and Erica Volini, “The symphonic C-suite: Teams leading teams, 2018 Global Human Capital Trends”, Deloitte Insights, Deloitte.com, 2018
(文中の日本語訳はコーチ・エィによる)

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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