Coach's VIEW

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人はどのように成長するのか

人はどのように成長するのか
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人生100年時代と言われるいま、人は死ぬまで成長し続ける必要があるといってもいいかもしれません。コーチングにおいても「成長」は重要なテーマですし、人がどのように成長していくのか、そのメカニズムを少しでも理解することは、個人的にも非常に興味深いことです。

コーチ・エィにはアドバイザリーボードという仕組みがあり、ボードメンバーには著名な経営者や学者の方がいらっしゃいます。経営等に関するさまざまなテーマに関して議論させていただく機会が定期的にあるのですが、ある時、ボードメンバーのみなさんがどのように成長されてきたかを尋ねたことがあります。すると全員が口を揃えて「大きな課題を乗り越えたとき」とおっしゃったことが印象に残っています。

カート・フィッシャーが提唱した「ダイナミックスキル理論」という理論があります(※1)。フィッシャーは、能力には「課題依存性」があり、「能力を伸ばしたい場合、その能力と密接に関係した具体的な課題に取り組んでいくことが必ず求められるという特徴がある」と述べています。つまり、能力を伸ばすためには適切な課題が必要で、課題を乗り越えることで人は成長するというのは確かなようです。

しかし「大きな課題」「適切な課題」とは、いったいどのような課題を指すのでしょうか。

「大きな課題」とは

ハーバード・ケネディスクールのロナルド・ハイフェッツ教授は、組織の問題を「適応の課題(Adaptive Challenges)」と「技術の問題(Technical Problems)」の2つに分類しています(※2)。

「技術の問題」とは、「たとえ複雑なものでも、手持ちの知識や手順を使えば解決できる」問題。一方「適応の課題」は、新しい学習や行動パターンを変えることが求められるような課題です。つまり、自分自身のものの見方を変えたり、周囲との関係性が変わらなければ(=適応できなければ)解決できない問題のことをいいます。

とはいえ、すべての課題がこの2つにきれいに分類されるというわけではありません。先述のボードメンバーのみなさんがおっしゃった「大きな課題」には、おそらくこの2つの要素が複合的に含まれていたのではないかと思います。

「適応の課題」は成長のためのギフトであり、自分の物事の捉え方など、パーソナルOSをアップデートするチャンスと捉えることもできますが、実際にこの「適応の課題」を乗り越えるのは簡単なことではありません。なぜなら、自分のそれまでの考え方や物事の捉え方を変化させるプロセスは、それまでの自分を否定するように感じられる場合があるからです。

「裏の目標」の存在

ロバート・キーガンの著書『なぜ人と組織は変われないのか』に、「適応の課題」に取り組む際のヒントになりそうなことが書かれています。(※3)

課題を解決したいのに前進がないとき、変化を阻む要因は外部にあるのではなく、実は自分の内側にあるというのがその説です。キーガンはそれを「裏の目標」と呼び、その人が知らず知らずのうちに不安から身を守ろうとして生じるものだと言います。

私自身も、自分の「裏の目標」に気づいてハッとした体験があります。

あるクライアントとのセッションがなかなかうまくいかずに苦労していた時のことです。それを周囲の先輩に相談したところ、

「有吉さんは、クライアントではなく自分に矢印が向いているように感じる」

というフィードバックをもらいました。

クライアントへの貢献を最優先に考えているつもりだったのに、実は自分の中に「いいコーチだと思われたい」、そんな気持ちがあることに気づきました。まさに「裏の目標」です。いかにいい質問をするか、いかに機能するフィードバックをするか、そんなことにばかり頭がいってしまい、クライアントの話を聞けなくなる。そして、ますます焦る。そんな悪循環に陥っていました。

フィードバックをもらってそのことに気づいたことで、裏の目標ではなく、表の目標であるクライアントの成功に意識を向けることができるようになり、その方とのセッションも明らかによい方向に変化しました。

もちろん今でも「いいコーチと思われたい」という気持ちがないというと嘘になりますが、それ以来「いまはどちらに矢印が向いているか」と自分で問うことで、早めに修正ができるようになりました。

「裏の目標」になっていることはないか

コーチングをしていても、たとえば「優秀だと思われたい」「人から嫌われたくない」「辛い思いをしたくない」といった「裏の目標」が、クライアントの変化や成長を阻んでいると感じることがよくあります。

みなさんはいかがでしょうか。なんとかしたいのにどうしても変えられないこと、いつも同じところで躓いてしまうことはないですか。

どうしても変えられない上司との関係、どうしても言うことを聞いてくれない部下、他部門との対立、どうしても苦手なお客様、、、もしかしたら、それはあなたにとって成長の機会かもしれません。

「裏の目標」になっていることはないか?
自分はどんな不安から身を守ろうとしているのか?

そう自分自身に問いかけるだけでも、見えてくるものがあるでしょう。ただ、自分にとっては当たり前すぎて、見えなくなっていることもあります。そんなときは、誰かの視点を借りる。私が先輩に相談してフィードバックをもらったように。

誰かとの対話を通して見えてくるものが、きっとあるはずです。「適応課題」を乗り越え、新しいリーダーが成長していく組織は、どんな変化にも対応できる強い組織になるのではないでしょうか。

みなさんにはどんな成長の機会があるでしょうか?
成長に向けて誰と話したいですか?

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【参考資料】
※1 加藤洋平著、『成人発達理論による能力の成長』、日本能率協会マネジメントセンター、2017年
※2 シャロン・ダロッツ・パークス著、中瀬英樹訳、『リーダーシップは教えられる』、ランダムハウス講談社、2007年
※3 ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー著、池村千秋訳、『なぜ人と組織は変われないのか――ハーバード流 自己変革の理論と実践』、英治出版、2013年

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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