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あなたの知らないあなたの「〇〇〇〇」
コピーしました コピーに失敗しました読書の秋、スポーツの秋、リスキリングの秋、そして、コーチングの秋。みなさんはこの秋、何を極めようとしているでしょうか。
5歳になった娘が、今年から友だちと一緒に英語教室に通い始めました。通い始めは、レッスンを待ちわびるほど楽しそうにしていた娘でしたが、数ヵ月前のある朝、突然「行きたくない...」と、もじもじしながら言い出しました。
教室へ通う目的としては、英語を学ぶというより、友だちとの遊びの延長で英語に触れられればいいというくらいに考えていましたし、そもそもやりたくないことをやらせるのは本意ではないので、「いやならやめればいいか」というスタンスで、しばらく見守ることにしました。
しかし、娘に何度理由を聞いても「行きたくない...」を繰り返すだけで、はっきりした理由は教えてくれません。普段、感情が豊かで、やりたいこととやりたくないことがはっきりしている彼女の中途半端な反応は、私を混乱させました。
やる気がなくなった? 何かいやなことがあった? あれだけ毎回楽しそうにしていたのに一体なぜなんだろう?
困った末に夫と話し、担当の先生に相談をすることにしました。
求めるものは人それぞれ
最近のレッスン前の娘の状況を共有すると、先生は、
「貴重な情報をありがとうございます。実は、私もここ数週間○○ちゃんが少し元気がなさそうなのが気になっていました。特に何か変わった出来事があったわけではないのですが、引き続き注意してよく観察してみますね」
と言って、お互いに小さなことでも何か気づいたことがあれば、随時共有することを約束しました。
その直後のレッスン終了後、先生から声をかけられました。
「すっかり忘れてしまっていたのですが、○○ちゃんがちょっと不安げな顔をすることもあったので、数週間前から私がサポートしやすいように一番前の席に変えたんです。今日、○○ちゃんを観察していたら、きょろきょろと周囲を見回している姿に気づいたので、もしかしたらと、途中で仲良しのお友だちの隣に席を変えてみました。そうしたらとても安心したようで、その後は大きな声も出てきて、元気に歌って踊ってはしゃいでいましたよ」
娘は、自分がなんとなく不安な気持ちになっていることを、自分の言葉でうまく表現できなかったのかもしれません。
上の息子の場合、習い事や新しいことを始める際に「身近な人と一緒に」というのが重要なファクターではなかったので見過ごしていましたが、どうやら娘にとっては「身近な誰かと一緒である」という安心感がとても大事だったようです。
この体験は、会社の中での自分のあり方、関わり方を再考するきっかけとなりました。
原因は相手の内側にあると思っていないか
みなさんには、部下や同僚などのパフォーマンスが下がっているように見えるとき、当たり前のように、まず本人の中にその要因があると考えた経験がないでしょうか。
「あなたのやる気の問題ではないか」
「モチベーションを上げる方法を一緒に考えよう」
今回、私自身は、娘に対してそんなアプローチをとってしまう可能性が大いにありました。
コーチングにおいても同じようなことが起こります。
コーチングを学び始めた頃などは、「相手の答えを引き出そう、相手を変えてやろう」という意識が先立ってしまいがちになります。さらに「コーチングすることに慣れてきた」という自覚が芽生えると、「相手の内面にアプローチしよう、捉え方を変化させよう」と、気づかぬうちに相手をコントロールするようなマインドセットになってしまうこともあります。
コーチが「相手を何とかしよう」というマインドセットになってしまうと、クライアントの中に抵抗感が生まれやすく、話がかみ合わなくなったり、相手が前に進めない状況に陥ったりしがちです。
しかし、実際には娘のケースのように、問題がその人の内側だけにあるとは限りません。もっと広い視野で全体を眺めると、違うアプローチが見えてくることがあります。
私の場合は、コーチングセッションの間は脇に置くことができたとしても、マネジメントやプロジェクトをリードする際に、上記のような自分のマインドセットに出会うことが少なくありません。
バイアスは誰にでもある
先日、同僚に紹介されて『なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか』(※)という本を読みました。この本は「私たちは常に無意識なバイアスを持って生きている」「そして、バイアスは、生存するためにごく自然に備わった機能である」ということを、さまざまな事例とともに理解させてくれます。
「自分が持つバイアスとは、どんなものだろうか?」
実は今回、娘の一件があったときに、この問いによって視野が広がりました。
「レッスンの内容についていけていないかもしれない」「先生や友達から言われた一言に影響を受けているのかもしれない」と、娘に原因を求める傾向のある自分がいることに気がつき、「娘のやる気にも問題があるかもしれないけど、何か別のことが起きているかもしれない」そんな視点で考えることができたのです。
それによって、娘のやる気に真っ先に原因を求めるのではなく、先生にすぐに声をかけて協力を仰ぐという行動につながりました。
この本の中では、自分の無意識のバイアスに効果的に対処する方法がいくつか紹介されています。例えば、
- バイアスは人間の正常な働き(防御反応)であることを認識する
- ニュートラルに建設的に疑ってみる
- よく知らない、あるいは自分が偏見を持っている集団の人と関わる
- フィードバックとデータを得る
あなたはいま、上司や部下に対してどんなバイアスをもっていますか?
そのバイアスからフラットになるために協力してくれる人は誰でしょうか?
自分のバイアスを否定するのではなく、認めた上で別の考え方を探ってみる。そこにこそ、新しい関係性と可能性を見出すきっかけがあると信じています。
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【参考資料】
※ ハワード・J・ロス (著)、 御舩由美子(訳)『なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか:逃れられないバイアスとの「共存」のために』原書房、 2021年
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