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お互いの前提を理解できたら、未来をどう変えられるのか?

お互いの前提を理解できたら、未来をどう変えられるのか?
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Language: English

春を前に、今年も人事異動の季節が到来しました。新しい役割に心躍る方、新たな人間関係の構築に不安を覚える方。これから様々なドラマを織りなしていかれると思います。

クライアントのAさんは、3年前の4月にシンガポールの大規模拠点に社長として赴任されました。着任し、社員のフレンドリーで家庭的な雰囲気に安堵しつつも、このままでいいのだろうかと正体不明の違和感を覚えました。

「社員が安心して働ける文化を築いてきた経営陣には感謝している。ただ、社員の様子を見ているとなんだか馴れ合いに感じる場面が多い気がする。争いを避けて見て見ぬふりをする場面がよく目に留まる」

技術分野での遅れの回復が喫緊の課題であることを見抜いたAさんの目には、幹部社員が現状の利益に甘んじ、危機感が薄いと映るようになりました。赴任したばかりとはいえ、遅れを取り戻すことが社長の責務であるという強い責任感から、幹部に向かって檄を飛ばしたと言います。

ところが幹部社員たちは、Aさんに強く反発しました。自分たちのことも会社のこともまだよくわからないのに、いきなりやってきて自分たちのやってきたことを否定されたと感じたのです。Aさんは着任早々、組織の士気が急激に下がる状況に直面しました。

Aさんにしてみれば、拠点をさらに成長させるために言っているわけです。しかし、部下の心は離れていく。Aさんは、どうしたらいいのかわからなくなっていきました。

社員の心が離れていく

新組織のリーダーになって、Aさんのような体験をされたことのある方は、少なくないのではないでしょうか。

成長のために何かを変えようとすると、つい課題に目が行きがちになります。うまく機能していないところを見つけ、その改善に注力することが最初に着手すべきことのように見えるからです。

それはたしかに「正しい」アプローチです。しかし、もし自分が、課題を指摘され続けたとしたらどうでしょうか。過去を否定されたように感じるかもしれません。それはあなたの自信を奪うかもしれませんし、自分の正しさを主張することにエネルギーを注ぐようになるかもしれません。相手との信頼関係を築くことが難しくなり、次第に気持ちが離れていく、、、。そんなことはないでしょうか。

企業を成長させたいと思う気持ちは、社長も社員も同じです。海外においては日本人も現地の方も同じでしょう。会社をさらによくしたいと思うとき、本当に変えるべきことは何なのでしょうか。

そもそもそれは課題なのか? 

課題に目を向けるのはやめましょう、と言いたいわけではありません。自分の思うようにいかない時こそ、立ち止まって考える絶好の機会と捉えることもできそうです。

Aさんとコーチの私は、こんな対話を始めました。

なぜAさんはそれを課題だと確信したのだろうか?
そもそも、Aさんが課題だと思ったことは、彼らにとっても課題なのだろうか?
幹部社員は、会社の状態をどのように見ているのだろうか?
今、幹部社員たちに、何が伝わり、何が伝わっていないのか?

Aさんは自問を繰り返しながら、幹部社員一人ひとりと時間を取り、お互いの想いを共有し話し合うことを始めました。対話を重ねる中でAさんは、幹部社員たちはこれまでずっと「失敗を犯してはいけない」と言われ続けてきたことがわかってきました。「チャレンジしなければ明日はない」という組織文化の中でキャリアを積んできたAさんとは、前提が大きく違ったのです。

現実は人の数だけ存在する

人は誰でも、その人なりの捉え方で世界を見ています。その捉え方は、その人自身が経験してきたことによって構築されます。人はそれぞれ歩んできた人生が違いますから、捉え方も違って当然です。

しかし厄介なことに、私たちは知らないうちに、それを忘れてしまいます。そして、自分に見える世界と同じ世界を他人も見ている、つまり自分にとっての正解がすべての人にとっての正解だと思い込んでしまうのです。

相手が見ている世界が自分の見ている世界と違うかもしれない。そのことを忘れたとき、対立はネガティブなインパクトをもたらします。どちらも「自分は正解を知っている」と思っていれば溝は深まるばかり。たとえ折り合いがついたとしても、何らかのしこりが残る可能性が高くなります。

お互いの主張と前提を理解することからスタートする

相手には、何が見えているのか? それは、相手に聞いてみなければ決してわかりません。

主張の異なる相手に対し、まずは否定せずに聞く。そして、どうしてそのように考えるのか、その前提を話してもらう。同時に、自分の主張と前提を相手にも話す。相手がどう受け取ったかを聞く。そのプロセスは、同時に自分の前提に気づくことでもあります。

そしてそもそもの目的に立ち返り、新たな意味を共に探索する。理想論かもしれませんが、信頼関係は、こんなやりとりを通じて構築されていくのだと思います。

課題を見つけて変えようとするのではなく、まずは自分の関わり方を変えてみる。そうすることで、成長のための選択肢は大きく広がる可能性があります。

あなたは相手の見ている世界をどれくらい知ろうとしていますか?
あなたの正しさを証明しようとすることで、何を得ているのでしょうか?
あなた自身が持ち込む前提に気づくために、周囲とどのような関係をつくっていますか?

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