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「意味づけ」が大事というけれど、そこにリアリティはあるか

「意味づけ」が大事というけれど、そこにリアリティはあるか
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年が明け、早1ヵ月が経ちました。年の初めというタイミングで、新たな目標を設定した方も多いのではないでしょうか。

いつもは慌ただしいことが多い私の年末年始ですが、今年は、さまざまな方にお薦めいただいた映画や本をいくらか楽しむ時間に恵まれました。その中の一つに名優ポール・ニューマン主演の不朽の名作『暴力脱獄』(1967年)があります。

そこにこんな場面がありました。囚人である主人公が、脱獄の罰として看守に穴掘りを命じられます。しかし、穴を掘ると別の看守に埋め直せと言われ、埋め終わると、また元の看守に穴を掘り直せと言われる。その繰り返しに主人公は精神的に参ってしまいます。この穴掘りが、囚人にとっていかに無意味で、意欲を奪い、思考回路を麻痺させるものだったかは想像に難くないでしょう。

人は、「意味づけ」したい生き物である

人は「無意味」なことをやり続けることができません。意味がないと感じる活動や行動が続くと、人は、徒労、失望、空虚、無気力、恐怖といったネガティブな心理状況に追い込まれやすくなります。

近代の心理学の巨頭の一人であり、ホロコースト生還者のヴィクトール・エミール・フランクルは、「人の主な動機は人生の意味を発見することである」と述べています。フランクルは、ホロコーストという最も悲惨な経験においてさえ、すべての状況下で意味を発見できると主張しました。

人間には、自分の人生をできる限り意味あるものにしたいと願う根源的な欲求があり、これをフランクルは「意味への意志」と呼びました。どんな悲劇的逆境にあっても「意味への意志」が健康的に働いているならば、人は幸せを感じられるとの主張です。

「人生」というほど大袈裟なものではありませんが、私は20代の頃、仕事における意味づけの重要性を深く体感した経験があります。

意味づけは、対話によって促進する

20代後半で、某コンサルティングファームに転職した時のことです。入社後ほどない頃、業界未経験の私にメンターとしてついてくれたベテランの方から、あるプロジェクトの全ての資料の印刷とファイリングを依頼されました。正直なところ「そんな、誰でもできるようなことをやるために転職したわけじゃないのにな」と思いつつ、言われた通りの作業をしました。

作業終了をメンターに告げると、彼は「何のためにこの仕事をやってもらったと思う?」と、問いかけてきました。「プロジェクトメンバーが、必要な情報を探しやすいからですよね?」と答えると、彼はこう言いました。

「それもあるけど、それ以上に合理的なファイル順を考えることを通じて、コンサルタントに最も必要な能力の一つであるロジカルシンキングを常に意識してもらいたかったんだ」

意外な答えにハッとすると同時に、完全に腑に落ちない感覚もありました。印刷やファイリングの作業時間を考えると、その分、ロジカルシンキングの演習問題をやった方が効率的に思えたからです。

その日は彼と飲みに行くことになり、そこで、お互いのそれまでの人生のことや価値観等に話が及びました。彼自身、年齢とポジションから役割としてメンターを任される機会が多いこと、「ファイリングでロジカルシンキングの重要性を気づかせる」というのは彼にとっては一つの「型」であること、さらには自分が教えた若手がどんどん成長し、自分を超えて活躍していくことは、嬉しいながら複雑な想いも抱えていること、年齢的に彼の中でキャリアの身の振り方を考えることもあるということ・・・お酒の力もあって、彼も随分と自分自身のことを語ってくれました。

彼の話を聞いているうちに、あのファイリング作業は単にロジカルシンキングスキルを磨くためのものだけではないような気がしてきました。「一つひとつの仕事を、単純なタスクとして捉えるのではなく、常に何のためにやっているのか、どういうことにつながるのかを考えて取り組むことが大切であり、そのことによって成長スピードも変わるし、自分自身の生きる上での満足や幸福にも影響する」と思ったのです。ロジカルシンキングよりはるかに大切な仕事への「向き合い方」を教えてもらったように感じ、彼にもそのことを伝えました。

私にとってこのときの経験は、社会人生活の景色を大きく変えた出来事でした。自分の思考や行為等、あらゆることに「それをやる意味」を考える習慣を持つ。意味づけをするのはほかでもない自分自身である、ということが強く意識されたのです。

また、メンターの彼にとっても、この時の私との対話はとても印象的だったようです。私が感じたことを彼に伝えたことで、彼自身「他者に影響できる」という自己肯定感と、任されることの多いメンターの役割に、改めて自分なりの意味と価値を見い出すことができたと言ってくれました。

今一度、自分や周囲の人の目標の意味をアップデートする

昨今のビジネスシーンでは、ダイバーシティやSDGs、ESG経営、文化支援等々、社会的期待により目標に加味される要素がいくつもあります。また、職場においては、自分の意志や意向と関係なく目標が決められることもあるでしょう。

その目標は、あなたにとってどんな意味がありますか。
また、あなたの部下や部下の周囲の方は、自分の目標にどんな意味を見出しているでしょうか。

すでに今年の目標を設定した方も、まだ明確に立てていない方も、改めて「その意味」を考えて、文字通り、目標をアップデートしてみませんか?

自分にとっての意味は明確だという方も、そうでない方も、だれかと改めて時間をとって目標について話してみることをお勧めします。そのプロセスは、あなたにとっての意味に変化をもたらすだけでなく、対話のパートナーにとっても価値ある時間になるはずですから。

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【参考資料】
映画『暴力脱獄(原題:Cool Hand Luke)』ポール・ニューマン主演、スチュアート・ローゼンバーグ監督作品、1967年
ヴィクトール E.フランクル (著)、山田邦男(翻訳)『意味による癒し』、春秋社、2004年
ヴィクトール E.フランクル (著)、諸富祥彦、松岡世利子、上嶋洋一(翻訳)『生きる意味を求めて』、春秋社、1999年

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