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あなたは、どのように組織に「社会化」していますか?

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みなさんは、社会人になって以降、何回くらい、新しい組織や新しいチームに変わった経験があるでしょうか? 転職した人は無論のこと、組織変更や人事異動で環境が変わるたびに、新しい組織、新しいチームに順応する必要に迫られた経験があるのではないでしょうか。既存のチームに新たに参画することになったとき、速いスピードで溶け込むのはそんなに簡単なことではありません。

クライアントのAさんは、昨年役員に昇進し、経営チームの一員になりました。役員という新たな役割へのトランジションの過程にコーチングを活用され、役割の定義や、役員としてのリーダーシップをどう発揮するかなどについて継続的に考えていらっしゃいます。

そんな中、あるセッションでAさんが胸の内を明かしてくれました。

「自分は、まだ経営チームの一員になりきれていない気がする。いまもっとも苦労しているのはそのことだ」

これまで高いパフォーマンスを発揮してきたAさんにとって、このような気持ちになるのは初めての経験でした。

「社会化」とは何か

「社会化」という言葉があります。(※1)

たとえば、我々は、家庭や学校などを通して基本的な生活習慣を身につけていきます。家庭や学校といった小さな「社会」の中で、他者との関わりを通し、どういう場面で、どう振舞うべきか、どう考えるべきかということを学んでいくわけです。そして、幼少期や若年期に身についた社会的認識を基礎に、中学、高校と環境が変わるたびに、また新しい認識が加わったり、それまでの認識を変化させたりしながら、その「社会」に適応していきます。このようにその「社会」に適応していく過程を「社会化」と呼びます。そして、学生生活を終えて社会に出れば、「組織人になる」あるいは「会社や組織の色に染まる」といった言葉に象徴されるように、自分の入社した会社に「社会化」していくわけです。

要するに、人は生育の過程で身を置くさまざまな「社会」に「社会化」しながら、生き抜いていくためのサバイバル戦略を身につけていくといえるでしょう。

「社会化」は必然的に、また自動的に起こるものですが、一方で負の側面もあります。

社会化を振り返る

前述のAさんが昨年から参加するようになった役員会には、「この場では、こういうことは言ってもいいが、こういうことは言ってはいけない」という無意識のコミュニケーションのパターンがあり、それが暗黙の了解となっていました。

当たり前ですが、それは言語化され紙に書いてあるわけではありませんから、Aさんはそれを読み解いていく必要がありました。そのプロセスで、Aさんはだんだんと自分の主張を抑えて主観を伝えなくなり、自分のパーパス(存在意義)を見失っていきました。結果として、仕事に対するモチベーションが下がり始めていました。

期せずして、Aさんの会社はコラボレイティブな経営チームを創るためのワークショップ(※2)に取り組み始めました。ワークショップの中では二人組になり、以下の問いを二人の間において、「どのようにこの『会社』に社会化してきたのか」、そのプロセスを振り返る機会がありました。

  • 今でも覚えている上司の言葉にはどんなものがありますか?
  • この会社では、どう振る舞わなければならないと思ってきましたか?
  • 何をすると組織から逸脱すると思ってきたでしょうか?
  • 会社の中では、何をすることが良いことであり、正しいことだと思ってきましたか?
  • その正しさは、組織のパーパスとビジョンの実現に向けて理にかなったものですか?

ワークショップ中、Aさんは一人の役員から言われた次の言葉にハッとしました。

「あなたからいろいろな影響を受けている」

経営チームで存在感を示せていないと思っていたAさんですが、自分も他の役員に影響を与えていることを初めて認識しました。それは、Aさん自身も経営チームの「社会」を創っている一員であるという視点をもたらしてくれた一言でした。Aさんは次のように語ってくれました。

「他の役員と対話することで、いまの経営チームには、たくさんの独特の文化や価値観があることに気づきました。そして、自分たちが当たり前だと思っていることを棚卸しすることは、その良し悪しではなく、自分の存在をどのように選んできたのか、お互いにどんな影響をし合っているのかを学び直すきっかけになりました」

それまでのAさんは「自分は他の役員たちは違う」と考えていました。同時に「何とかそれに合わせなければならない」とも思っていたのです。しかし、ワークショップを通じて、自分たちは一人ひとり異なる人間であることや、全員で役員会という「社会」を創っていることを発見したのです。そして大事なのは、これからどんな「社会」にしていきたいかという未来に視点が向いたことです。

***

「社会化」は、生きている限り続く、自動的なプロセスです。転職や異動といった機会は、新しい組織や職場環境に順応する必要に迫られるため、「社会化」のプロセスを認識しやすい機会です。

しかし、前の職場での実績をかわれて栄転した人が、新しい職場で行き詰まり、ついにメンタルを害してしまったといった話を耳にすると、社会化の重要性と難しさを痛感せざるを得ません。

「社会化」という言葉を手掛かりに、自らを振り返ることは、新しい視点を手に入れ、学び直す機会になるかもしれません。

あなたは、どんな風に今の組織に「社会化」してきましたか?

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【参考資料】
※1 菊池 章夫、 堀毛 一也、 斎藤 耕二、 二宮 克美 (著)、『社会化の心理学/ハンドブック―人間形成への多様な接近』、川島書店、2010年
※2 未来を共創するコラボレイティブな経営チームを創るサービス「DAIBE

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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