Coach's VIEW

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「共感力」を問い直す

「共感力」を問い直す
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コーチ・エィのコーチングは「対話」がベースです。コーチ・エィで定義する「対話」とは、お互いの違いに対してオープンになり、違いを活かすコミュニケーションです。

それを前提に振り返ったとき、自分のコーチとしての成長テーマは「共感力」にあるのではないかと考えるようになりました。共感力が弱いのではなく、強すぎるのではないかと。

私にとって「共感」とは、クライアントの話に理解を示し、クライアントの置かれた状況に思いを馳せることです。深い共感があってこそ、クライアントと信頼関係を構築することができ、その関係をベースにクライアント自身が気兼ねなくなんでも話せるようになる。そして、それがクライアントの気づきにつながる。そういう思いがあります。

でも、共感が強すぎると、対話において大事にしている「違いを活かす」ことができないのではないか? 

実際に、あるトレーニングで自分のコーチングについて、次のようなフィードバックをもらったことがあります。

「クライアントの身に起こったことに対し、今城さんが自分自身の感情を表出させているために、クライアント自身が『自分がどう感じているか』を探索する機会を奪ってしまっている」

もしかしたらこれも「共感」が強すぎるために起こったことなのではないか、そんなふうに感じていました。

「共感」を減らす?

そこで、自分の成長テーマについてコーチし合う社内のトレーニングで、「自分は、クライアントの話を聞き過ぎている、共感し過ぎているのではないかと思う」とパートナーとなったコーチに話しました。

そのときに私の頭にあったイメージは「共感を弱める」、つまりこれまで自分の中で大事にしてきた「共感」をある程度捨てる、というイメージでした。違いを顕在化させて活用する対話を行うには、「共感」を減らす必要があると考えたわけです。

自分のテーマを伝えると、パートナーのコーチは問い返してきました。

「共感が強いからそれを弱めるということなのだろうか? そもそも『共感』ということを、今城さんはどう解釈しているの?」

問い返されて出てきたのは、

「共感とは、相手の思いや感情を察し、その心の機微がわかること」

という答えです。さらに解釈を深めていくと、

「相手の話から想像される相手の感情を、先回りして理解していることを相手に示す」

ことで、共感を体現しようとしていることが見えてきました。

上述したことは、私自身の「共感」の解釈ですが、そもそも「共感」とはなんでしょうか。私たちが他者から共感されていると感じる時、何を感じ取っているのでしょうか。

私たちがわかることができるのは何なのか

「その気持ち、わかるよ」

相手からそう言われたら、私たちは「共感されている」と感じるでしょうか。私たちは、他者に「わかってほしい」と思いながら、同時に「そう簡単にはわかってほしくない」と思っているところがないでしょうか。「私」は特別である、どこかでそんなふうにも思っているものです。実際に、私たちそれぞれが感じること、考えること、思っていることは固有のことです。それを簡単に「わかるよ」と言われて、なんとなくがっかりしたことはないでしょうか。

そう考えると、「あなたの感じていることは、こういうことですね」と先回りして表現することは、必ずしも「共感」を示すことにはなっていない可能性があります。

私の解釈での「共感」は、どうもここに限界がありそうです。

相手の感情や思いについて私が想像することは、あくまでも私の想像に過ぎません。相手が実際に味わっている感情は、本人に聞いてみなければわからないのです。

臨床心理士の杉原保史氏は著書(※1)の中で、こう述べます。

「『共感』は、人と人とが関わり合い、互いに影響し合うプロセスである」

このことから考えると、私たちが他者から「共感されている」と感じるのは、相手が自分と同じ気持ちを感じている、理解していると示してくれる時ではなさそうです。私がいったいどういう感情を味わっているのか、どういう思いをもっているのかを知ろうと関わってくれる。その過程で、相手の共感を実感する、と言えるのではないでしょうか。

言葉の解釈は自分の行動に影響する

もともと「共感」がコーチとしての成長テーマになると薄々感じていたものの、「共感を減らす」というアプローチを考えていました。しかし、トレーニングでパートナーとなったコーチと話すうちに、ぜんぜん違う場所に着地した感覚があります。「共感」という言葉の意味が広がった感覚です。

このやりとりは、自分がある言葉に対して持っている解釈や定義そのものが、自分の成長を妨げる可能性があることを実感する機会になりました。

国際コーチング連盟(ICF)が定めるコーチのコア・コンピテンシーを行動ベースにおとしたPCCマーカー(※2)の中に、

6-3 コーチは、クライアントの感情について問いかけたり、探索したりしている

という項目があります。

相手の感情を想像して理解を示すのではなく、その人に聞かなければわからない、その人自身が感じていることについて対話をしていくことが「共感」につながる。この項目の意味することが、改めて自分の中にすっと入った気がします。

あなたにとっての「共感」は、どんな意味ですか?
それをどのように表現していますか?

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【参考資料】
※1 杉原保史、『プロカウンセラーの共感の技術』、創元社、2015年
※2 国際コーチング連盟(ICF)Professional Certified Coach (PCC) Markers

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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